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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第5章.港町で出会う仲間たち

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1. 港町の洗礼

ここから、第二部に入ります。

引き続き、宜しくお願いします。


新しい街。

新しい出会い。

新しい物語。


そんな期待は、一瞬で吹き飛んだ。


目の前で、モヒカン頭の男たちが一斉にこっちを向く。


「……は?」


思わず声が漏れる。


近い。


しかも全員、めちゃくちゃ怖い顔で睨んできてる。



その向こうでは、明るい茶色のボブの女性が、

男たちに囲まれながらも一歩も引かず、

きつい目で睨み返していた。


見た感じ、俺たちより少し年上。

けど、怯えてるというより、完全に怒ってる顔やった。


……なんでや。


新しい街に着いて早々、

なんでこんな修羅場のど真ん中におるねん。


(……なんでこうなった)


アクアポートに着くまでの一週間を、俺は一気に思い返していた。



___



話は、数日前のノースポートまでさかのぼる。


ノースポートの朝は、いつもより少しだけ空気が軽かった。


昨夜、受付で

「正式受注は依頼人との面談後になります」

と言われていたこともあって、俺たちは朝一番でギルドへ向かった。


ギルドの扉を押すと、朝の空気とは違う熱がふっと肌に触れた。

木の床を踏む足音、依頼票の前で交わされるざわめき、奥から漂ってくるインクと革の匂い。

朝やのに、もう人でいっぱいや。


昨日見つけた依頼のことが頭に残っていて、自然と足は掲示板へ向かっていた。

ハナも俺の横にぴったりついてくる。


「なんか、ちょっとドキドキするね」


「せやな」

「また面白いこと起きそうやし」


人の肩越しに覗き込む。


……あった。


【アクアポート行き護送依頼】

依頼人:薬学研究者

目的地:アクアポート


「……これや」


思わず口に出る。


胸の奥が、少しだけ高鳴る。


次の街。

次の物語。


なんや、ちょっとワクワクしてきた。




ハナが俺の腕の横から覗き込んだ。

「アクアポート……同じ港町だよね?」


「せやな」

「普通なら船一本で行ける距離や」


俺も少し首をかしげる。

「それなのに護衛依頼って、なんかあるんやろな」


「荷物が多いとか?」

ハナが小さく笑う。


「研究者って、そういうとこ抜けてそうやもんな」


その時だった。


「失礼します」

「ダイキさんとハナさんでお間違いないでしょうか?」


澄んだ声が、すぐ後ろから聞こえる。


振り向く。


眼鏡の女性が立っていた。

二十代後半くらい。

落ち着いた雰囲気やのに、目だけは妙に鋭くて、何かをずっと考え続けているような光を帯びている。


肩から下げた革のケースと、腰に吊るした小瓶が、いかにも研究者らしい。


「私、レティシアと申します」

「この依頼の依頼人です」


そう言って、丁寧に頭を下げた。


「アクアポートまで、街道を使って向かいたくて」

「護衛をお願いしたいんです」


「……街道?」

思わず聞き返す。


「そこ、普通は船ちゃう?」


ノースポートもアクアポートも港町や。

海路なら一本で着く。

わざわざ街道を行く理由が、すぐには浮かばへん。


ハナもこくこくとうなずく。

「だよね」

「なんでわざわざ街道を?」


レティシアは一瞬だけ固まり、それから眼鏡を押し上げた。


ほんの少しだけ、言いづらそうに視線が泳ぐ。


「……船酔いします」


短い。


思わず、俺とハナの間に一瞬だけ沈黙が落ちた。


「……かなり」

「……ひどく」


「それはしゃあないな」


俺が笑いを飲み込んで返すと、レティシアは少しだけ気まずそうに視線を逸らした。


「研究資料と薬草標本、それから器具類もありますので」

「できれば揺れの少ない方が……」


そう言って、抱えていた革ケースを少し持ち上げる。


よく見ると、肩から下げた鞄も思ったより膨らんでいた。

中身は紙だけやなく、瓶や小さな器具も入っているらしい。


(……ああ、そら大変やな)


ハナも小さくうなずく。

「なるほど」

「それなら街道の方が安心かも」


レティシアは、ほっとしたように表情を緩めた。

「ご理解いただけて助かります」


その仕草が妙に人間くさくて、ちょっとだけ警戒が解ける。


「引き受けていただけますか?」


ハナが俺を見る。

その目はもう、“行こう”と言っていた。


俺も笑ってうなずく。

「もちろん」

「次の街、行ってみたかったしな」


レティシアの表情が、ほんの少しだけ柔らかくなった。

「ありがとうございます」


レティシアは手帳を開き、さらさらと何かを書き込む。


「では、出発は明日の朝でよろしいでしょうか」

「こちらも資料整理と標本の梱包を済ませておきますので」


明日。


ちょうどええ。

俺たちも準備する時間ができる。


「了解」

「ほな、明日の朝に西門前で」


レティシアが小さく頭を下げた。

「よろしくお願いいたします」





ギルドを出ると、朝の風が頬を抜けていった。


「……よし」

思わず足が軽くなる。


次の街へ向かう準備。

そして、ずっと行けなかった場所。


「ハナ」

「まず最初に行くとこ決まりやな」


ハナがすぐに笑った。

「うん、装備屋だね!」


その一言だけで、胸の奥がじわっと熱くなる。


やっとや。


ようやく、入院着に棍棒という異常な見た目から卒業できる。


そう思った瞬間、足が自然と早くなった。

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