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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第5章.港町で出会う仲間たち

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4.潮風の港町


丘を下りきった瞬間、潮風が真正面からぶつかってきた。


「……うわ」


思わず声が漏れる。


潮の匂い。

魚の匂い。

木材とロープの匂い。


旅の間に何度も海の気配は感じていたけど、これは別格や。


目の前に広がるのは、白い石造りの建物が並ぶ大きな港町。


ノースポートより道幅が広い。

人も多い。


旅人、商人、船乗り、荷運びの労働者。


とにかく人の流れが途切れへん。


アクアポートに足を踏み入れた瞬間、音が一気に押し寄せてきた。


「新鮮な魚やでー! 朝獲れや!」

「積み荷そっち回せ! 急げ急げ!」

「ちょっと、私はどこに行けばいいのー!?」

「だからその便はまだ入ってへん言うてるやろ!」

「海霧側の船は今日も遅れとる!」

「船酔い止めありますよー!」


……うるさっ。


思わず笑ってしまう。

でも、嫌な感じやない。

街が生きてる音や。


「すごい……」

横でハナが目を丸くしていた。


「ほんとに大きい街だね」


「せやな」

「ノースポートとは規模が全然ちゃう」


道の先には港が見える。


大型の帆船が何隻も停泊し、その周囲では荷物の積み下ろしが絶えず行われていた。


木箱。

樽。

麻袋。


クレーンみたいな木組みまである。


(……完全に物流拠点やな)

人も物も、全部ここに集まってる。


「すみません、船着き場まで送っていただけますか?」

レティシアが荷物を抱えたまま、小さく頭を下げた。




港へ近づくにつれて、人の声がさらに大きくなる。

その中でも、少し荒れた声が耳に入った。


「三日遅れ!? ふざけんな!」

「こっちは商談が飛ぶんじゃぞ!」


丸い帽子をかぶった小太りの商人が、

港の職員に詰め寄っていた。

職員も困り切った顔をしている。


「ですから、海霧迷宮の影響で……」

「向こう側の便が遅れておりまして」


海霧迷宮。

その言葉に、思わず足が止まる。


横でハナが小さく首をかしげた。

「海霧迷宮って?」


港の沖合に目をやる。

遠くの海面に、白い霧がうっすら漂っていた。


「……たしか、この近辺の海にあるダンジョンやったかな」


「海の上に迷宮があるって、なんかすごいね」

ハナが少し目を輝かせる。


「せやけど、商人さんらめっちゃ困ってるみたいやな」


少し先では、まだ怒鳴り声が続いていた。

「このままやと明日の荷も間に合わんぞ!」

「原因はまだ分からんのか!?」


ただの船便遅れにしては、少し空気が張りつめている。

胸の奥に、小さな引っかかりだけが残った。


ふと隣を見る。


レティシアが、抱えていた荷物を持ち直していた。

「私はこのまま王都行きの船を手配してきます」

「ここまで、本当にありがとうございました」


「もう船乗るん?」

思わず聞き返す。


レティシアが少しだけ顔をしかめた。

「……できれば避けたかったんですが」

「ここから王都までは数時間ですので、我慢します」


「そっか」

「ここまで来たら、もう少しやな」


ハナもにっこり笑う。

「またね、レティシアさん」

「王都でも、元気でね」


レティシアは少しだけ柔らかい顔をしてうなずいた。

「……はい」

「お二人も、お気をつけて」


「あと良かったらこれ追加のお礼です。お二人に合わせた特製の能力強化薬です。効果時間は短いですが……」

そうして、人混みの中へ消えていった。




「ねえ、ダイキ」

レティシアを見送った直後、ハナが袖を引っ張ってきた。


目がきらきらしている。

……あ、この顔。


「魔法屋、ある」

指差した先。

青い看板に、水晶玉のマーク。


「行きたいんやろ?」

「うん!」


扉を押す。

ちりん、と澄んだ鈴の音が鳴った。


中に入った瞬間、ふわっと独特の香りが鼻をくすぐる。


薬草。

インク。

魔石。


棚いっぱいに並ぶ巻物と魔導書。


「わあ……」

ハナの目が一気に輝く。


ハナが棚の巻物を一つ手に取る。

「……あ」


小さく声が漏れる。

「これ、瞬動」


思わず巻物を見る。


高速移動の上級補助魔法。


ハナの目が少しだけ見開いた。

「リゼルさんが使ってたやつだ」


あの青い花畑での戦いが頭をよぎる。

一瞬で距離を詰めて、敵の懐へ潜り込む動き。

まるで消えたみたいに見えた。


「かっこよかったよね」

ハナが少しだけうれしそうに笑う。


でも、その下の値札を見て、表情が止まった。


「……500万?」

思わず目を丸くする。


「高っ」

「さすがリゼルさんの魔法やな……」


その時だった。


「お客様」

静かな声が横からかかった。


灰色のローブを着た中年の男性店主が、

にこやかに一礼する。

細い目の奥だけが、妙に商売人らしく光っていた。


店主がにこやかに一礼する。

「もしよろしければ、こちらもございます」


そう言って差し出されたのは、小ぶりな巻物だった。


封印紐は薄い灰色。

属性を示す色紋もない。


「未鑑定品ですが、海霧迷宮由来の流れ品でして」

「属性もランクも、使用するまで分かりません」

「本日は特別に、50万 Jennyでお出ししております」


「……50万?」


さっきの500万を見た後やと、安く感じる。

でも、決して安い買い物ではない。


ハナが巻物を見つめたまま、小さくつぶやく。

「もし、水じゃなかったら……」


俺は肩をすくめる。

「まあ、その時はしゃあない」

「ギャンブルや」


ハナが小さく迷う。


でも、その目の奥には、少しだけ好奇心も見えた。

「……一本だけだよ?」

ハナがじっと見る。


「一本だけ」

俺は笑いながらうなずいた。


店主に向き直る。

「これ、ください」


一つ目の巻物を開く。


灰色の光が、ふわっとハナの手元に吸い込まれていく。


きらり、と銀色の粒子が舞った。


ハナがすぐにステータスを確認する。


少しの間を置いて、顔を上げた。

「……嵐斬」


店主がすぐに口を開く。

「おお、それは上級の風属性攻撃魔法でございます」


「上級?」

思わず聞き返す。


その瞬間、頭に青い花畑での戦いがよぎった。

ガーゴイルが放った、大爆発。

「あれと同じランクやん」


思わず身を乗り出す。

「いや、これ熱いわ」


ハナが少し呆れたように笑う。

「……でも、水属性じゃないんだよ?」


俺は残った巻物を見ながら、つい口元が緩む。

「でも、この値段で上級出るんやで?」

「もう一本くらい、見たいやろ?」


ハナが少しだけ迷って、ため息まじりにうなずいた。

「……じゃあ、もう一本だけ」


二本目を開く。

淡い青い光が、するりとハナの中へ流れ込んだ。


ハナがすぐにステータスを確認する。


「……ヒール」

一瞬、俺もハナも固まる。


それから、思わず吹き出した。

「ヒール!?」


店主が少し申し訳なさそうに説明する。

「既習得魔法の場合、熟練度経験値へ変換されます」


「そんなことあるんや」

思わず笑ってしまう。


でも、ここで逆に妙な納得感が出てきた。

「いや、当たりもハズレもちゃんと入っとるってことやな」


ハナがじとっとした目でこっちを見る。

「その考え方、危ないよ」


……せやけど。


もう止まらなかった。



三本目は火属性の中級、バトルイグニッション。

四本目はまさかの嵐斬被り。

五本目は既習得のプロテクション。


定期的にちゃんと高ランク魔法を見せてくる。


だから、あと一本だけ。

その気持ちが、どうしても止まらへん。


ハナが俺をじっと見る。

「もう、ほとんどお金残らないよ?」


財布の中身が頭をよぎる。

……せやけど。


ここまで来たら、最後の一回を見ずには終われへん。


「あと一回だけや」

俺は最後の巻物を手に取った。


六本目。


澄んだ青い光が、ゆっくりハナの中へ溶けていく。


さっきまでとは、明らかに空気が違う。


ハナがすぐにステータスを確認する。

そして、ぱっと顔を上げた。


「……浄化」


店主が小さくうなずく。


「水属性 中級の状態異常回復魔法でございます」

「毒、麻痺、鈍化の解除に有効です」


「やったー!」

ハナの顔が、ぱっと明るくなる。


俺も笑った。

最後にちゃんと当たりを引いた。

そんな満足感が、二人の間にふわっと広がった。


「……よし」

俺は財布の軽さを確かめて、小さく息を吐いた。


「さぁ、クエスト探すか」




魔法屋を出た時には、空が少し赤く染まり始めていた。

潮風が強い。


さっきより、港のざわめきが大きい。

人の流れも少し乱れている。


その中で、少し場違いな声が混じった。


……ん?


思わず足が止まる。

ハナと顔を見合わせる。


「今の……?」

ハナが小さくつぶやく。


俺も耳を澄ませる。

「……さっきも聞こえた気ぃするな」


その声の先。


一人の女性が、通りの真ん中で男たちに囲まれていた。


人の流れが、そこだけ不自然に割れている。


港のざわつきが、少しずつ大きくなっていく。


(……また、なんか始まりそうやな)

潮風が、少しだけ冷たく感じた。



___

ダイキ

職業 なし

レベル 20

スキル

打撃 Lv53、打ち下ろしLv32

ダッシュLv14、ステップLv10、跳躍Lv9

回避Lv7、姿勢制御Lv5、予測Lv6

毒耐性Lv3、覚悟Lv2、水耐性Lv5、炎耐性Lv3

ユニークスキル

可塑覚醒ニューロアウェイク


ハナ

職業 なし

レベル 9

スキル

(火)バトルイグニッションLv1

(水)ウォーターボールLv12、ヒールLv6→8、プロテクションLv3→5、浄化Lv1

(風)嵐斬Lv3


ダッシュLv2

共感感知Lv3

炎耐性Lv1、

魔力操作Lv1、多重展開Lv1→2

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