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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第5章.港町で出会う仲間たち

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5.港の騒動


その声の先。


一人の女性が、通りの真ん中で男たちに囲まれていた。


肩で切りそろえた明るい茶色のボブ。


年上やろか。

落ち着いた顔立ちなのに、

目だけは妙に強い。


服装は軽装やけど、

立ち方に妙な遠慮がない。


美人、やと思う。


でも今はそれどころやない。


足元には壊れた木箱。

割れた瓶から赤い液体が石畳に広がっている。



「だから、あんたが急に立ち止まったからだろ!」

商人らしい男が声を荒らげる。


女性は明らかに混乱していた。


でも、一歩も引いていない。


「ちょっと待って!」

「私が悪いって決めつけないで!」


きつい目で、真正面から睨み返している。


焦ってはいる。

でも、逃げる気はない。


むしろ、

ちゃんと言い返してる。


……めっちゃ強気やな。


でも、横でハナの視線がほんの一瞬だけ止まった気がした。


「弁償してもらおうか」

低い声が落ちる。

商人の後ろにいた護衛の男たちが、一歩前へ出た。


揃いの黒い腕章。


そして、見事なくらい全員モヒカン。


……なんでやねん。


目つきも悪い。

ちゃんと怖い顔で睨んできてる。


どう見ても、まともな護衛やない。




その時だった。


「おい、やりすぎじゃねーか」

その声に、思わず足が止まる。


……え?


人混みの向こう。

前に立った男の横顔が見えた。


黒髪。

少し鋭い目つき。

左腕には使い込まれた盾を構え、軽装鎧の上からでも、前衛職らしい体つきが分かる。


見間違えるはずがない。


「……ナオユキ?」

思わず声が漏れる。


男の肩がぴたりと止まる。


ゆっくり振り向いたその顔を見て、

胸の奥が一気に熱くなる。


「ダイキ!?」


高校時代から何度も見てきた顔。

間違いない。

「やっぱナオユキか!お前、なんでこんなとこにおんねん!」


ナオユキが苦笑する。

「それはこっちのセリフだろ」


でも、その視線はすぐ男たちへ戻る。


「一人の女性を囲んで何してんだよ」

護衛のモヒカンが睨み返す。

「なんだぁ、お前?」


空気が一気に張りつめる。

一人がナオユキの胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。


その瞬間、俺も前へ出た。


「やめとけ」

低く言う。

ハナもすぐ横につく。


護衛五人。

こっちは俺、ハナ、ナオユキ。



でも、周囲の視線が一気に集まり始めていた。

港の通りのど真ん中や。

さすがに相手も、ここで騒ぎを大きくしたくはないはずや。



ハナが足元の木箱を見る。


「これ……」

しゃがみ込んで、留め具に手を伸ばす。

金具が半分外れかけていた。


「最初からゆるんでたんじゃない?」


ナオユキもすぐにしゃがみ込む。

箱を軽く持ち上げて確認する。


「ほんとだ」

「これ、ぶつかっただけで落ちる状態じゃねーか」


周囲からも声が飛ぶ。


「それをこの子のせいにするのは無理あるだろ」

「ぶつかっただけで壊れる方がおかしいって」


空気が一気に変わる。

商人の顔が引きつる。

護衛のモヒカンたちが舌打ちした。


「……テメェら覚えてろよ」

低い捨て台詞。


黒い腕章が人混みの中へ消えていく。

港のざわめきも、少しずつ元に戻っていく。


……あいつら、ただの護衛やない気がする。




ようやく空気が緩む。

ナオユキがこっちを見て、肩をすくめた。


「マジで久しぶりだな」


思わず笑う。


「ほんまや」


高校の帰り道。

コンビニ前でだらだら話してたあいつが、今、港町のど真ん中におる。


なんやこの再会。


「お前、昔から首突っ込むよな」

俺が笑う。

ナオユキも鼻で笑った。

「お前にだけは言われたくねーよ」


その瞬間、二人で笑ってしまう。


ふと、横のハナを見る。


「そういやハナ、覚えてるか?」

「高校の時の同級生のナオユキや」


ハナが少しナオユキを見る。


ナオユキもハナを見て、少し首をかしげた。

「……あれ、どっかで見たことある気がするな」


ハナが小さくうなずく。

「ナオユキさんですよね」

「ダイキさんと一緒にいた時に、何度か」


ナオユキが軽く納得したようにうなずいた。

「ああ、そういうことか」


その横で、さっきの女性がぱっと顔を上げた。


「助かったー……!」

胸をなで下ろすように大きく息を吐く。


それから、少し慌てたようにこちらを見た。


「ありがとうね! あ、私はミラよ!」


港のざわめきは、まだ完全には静まっていなかった。

潮風が通りを抜けていく。


知らん街に着いたばっかりやのに、

もう昔の知り合いと再会してる。


……ほんま、人生何が起こるか分からんな。

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