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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第6章. 海霧迷宮に広がる異変

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9. 消えた白潮旅団


「……セリア」


レオンが、ふらつきながら奥へ走る。


その先。

倒れたセリアのそばで、ミラが膝をついていた。


血に濡れた手で、傷口を押さえている。

呼吸は浅いけど、落ち着いてきている。


「どうだ?」

ナオユキが短く聞く。


ミラは手を動かしたまま、顔も上げずに言った。

「結構やばかったけど……」


押さえる位置を、少しだけずらす。

「ちゃんと止めてるから」


一瞬だけ息を吐いて、


「たぶん大丈夫!」


その言葉に、張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


俺は思わず声を漏らした。

「……お前、手当てしながら撃ってたんかよ」


ミラが小さく笑う。

「余裕余裕」

「ちゃんと当たってたでしょ?」


さらっと言いやがる。


一拍。


……いや、待て。

「ってか!手当てしてたんか!?」


思わず身を乗り出す。

「ミラさん、そんなこと出来るん?」


ミラが、ふふん、と胸を張る。

「見直した?」

「人は見かけによらないんだよ!」


ナオユキが、呆れたように肩をすくめた。

「それ、自分で言うか?」


ハナが、静かに前へ出る。

何も言わないまま、セリアのそばにしゃがみ込む。


両手をかざす。

淡い光が広がる。


回復魔法。


じわじわと、傷が塞がっていく。


ハナの呼吸が荒い。

額に汗が浮かんでいる。


かなり無理してる。

でも止めない。


ミラはそれを見て、少しだけ位置をずらして任せる。


しばらくして。


セリアの指が、かすかに動いた。


レオンが息を呑む。

「……セリア?」


ゆっくり目が開く。

焦点が合う。


少しだけ、困ったみたいに笑った。

「……ひどい顔」


レオンが、力を抜いたように笑う。

「……誰のせいだと思ってるんだ」

「無事でよかった、本当に」


ようやく。

ほんまに終わった気がした。


その瞬間。

ハナがふらつく。


「っ、おい!」

慌てて支える。


ポーチから回復薬を取り出して、口元に持っていく。

「飲めるか?」


ハナが顔をしかめる。

「……にがい」


「良薬口に苦し言うやろ?」


少しだけ、空気が戻った。



ハナも限界やし、これ以上の探索は無理や。

レオンたちを連れて、そのまま入口まで戻ることにした。


ダンジョンを抜けた瞬間、ひんやりした外の空気が肺に入る。

……生きて帰ってきた。

それだけで、少しだけ力が抜けた。


簡易休憩所の前で、レオンが立ち止まる。

セリアはまだ足元がおぼつかなくて、肩を借りていた。


「……ありがとう」

真っ直ぐ、頭を下げてくる。


俺は頭をかいた。

「いや……」

言葉が詰まる。

少しだけ間を置いて、口を開く。

「……トーマさん、守れんくてすまん」


ナオユキが横で小さく頷く。

レオンは、すぐに首を振った。

「違う」

「助けてもらわなければ、三人とも死んでいた」

一拍。

「トーマも、分かっている」


少しだけ視線を落として、それから顔を上げる。

「……あいつも今頃は、教会で復活してるはずだ」

「落ち着いたら、一緒に礼を言いに来る」


セリアも、小さく頷く。

「今度、ちゃんと返す」


ミラが、ちらっと視線を逸らす。

たぶん、照れてる。


俺は軽く笑う。

「礼とか気にせんでええで」

「今度、飯でも行こや」


セリアが、少しだけ力を抜いたように笑う。

レオンも、静かに頷いた。


「ほな、また」

短く言って、手を上げる。


レオンも、小さく手を上げ返した。

そのまま二人は、停泊している船へ向かう。


ゆっくりと乗り込んでいく背中を、少しだけ見送る。


やがて船が離れる。

それで、ほんまに区切りがついた。




俺たちは船には乗らなかった。明日も潜るつもりやし、街に戻る意味はない。ハナも、今日はもう動けそうにない。

そのまま、簡易休憩所の食事スペースに入る。


適当に料理を取って、席に着く。温かいはずのスープから、ゆっくり湯気が上がっている。


でも、誰もすぐには手をつけへん。


しばらくして、俺がスプーンを持つ。一口。味はする。でも、よく分からん。


(……あかんな)


死んだら戻る。

分かっていても、目の前で守れなかった重さは消えへんかった。


もう一口、口に運ぶ。


ぽつっと、口に出てた。

「……俺ら、もうちょい上手くやれてたら」


手が止まる。


少し間。

「助ける方法、あったんかな」


誰もすぐには答えへん。


でも、気配はある。


横を見ると、ナオユキは皿を見たまま止まってる。ミラはパンを持ったまま動かない。ハナも、スプーンを握ったまま、視線を落としていた。


全員、同じとこで止まってる。


俺は頭をかく。

「……結局」

言葉を探す。

「一人でやろうとしたんがあかんかったんやろな」


ナオユキが頷く。

「そうだな」

一拍置く。

「でも、それはダイキだけじゃない。俺もだ」


ミラが肩をすくめる。

「……私も、勝手に走ったしね」


ハナが苦笑する。

「うん、私も」


ミラが、ふっと笑う。

「あはは、全員だね」


俺も苦笑する。

「そら、出来ることも出来へんわな」


少しだけ空気が緩む。


ナオユキが言う。

「うん」


一度、言葉を選ぶ。

「俺たちの理想はな」


「全員が、その時に持ってる力を全部出して、パーティとして最大の力で戦うことだ」


少し間。


「そうやって、勝つべくして勝つ」


「そのためには、バラバラに動いてたらダメだ」


ミラがすぐに頷く。

「うんうん、賛成!」


ハナも続く。

「みんなが作戦通りに動くってことだよね。私も賛成」


少しだけ考える。

「でも……」


「今回みたいに、途中で状況が変わったら、どうするの?」


少しだけ間が落ちる。


ナオユキが言う。

「そういう時のために」

「戦闘中の指示役が必要になる」

「全体見て、誰がどう動くか決める役だ」


ミラがすぐに首を振る。

「私には絶対無理」


ハナが少し戸惑う。

「え、じゃあ私?」

「……出来るかな」


俺が口を挟む。

「難しく考えんでええよ」


「最初のうちは、全体見て気づいたこと言うてくれたらええ」


「そしたら、俺かナオユキが判断する」


ハナが少し安心したように頷く。

「……うん、それなら」


少し間。


「それよりも……」


ナオユキが俺を見る。

「なんや」


俺は少し考える。

「うん、せやねん」

「今言うてくれた方針、正しいのは分かるんやけど」


「なんか、引っかかるねんな」


少し首をひねる。

「でも、それが何か分からん」


ナオユキは一瞬だけ考えて、言う。

「気にはなるが、分からないなら今は一旦おいておこう」


「一旦、今決めた方針でいく」


俺は小さく頷く。

「……せやな」




その後、ナオユキとミラは一度ログアウトした。

「また明日な」

軽く言って、それぞれ消えていく。

相変わらずログアウト出来へん俺は、ハナと一緒に残った。


そうして翌日。

俺たちは、また浅い層を回ることにした。


最初は、なかなか決めた方針通りにはいかへん。

動くタイミングがズレる。声も遅れる。


でも、少しずつ、合ってくる。

ハナが気づいた変化を先に口に出す。それをナオユキか俺が拾って、全体の動きにする。


まだ完璧やない。

それでも、前よりは戦況が変わった時に勝手に動くことは減って、声を挟んでから動けるようになってきた。


そうやって、五日、六日と過ぎたころ。

今日もいつものように探索に行こうとダンジョンの入口に来た時やった。


説明会で進行をしていたギルド職員に、声をかけられる。

「少し、いいですか」

いつもより、声が固い。


ナオユキが足を止める。

「どうした」


職員は一瞬だけ周りを見てから、声を落とす。

「最近、戻ってこないパーティがいくつかあって」


少し間。

「原因調査で、下の層に向かったまま、連絡が取れていません」


さらに一拍。

「……かなり深いところです」


空気が、少しだけ重くなる。


職員が続ける。

「行方不明のパーティの中には、白潮旅団も含まれます」


一瞬、思考が止まる。

「……え」

声が漏れる。

「ドイルさん達……!?」


胸の奥が、ざわつく。


職員が、少しだけ言葉を選ぶ。

「本来であれば、より上位のパーティに依頼する案件です」


一拍。

「ですが――」

視線が、俺たちに向く。

「このダンジョンの異変の影響で、海域が荒れており、現在、王都行きの船は止まっています」

「応援を呼べない状況です。そのため、今この場にいるパーティで、出来る範囲の対応を進めています」


さらに一拍。

「その中で――みなさんはここ数日、浅い層とはいえ、毎日潜って全員無事に戻ってきている」

「連携も安定していると、記録で確認しています」


ナオユキが黙って聞いている。


職員は続ける。

「無理に深部へ進んでいただく必要はありません。依頼は、あくまで行方不明パーティの足取りの確認です」


少し間。

懐から、小さな石のようなものを取り出す。

「これは緊急帰還用のアイテムです。危険を感じた場合、使用すれば入口まで転移します」


一拍。

「非常に貴重なものですが、今回は支給します」


俺は眉をひそめる。

「……そこまでか」


職員が、静かに言う。

「無理はしないでください。正式には、緊急クエストとして発行します。受諾は任意です」


少し間。

「ですが……」

一瞬だけ迷う。

「このまま放置するわけにはいかない状況です。どうか、力を貸していただけませんか」


少し沈黙。

俺とナオユキの視線が、合う。言葉はいらん。同じこと、考えてる。


「……行くか」


ナオユキが頷く。

ハナも、ミラも、何も言わずに立ち上がった。


それで、決まった。


浅層担当だった俺たちは、

初めて、下へ進むことになる。



ダイキ

職業 なし

レベル 20

スキル

打撃 Lv54→55、打ち下ろしLv34→36

ダッシュLv15→16、ステップLv10→12、跳躍Lv9

回避Lv8→9、姿勢制御Lv5→6、予測Lv7→8

毒耐性Lv3→5、覚悟Lv2、水耐性Lv5、炎耐性Lv3

ユニークスキル

可塑覚醒ニューロアウェイク


ハナ

職業 なし

レベル 11→15

スキル

(火)バトルイグニッションLv1

(水)ウォーターボールLv13→15、ヒールLv10→13、プロテクションLv6→8、浄化Lv1→4

(風)嵐斬Lv3


ダッシュLv3→4、回避Lv1

共感感知Lv4→6

炎耐性Lv1、毒耐性Lv1

魔力操作Lv3→4、多重展開Lv2→3



ナオユキ

職業 盾戦士

レベル 42→43

スキル

ガードLv20、強ガードLv20、構えLv20

全身ガードLv18→19、受け止めLv18、体勢保持Lv19

受け流しLv20、偏向Lv20、姿勢制御Lv16

武器逸らしLv15、連続受け流しLv13→14

横斬りLv20、袈裟斬りLv20、逆袈裟Lv20

炎薙ぎ払いLv16、炎斬り上げLv14、炎踏み込み斬りLv13

ダッシュLv12、ステップLv11、跳躍Lv9

緊急離脱Lv13→14、急接近Lv10→11

回避Lv8、予測Lv9、覚悟Lv7

炎耐性Lv10、水耐性Lv6、風耐性Lv5

木耐性Lv4、毒耐性Lv5→6、麻痺耐性Lv6


ミラ

職業 なし

レベル 4→11

スキル

射撃Lv3→7、速射Lv1→4、強弓Lv1→4

ダッシュLv3、回避Lv3


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