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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第5章.港町で出会う仲間たち

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6.港町の夜


港のざわめきが少し落ち着いたところで、さっきまで睨み返していた女性が、今度は人懐っこく笑った

「助かったー……!」

胸をなで下ろすように大きく息を吐く。

それから、少し慌てたようにこちらを見る。

「ありがとうね! あ、私はミラよ!」


元気やな。

さっきまで囲まれてたとは思えへんくらい、感情がそのまま顔に出てる。


「俺はナオユキ」

「ダイキ」

「ハナです」


順番に名乗ると、ミラがぱっと明るい顔になった。

「ナオユキに、ダイキに、ハナちゃんね!」


ミラはそのまま勢いよく話し始めた。

「でもほんと助かったわ」

「どこに行けばいいのか分からなくて、ずっと困ってたのよね」


それから、思い出したように身を乗り出す。

「最初に説明みたいなの出たんだけど」

「私なら大丈夫って思って、飛ばしちゃったの」


ナオユキが一瞬固まる。

俺も思わず顔を見合わせた。

……そら、そうなるわな。


ミラはまったく気にせず続ける。

「そしたら、いきなり人がいっぱいいる街に出されて」

「どこ見ても人、人、人!」


両手を大きく広げる。

「で、叫んでも誰も助けてくれなくて」

「もう、どこ行けばいいのか分かんなくなってたら、ぶつかられてあれ!」


……なるほど。

さっき港で聞こえた、

「私はどこに行けばいいのー!?」

あの声か。


全部つながった。

ハナも小さく納得したようにうなずいている。


「それで、さっきの騒ぎになったんだね」

ハナがやわらかく言う。

「そうなのよ!」

「ほんと最悪だったわ!」


でも、すぐにぱっと笑顔になる。

切り替え早いな。




「でもさ」

ミラが身を乗り出してきた。

「あなた達、格好良かったわよ!」


ハナが少し照れたように目を瞬かせる。

「せっかくだし、いろいろ何すればいいか

教えてよ!」


ナオユキが少し笑って、すぐにうなずいた。

「もちろん」

「まずは装備見て、ギルド行こうぜ」


さすがに手慣れてる。


ハナがナオユキを見る。

「ナオユキさんは、このゲーム、詳しいんですか?」


ナオユキが少し肩をすくめる。

「まあ、結構やってるな」


ハナが小さくうなずいた。

「そうなんですね」

「それは、安心です」


俺が横から笑う。

「相変わらず段取りええな」


ナオユキが肩をすくめる。

「昔からお前が行き当たりばったりだっただけだろ」


……否定できへん。

思わず笑ってしまう。


ナオユキが横で笑う。

「ほんと、変わってねーな」


「そっちやろ」

俺も肩をすくめる。


「高校の時も、コンビニで絡まれてる女の子助けてたやん」


ナオユキが少し顔をしかめる。

「そんなことあったっけ」


「とぼけんなや」

思わず笑う。


「あの子も可愛かったもんな」

「ミラさんも可愛いし、それで助けたんか?」


ナオユキが一瞬黙って、ふっと笑った。

「……バレたか」


ミラがぱっと顔を上げる。

「え、なにそれ!」

「そういう理由なの!?」


俺が肩をすくめる。

「まあ、こいつ――」


その時。


ハナがぽつりと口を開いた。

「前に言ってたよね」

「困ってる人、見捨てない友達がいるって」


「ちょ、ハナ!今、それ言うたらアカン!」


ミラがくすっと笑う。

「仲良かったんだね!」


「よし、行こ!」

ミラが真っ先に歩き出した。


「ミラさん、道分からんやろ」

思わず声が出る。


ミラがぴたりと止まる。

「あ」


その横でハナが小さく笑った。


そのまま俺たちは、装備屋へ向かった。



店の中には、武器や防具が所狭しと並んでいる。


ナオユキがミラの方を向いた。

「で、ミラさんはどんな感じで戦いたいんだ?」


「え、戦い方?」

ミラがきょとんとする。


「前に出るのか、後ろから撃つのか、とか」


ミラが少し考えてから、ぱっと顔を上げた。

「えっとね、動き回りながらバンバン撃ちたいね!」

「危なくなったら逃げる感じ!」


「なるほどな」

ナオユキがうなずく。


ミラが身を乗り出す。

「どんなのがあるの?」


ナオユキが棚の方に手を向ける。

「例えば――」



俺はちらっと二人を見て、ハナの方を向く。

「ミラさんはナオユキに任せて、俺らも見よか」


店の中には、武器や防具が所狭しと並んでいる。

(……めっちゃあるやん)

思わず足が止まる。


剣、槍、杖、斧。

見たことない形の武器まで並んでる。


服は相変わらず変えられへんけど、武器は変えられる。


ワクワクしながら、一本、手に取る。

装飾の入ったショートメイス。

細身で、握りも軽い。


「お、これええやん」

軽く振る。


バランスもいい。

(なんやこれ、めっちゃカッコええやん)


ふと、今の棍棒を見る。

……ダサい。

どう見てもダサい。


「ハナ、見てみ」

「これめっちゃええで」


ハナが覗き込む。

「ほんとだ」

「だいぶ印象変わるね」


「やろ?」

ちょっとテンションが上がる。


(ついに卒業やな、このダサい棍棒)


その時。


その時。


革の前掛けをつけた年配の男性店主が近づいてきた。

ごつい指先と、傷の多い手。

いかにも長年武器を扱ってきた職人、という雰囲気やった。


店主は俺の棍棒をじっと見ている。


「……その武器、少し拝見してもよろしいでしょうか」


「ん?ああ」

棍棒を手に取って、渡す。


店主が手に取り、重さを確かめる。

軽く振る。

表面を指でなぞる。


「……うーん」

小さく唸る。


もう一度、じっと見る。

「……これは」


顔が少し変わる。

「珍しい素材ですね」

「この地域では、まず流通しておりません」


「そうなん?」

思わず見直す。


店主は静かにうなずく。

「強度、魔力伝導ともに非常に高い」


一瞬、間を置く。

「正直に申し上げて」

「当店の品では、これを上回る打撃武器はございません」


「……え?」

手に持っていたショートメイスを見る。

棍棒を見る。


「……これより?」

「はい」


「……マジで?」

もう一度、棍棒を見る。


ダサい。

でも強い。


(……またこれか)


少しだけため息を吐く。


「……しゃあないか」

棍棒を肩に担ぐ。


「今回も頼むで、お前」


なんやかんやで、一番頼りになるのはこいつやった。


武器棚から離れて戻ると、ちょうどミラたちも会計を終えたところやった。


「お、戻ってきた」

ナオユキが軽く手を上げる。


ミラがぱっと駆け寄ってくる。

「どこ行ってたの?」


「ちょっとな」

肩をすくめる。


「まあ、いいや!」


ミラが勢いよく武器を突き出してきた。

「これ見て見て!」


細身の弓。

しなやかで、無駄のない形。


「弓か」


「そう!」

ミラが胸を張る。

「こう見えて、昔は弓道部だったのよ!」


「へぇ」

思わず声が出る。

(あのノリで弓道部なんや……)


ナオユキが横で笑う。

「確かに、合ってるな」


「でしょ!」


その時、ナオユキの装備に目がいく。


「……盾、変えたんか?」


「ああ」

軽く腕を上げる。


波模様の刻印が入った盾。

「この辺だとこれが一番マシだったな」


「似合ってるやん」


ミラがこっちを見る。

「で、そっちは?」


一瞬、間。


「何か買ったの?」


俺は少しだけ視線を逸らしてから、肩をすくめる。

「……まあ、色々あったんだよ」


ハナが横で小さく笑う。


ミラが首をかしげる。

「なにそれ、気になるんだけど」


「気にすんな」

軽く流す。


ナオユキがくすっと笑った。


その時。


ミラがお腹を押さえて、ぴたりと止まる。


「……あ」


真顔になる。


「お腹すいた」


一瞬、間。


「いや、めっちゃ今さらやな」

思わずツッコむ。


「だって緊張してたんだもん!」

ミラが開き直る。


「助けてもらって、装備も見てもらって、

このまま解散とか寂しくない?」


その言葉に、少しだけ空気が変わる。


ミラが、にっと笑った。

「せっかくだし、ご飯行こうよ」


ハナが小さくうなずく。

「……私も、お腹すいた」


ナオユキが笑う。

「決まりだな」



ミラがぱっと笑う。

「よし、決定!」


港町の灯りが、

少しずつ夜の色に変わっていく。


なんとなく。


この夜は、

まだ終わらへん気がした。


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