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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第4章.廃墟の奥で目覚めるもの

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6.空より落ちる死

空気そのものが、爆ぜた。

次の瞬間、轟音と熱風が叩きつけられる。


「――っ!!」

反射的に顔を上げる。


黒い影。

最初は、雲が太陽を隠したのかと思った。


違う。


影が、落ちてきている。

巨大な石の翼が、午後の光を切り裂いていた。


考えるより先に、本能が叫ぶ。


――避けろ。


せやけど、間に合わへん。


「ダイキ!!」

ハナの声が弾ける。


同時に、横から青い水球が飛び込んだ。


爆ぜる炎。

ぶつかる水。


蒸気が一気に視界を白く埋める。


ドォンッ!!


衝撃が全身を叩いた。


「ぐっ……!」

体が石畳の上を滑る。


肩が壁にぶつかり、鈍い痛みが走る。

熱い。


右腕が焼けるように痛む。


視界の先で、リゼルも着地しながら片膝をついていた。


「ご無事ですか!」

短い声。


でも、呼吸は荒い。

完全には防ぎきれてへん。


蒸気の向こう、ゆっくりとその姿が現れる。


蒸気の向こう、ゆっくりとその姿が現れる。


石のような灰色の身体。

背中から伸びる、巨大な翼。


翼の縁は欠けた刃みたいに鋭く、

腕の先には、人の胴くらい簡単に裂けそうな爪が伸びていた。


頭部は獣にも人にも見える。

けれど、燃えるような赤い目だけは、

はっきりとこちらを見ている。


リゼルの声が、わずかに低くなる。


「……ガーゴイル」


その一言で、空気がさらに冷えた気がした。


ハナがすぐに駆け寄ってくる。


「ダイキ、動ける!?」

「……なんとか、な」


立ち上がろうとした瞬間、脇腹に痛みが走る。


脇腹が、息するたびにずきりと痛む。


ハナはすぐに両手をかざす。


「ヒール!」


淡い光が傷口を包み込む。


同時に、水の膜のような薄い光が全身を覆った。


「プロテクションもかける!」


助かる。


その間にも、ガーゴイルは花畑の中央でこちらを見下ろしていた。


まるで、狩りの始まりを楽しむみたいに。





「助けなきゃ!」

ハナがカイルとミーナのもとへ駆け出す。


「ハナ、二人を頼む!」


「こちらは任せて下さい」

リゼルの声が鋭く割って入った。


俺は棍棒を握り直す。



ガーゴイルは花畑の中央に降り立ったまま、こちらを見据えている。


赤い目が、ゆっくり細まる。


石像みたいな顔のはずなのに、

口元だけがわずかに歪んだ。


笑った。


「次カラ次ヘ……面倒ダナ」


低い。

石を擦るような、不快な声やった。


思わず息が止まる。


「……喋った」

思わず口から漏れる。


ハナも一瞬、顔を上げた。


リゼルの視線が鋭くなる。


「知能個体……想定以上です」


次の瞬間。


ガーゴイルの爪の先に、赤い火が灯った。


「来ます!」

リゼルの声と同時に、炎が膨れ上がる。


「爆炎」

短い詠唱。


炎塊が一直線に飛ぶ。


速い。


せやけど。


リゼルの短剣が閃く。

「ウォーターランス!」


鋭い水槍が正面からぶつかる。


ドンッ!!


蒸気が弾けた。


今や。


「ダッシュ!」

地面を蹴る。

俺は右から一気に間合いを詰める。


同時に。


反対側からリゼルの姿が消えた。

「瞬動!」

左から残像のように滑り込む。


挟んだ。


「打撃!」


俺の棍棒が右から唸る。

同時に、リゼルの短剣が左脇を裂くように走る。


……だが。


ガキィンッ!!


止められた。


右腕で俺の棍棒。

左腕でリゼルの短剣。


両方まとめて、受け止めてる。


「なっ……!」

力負けしてる。


次の瞬間。


ガーゴイルが左腕を振るう。

リゼルの体勢が崩れる。


今や。

「打撃!」

その隙に俺が踏み込む。


ガーゴイルの視線がこっちへ向く。

今度は、こっちが弾き返される。


くそ、重い。

その瞬間。


「瞬動!」

崩れたリゼルが再び左から斬り込む。


ギリギリで持ちこたえる。


押される。

崩される。


でも、片方が必ず繋ぐ。

綱渡りみたいな連携や。 


なのに。


ガーゴイルの口元が、わずかに歪んだ。

笑った。


遊ばれてる。



一度、間合いを取る。

息が荒い。

肩で呼吸しながら、ガーゴイルを睨む。

せやのに、向こうはほとんど動いてへん。


「……っ」

横でリゼルも短く息を整えていた。

視線だけは、一瞬も敵から外していない。


「ダイキ様」

低い声。

「応用スキルはお持ちですか」


応用スキル。

……いや、そもそも無理や。

属性のない俺には、応用スキルは習得できへん。


「ない」

短く答える。

リゼルが小さくうなずいた。

「分かりました」



次の瞬間。

その目が、さらに鋭くなる。


「では、私が隙を作ります」


短剣を逆手に握り直す。


「一番攻撃力の高い一撃を、確実に当てて下さい」


「任せろ」


その瞬間。

リゼルの姿が掻き消えた。


「瞬動!」


左へ滑り込む。


ガーゴイルが腕を振るう。

だが、その軌道の先へ水槍が走る。


「ウォーターランス!」


咄嗟に腕を戻して弾く。


その一瞬で、今度は右。


「瞬動!」


水を纏った斬撃が一直線に走る。


「流水踏斬!」


ガーゴイルが半歩下がる。


だが、逃げた先には、すでに次の一手が置かれていた。


「ウォーターランス!」


左を防げば右。

下がれば水槍。

前に出れば短剣。


動くたびに、逃げ道そのものを削られていく。


完全に視線がリゼルへ向いた。


その一瞬を、リゼルは逃さへん。


わざと半歩だけ踏み込む。


ガーゴイルが腕を大きく振り抜いた。


――誘った。


空振りや。


勢い余って、巨体が前へ流れる。


その足元へ、追い打ちの水槍。


「ウォーターランス!」


ドンッ!!


片膝が沈む。

姿勢が崩れた。


右へは瓦礫。

左へは水槍の射線。

後ろへ下がるには体勢が低すぎる。


前には、俺。


避けられへん。


「今です!!」


「ダッシュ!」


地面を蹴る。


「跳躍!」


全身をバネみたいに弾く。

視界が一気に上がる。


頭上から。


「打ち下ろし!!」


全体重を乗せて、棍棒を振り下ろす。


ドゴォンッ!!


棍棒が、確かにガーゴイルへ叩き込まれる。


……入った。


そう思った、次の瞬間。


ガキ……ッ。


鈍い音が遅れて響く。


視線の先で、ガーゴイルの両腕が交差していた。


俺の一撃を、頭上で受け止めている。


「……うそやろ」


リゼルの表情が、初めてわずかに揺らいだ。


耐えられた。


俺の棍棒を受け止めたまま。

ガーゴイルが、ゆっくり顔を上げる。

燃えるような赤い目が、真正面から俺を捉えた。


ぞくりと背筋が冷える。


次の瞬間。


腕に、とんでもない力が返ってきた。


「――っ!!」


吹き飛ばされる。

体が宙を舞い、花畑の上を転がった。


「ダイキさん!」

リゼルの声が飛ぶ。


なんとか受け身を取る。


せやけど、右腕が痺れて動かへん。


あの状況で。

あれを受けて。


まだ余裕があるんか。


ガーゴイルはゆっくり立ち上がる。


その口元が、わずかに歪んだ。


「……悪クナイ」


低い声。


まるで、こちらを試しているみたいやった。


ガーゴイルの翼が、大きく広がった。

空気が震える。


……空へ戻る気や。


その瞬間。


リゼルが低く言った。


「まずいですね」

視線は一瞬も逸らさへん。


「飛行された場合、こちらの選択肢が一気に減ります」


その一言が終わるより先に。


ガーゴイルの巨体が、空へ跳ね上がった。

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