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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第4章.廃墟の奥で目覚めるもの

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3.戦場支配

銀の影が、俺の前へ滑り込んだ。


長い銀髪が、風を切って揺れる。

黒いメイド服の裾が、戦場の中で不自然なくらい静かに落ちた。


「……よく耐えましたね」


声は、いつもと同じだった。

丁寧で、落ち着いている。


でも。


その目だけが違った。


次の瞬間、リゼルの瞳が金色に染まった。


淡い光やない。

鋭く、冷たく、すべてを見通すような金。


ガレスの足が止まる。

ギルもハンマーを振り上げたまま、わずかに動きを止めた。


ユリウスの目が細くなる。

「……それは」


初めて、あの男の声に動揺が混じった。


リゼルは一歩前へ出る。

短剣を静かに構える。



「戦場支配」



その一言が、森の空気を塗り替えた。



次の瞬間。

「ハナ様」

リゼルの声が飛ぶ。


「共感察知を維持したまま、ウォーターボールを展開してください」


ハナが息を呑む。

「……同時に?」


「可能です」

即答やった。


「感知で回避先を捉え、そのまま追尾へ乗せます」


一拍。


「ガレスは必ず左へ流れます」

「左肩、その先へ撃ってください」


ハナの表情が変わる。


戸惑いから、集中へ。


「……うん!」


次に、その視線が俺へ向く。


「ダイキ様はそのまま前へ」

「怯んだ一瞬で詰めます」

「一撃目は打ち下ろし、二撃目で崩してください」


速い。


敵の位置。

味方の間合い。

次の動き。


全部が、もう決まってる。


……これが、戦場支配。


森の空気そのものが、リゼルの手の中に収まったように見えた。




ガレスが低く舌打ちした。

「……侍女風情が」


次の瞬間、地面を蹴る。


速い。


だが。


「左です」

リゼルの声が先に飛ぶ。


ハナが右手を前へ突き出す。


「ウォーターボール!」


青い水球が走る。


ガレスは鼻で笑う。

「甘い」

身体を左へ流す。


――その瞬間。


水球が、曲がった。


「……は?」

ガレスの目が見開かれる。


共感察知で捉えた回避先へ、水球がぴたりと軌道を変える。


追尾。


青い弾丸が、そのままガレスの左肩へ炸裂した。


「ぐっ!」


初めて、ガレスの身体が大きく崩れる。


その瞬間。


「今です」

リゼルの声。


もう身体が動いていた。


ダッシュ。

一気に間合いに飛び込む。


「まだ……っ!」


ガレスが無理やり体勢を立て直そうとする。


だが、もう遅い。


棍棒を振り上げる。

「もらった!」


打ち下ろし。

空気を裂く音とともに、一撃を叩き込む。


「がっ!」


さらに一歩踏み込む。

「終わりや!」


棍棒が脇腹へめり込む。


鈍い音。


ガレスの身体が大きく吹き飛び、そのまま地面へ叩きつけられた。


動かへん。


――落とした。



「兄貴……!」

ギルの低い唸り声が響く。


その視線が、倒れた仲間へ向いた。


一瞬。


その一瞬で十分や。


「ハナ!」

俺が叫ぶ。


「うん!」


青い水球が一直線に走る。


今度は、さっきまでとは違う。

迷いがない。


ギルの胸元へ、正面から叩き込まれる。


「ぬっ……!」

巨体がわずかによろめく。


その隙へ、俺は一気に踏み込む。

ダッシュ。


棍棒を連続で振り抜く。


打撃。

打撃。

打撃。


鈍い音が連続して森へ響く。


だが、硬い。

腕も肩も、まるで岩や。


「ぐっ……!」


それでも止まらへん。

一歩、さらに前へ。

「まだや!」


それでもギルは倒れへん。

巨体が唸りを上げるように前へ出る。


その瞬間、ハナの声が重なる。

「ウォーターボール!」


今度は大きい。

これまでより一回り大きな水球が、ギルの顔面へ炸裂した。


衝撃で、巨体がぐらつく。


今や。


跳躍。

上から距離を潰す。


棍棒を両手で握り直す。

「終わりやぁっ!」


打ち下ろし。


ズドン。


ついにギルの膝が折れた。

巨体が崩れ落ちる。




その直後や。


「くそっ!」

残っていた剣士が、半ばやけくそにリゼルへ斬りかかった。


速い。


だが。

「遅いです」

リゼルが一歩だけ踏み込む。


短剣が閃く。

一閃。


剣士の剣が宙を舞った。

次の瞬間、腹部へ蹴り。


「がはっ!」

そのまま木へ叩きつけられ、動かなくなる。


その一瞬。


「……っ!」

ハナが小さく声を上げた。

「ユリウスさん、いない!」


振り向く。

さっきまで木陰にいたはずの細身の影が、もうない。


……逃げた。


あの一瞬を狙ったんか。

やっぱり食えん男や。


そのままリゼルの視線が下へ落ちる。


倒れたガレス。

膝をついたギル。


短剣がゆっくり持ち上がる。


「待て!」

思わず声が出た。


リゼルの動きが止まる。


「……何でしょう」

その声は、まだ戦場の冷たさを残していた。


俺は一歩前へ出る。

「ここで殺したら、俺らまであいつらと同じや」


一拍。


リゼルの視線が、まっすぐ俺を射抜く。

「敵を再起不能にするのは合理的です」

淡々とした声。



感情がない。

まるで事実を述べるだけみたいや。


「再び我々へ刃を向ける可能性も高い」

「ここで排除するのが最適解です」


隣で、ハナが小さく息を呑むのが分かった。


正しい。

戦場としては、たぶん正しい。



せやけど。



俺は小さく息を吐く。


「……人ってな、何するか分からへんねん」

倒れたガレスたちへ視線を落とす。


「今日ここで敵でも、明日には誰かを助けるかもしれへん」


「逆に、また俺らの前に立つかもしれへん」

少しだけ笑う。


「でも、そういうのも面白い思うねん」


リゼルをまっすぐ見る。



「生きてる限り、やり直せるし、変われる」

「俺は、そういう可能性までここで切りたくないし、そういう可能性まで含めて楽しみたい」 



森の風が、静かに抜けていく。



しばらく、誰も動かなかった。


やがて。

やがて、リゼルの金色がゆっくり薄れていく。


短剣が下ろされた。

「……承知しました」


そこで初めて、少しだけいつもの声に戻った。

「今回は見逃します」



俺は倒れたギルの前へしゃがみ込む。


「おい」

棍棒の先で軽く肩をつつく。

「なんで青い花を探してた」


ギルは苦しそうに顔を上げる。

「……知らねぇって」


思わず眉をひそめる。

「は?」


「俺らは旦那に言われた通り、あんたらを追っただけだ」

「場所を見つけるか、花を奪えってな」


一拍。


「それ以上は聞いてねぇ」


その横でガレスが低く吐き捨てる。


「ユリウスの旦那とは長いが……」

「正直、何やってる男か、俺らも知らねぇよ」


森の空気が、少し冷たく感じた。


胸の奥がざわつく。


長く一緒に動いてる連中ですら、

何をしてる男か分からへん。


……ユリウス。


あいつ、ほんまにただの商人なんか。


俺は森の奥へ視線を向けた。


廃墟都市は、もうすぐそこや。


せやけど。


あの男の目的も、

青い花の正体も、

まだ何ひとつ見えてへん。



___

ダイキ

職業 なし

レベル 15

スキル

打撃 Lv18→20、打ち下ろしLv5→6

ダッシュLv10→12、ステップLv10、跳躍Lv5→7

回避Lv7、姿勢制御Lv2、予測Lv6

毒耐性Lv3、覚悟Lv2、水耐性Lv1


ハナ

職業 なし

レベル 6

スキル

ウォーターボールLv7→8、ヒールLv3→4、プロテクションLv1→2

ダッシュLv1

共感感知Lv1→2

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