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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第4章.廃墟の奥で目覚めるもの

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7.崩れる戦線

ガーゴイルの巨体が、空高く舞い上がる。

一度、太陽の光を背にした。

眩しさに目を細めた、その一瞬。

姿が消えた。


「――っ!?」


速い。

いや、見えてへんだけや。


「上です!!」

リゼルの声が鋭く飛ぶ。

反射的に顔を上げる。


おらん。

……どこや。


その瞬間。

ぞくりと、背筋が粟立つ。


来る。


「ダイキ!!」

ハナの叫び。


咄嗟に横へ飛ぶ。


ドォンッ!!


さっきまで俺がおった場所へ、ガーゴイルが垂直に突っ込んできた。

石畳が砕ける。

衝撃波が足元から突き上げる。


――まずい。

次が来る。


赤い光が、すぐ目の前で灯る。


「――爆炎」


追撃や。

避け切れへん。


その瞬間。

横から、水の壁みたいな塊が割り込んだ。


ドォンッ!!


視界が、一瞬で真っ白になる。

熱風が顔を打つ。


「ぐっ……!」


腕で顔を庇いながら、なんとか踏みとどまる。


視界の先。

ハナが両手を前に突き出していた。


息が荒い。

かなり無理してる。


「……間に合った」

「カイルさんたちも、命は大丈夫」

「まだ動けないけど……」


少なくとも、全員まだ無事や。


せやけど、息をつく暇はなかった。

ガーゴイルはもう、再び空へ戻っていた。




空へ戻ったガーゴイルが、上空で静止する。

翼がゆっくりと広がる。


「一人増エタトコロデ無駄ダ」


低い声が、空から降ってきた。


……嫌な予感がする。


次の瞬間。

俺たち三人の中心に、赤い光が灯った。


「――っ!?」


足元やない。

ちょうど、俺たちの真ん中。


空間そのものに、火種が生まれている。


「集エ、灼熱ノチカラ。

揺ラメク火種ヨ、ヒトツニ集約セヨ――」


リゼルの目が鋭く細まる。


「ハナさん、相殺を!」

その声と同時に、すでに短剣を空へ向けていた。


「ウォーターランス!」


鋭い水槍が、赤い光へ突き刺さる。


同時に。


「うん!!」

ハナが両手を突き出す。


「ウォーターボール!」


今までで一番大きい水球が、赤い火種へぶつかる。


でも。

止まらへん。


赤い光が、なお膨れ上がる。


まずい。


「二人とも、掴まれ!!」


考えるより先に動く。


右腕でハナ。

左腕でリゼル。


そのまま抱え上げる。


「ダッシュ!!」


瓦礫の陰へ向かって、全力で駆ける。


抱えられたまま、二人の魔法は止まらへん。


「ウォーターランス!」

「ウォーターボール!」


走りながら、何度も赤い光へ撃ち込まれる。


せやのに。

火種は、なお膨れ続ける。


その瞬間。


「燃エヨ、爆ゼヨ、スベテヲ灰ヘ変エヨ。

大爆炎」


ドゴォォォンッ!!!!


背後で、世界が爆ぜた。


熱風が背中を殴る。


衝撃波に押されながら、瓦礫の陰へ飛び込む。


崩れた壁が、半分吹き飛んだ。


石片が雨みたいに降り注ぐ。


「……っ、ぐ」


なんとか、息はある。


腕の中の二人も動いてる。


……生きてる。


せやけど。

花畑の半分が、黒く焼け焦げていた。





瓦礫の陰で、なんとか息を整える。

肺が焼けるみたいに熱い。

背中も、腕も、まだ爆風の痛みが残っていた。


空を見上げる。


ガーゴイルは、また上空を旋回している。


くそ。

このままじゃ、ジリ貧や。


俺はすぐ隣のリゼルを見る。


「……リゼルさん」

息を整えながら、低く聞く。

「戦場支配はまだ使えへんのか」


リゼルは短く息を整えながら答えた。


「……まだです」


「情報が、あと少し足りません」


低い声。


「飛行高度」

「降下までの間隔」

「魔法発動の癖」


淡々と並べる。


「もう一度、降下軌道を見られれば――」


その瞬間。


ハナの髪が、ふわりと揺れた。


風。


……違う。


来る。


「ハナ――!!」


叫ぶより先に。


黒い影が、真横に落ちてきた。


音が、ない。

速すぎる。


ハナの目が見開かれる。


間に合わへん。


次の瞬間。


「――っ!!」


リゼルがハナを突き飛ばした。


入れ替わるように、その前へ滑り込む。


ドゴォンッ!!


鈍い衝撃音。


リゼルの身体が、正面から弾き飛ばされる。


青い花畑の上を、一直線に吹き飛んでいく。

花弁が、青い飛沫みたいに宙へ舞った。


花を薙ぎ倒しながら、

その身体がみるみる小さくなっていく。


青い花の海の向こうへ、姿が消えた。


「リゼルさん――!!」

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