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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第2章. 廃墟都市に灯る青い謎

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11.帰還、そして三百万ジェニー

街の灯りが見えて、ようやく少しだけ肩の力が抜ける。


廃墟都市の冷たさが、まだ服の内側に残ってる。

けど、頭の中はさっきの断末魔から全然離れへん。


少し歩いたところで、口を開く。

「……やっぱり、おかしい」


ハナが横を見る。

「何が?」


小さく息を吐く。

「気になることが、いくつかある」


少しだけ前を見る。


「あの男、最後まで気づいてへんかった」


ハナが少し眉を寄せる。

「気づいてなかった?」


「せや」


頷く。


「あの傷、一撃であそこまで入っとる」


「相手はどう見ても小型やない」


少しだけ間を置く。


「そんな相手が近づいたなら、普通は気づく」


「足音でも、気配でも、振り向く時間でも、何かしらあるはずや」


視線を前に向ける。


「でも、あいつにはそれがなかった」


ハナが小さく息を呑む。

「……たしかに」


「二つ目」

少しだけ声が低くなる。


「俺らは叫び声を聞いて、ほとんどすぐ向かった」


「せやのに、着いた時にはもう何もおらんかった」


ハナが頷く。

「うん」


「それも変や」


少しだけ目を細める。

「大型の相手やったら、立ち去る時に物音がするはずや」


「瓦礫を踏む音でも、着地音でも、何か残る」


「でも、なんも聞こえへんかった」


一拍。


「大型やのに、物音もなく去るなんてことが出来るんか」


ハナが考え込むように黙る。


「三つ目や」

「食べてへん」


ハナが顔を上げる。

「あ……」


「普通のモンスターなら、襲ったあとそのまま食うか、少なくとも持っていくやろ」


「でも、死体はそのまま残っとった」


少しだけ口元が歪む。

「じゃあ、何のために襲ったんやって話になる」


ハナが小さく言う。

「……殺すだけが目的?」


「その可能性はある」

短く返す。


「四つ目」


歩きながら、あの場所を頭の中でなぞる。

「偶然の可能性もある」


「けど、俺らが戦ってる時には現れず、男が逃げた後にだけ現れた」


ハナが少し考える。

「たしかに……」


「戦ってる音で来たなら、もっと早く出てきてもおかしくない」


「なのに来てへん」


少しだけ息を吐く。

「じゃあ、なんであのタイミングやったんやって話や」


ハナが腕を組む。

「……なるほど」


小さく頷く。

「それで、どう思うの?」


「考えられるんは、だいたい三つや」


少しだけ口元が上がる。

「まず一つ目は、あの兄妹が犯人説や」


ハナがすぐに目を丸くする。

「えっ」


「可能性としてはある」


「タイミングよく現れたし、あの場所にも慣れとった」

少しだけ間を置く。


「けど、たぶん違う」


「なんで?」


「傷口や」

短く答える。


「あの二人が持っとったんは槍やろ」


「でも、あの傷は槍でやった感じちゃう」


「少なくとも、あの場で見えた武器とは合わん」


ハナが小さく頷く。

「じゃあ、それは違うんだ」


「今んとこはな」


「次に考えられるんは、姿を消せるモンスターが、男を見つけて襲った」


ハナが少しだけ身を固くする。

「うわ……それは嫌」


「嫌やけど、否定はしきれん」


視線を前に向ける。

「気づかれずに近づける理由にはなるし、物音が少ない理由にもなる」


「でも、微妙や」


「なんで?」


「俺らが戦っとる時に襲ってきてへんからや」


「もし単純に見つけた相手を襲うタイプなら、もっと早く来てもおかしくない」


少しだけ眉を寄せる。

「せやから、この線はまだ保留やな」


ハナが小さく息を吐く。

「じゃあ、三つ目?」


「せや。最後に、一番ありそうなんが」


少しだけ声が落ちる。

「物陰に隠れて待ち伏せするタイプ」


崩れた柱。

瓦礫の山。

裂けた壁の影。


あの場所を思い返すだけで、死角はいくらでも浮かぶ。


「これが一番有力や」


「男が気づかんかった理由も、物音なく去ったように見えた理由も説明がつく」


「戦ってる音で来たんやなくて、最初からあの辺に潜んどったなら、全部つながる」


少しだけ息を吐く。


「しかも、食べてへん理由も説明できる」


「俺らが来たからや」


「食う前に隠れた、あるいは様子を見た」


一拍。


そこで、ふと背筋に冷たいものが走る。

「……待てよ」


足が少し止まる。

「立ち去る音も聞こえへんかった」


視線が自然と前を向いたまま固まる。


「つまり」

少しだけ間を置く。


「俺らが死体を見とる間も、あいつはまだあの場所のどこかにいて、物陰からこっちを見てた可能性がある」


ハナの足が止まる。

「……え」


空気が一気に冷える。

「……やば」

小さく漏れる。


「せやろ」

前を見る。


街の灯りはもう近い。

それでも、背中のどこかがまだ冷たい。


「少なくとも、次に行くなら死角は全部潰して見なあかん」


少しだけ口元が上がる。

「……おもろい相手や」



考えているうちに、街の喧騒が少しずつ近づいてくる。

石畳を行き交う人の声。

店先から流れてくる焼けた匂い。

さっきまでの冷たい空気が、少しだけ遠のいた。


ギルドの扉を押し開ける。


昼より人は減っている。

それでも、依頼帰りの冒険者たちで中はまだ賑やかや。


受付へ向かい、採取した青く光る花をそっとカウンターに置く。

淡い青い光が、受付台の木目に揺れる。


受付嬢の手が、ほんの一瞬だけ止まる。

顔が上がる。


目が、こっちを見る。


昨日と同じ相手や。


少しだけ間。

「依頼品、確認しました」



「……運が良かったようですね」


笑顔は崩れない。


ハナが少し得意げに胸を張る。

「だから言ったでしょ」

少しだけ胸を張っている。


思わず口元が緩む。


受付嬢が続ける。

「ちなみに」

「どちらで採取されましたか?」


ハナが小さくこっちを見る。


少しだけ眉を上げる。

「場所も報告必要なんか?」


受付嬢は笑顔を崩さない。

「いえ、必須ではありません」


一拍。

「参考までに」


少しだけ息を吐く。


(……探りやな)


口元に薄く笑みを乗せる。

「森の外れの方や」


それ以上は言わない。


受付嬢も深くは追ってこない。

「承知しました」


そう言って花を受け取る。


けれど。


視線だけが、一瞬こちらに残った気がした。




受付嬢が青い花を受け取り、ギルドカードを手に取る。

淡い光が、カードの表面をすっと走る。

「報酬はギルドカードへ入れておきますね」


軽く頷く。


「それと」

受付嬢が素材袋へ目を向ける。


「こちらのモンスター素材も買い取り可能ですが、いかがされますか?」

少し笑う。


「買い取ってくれるん?」

「はい」


袋をカウンターに置く。

蛇の皮や牙。

魔石片。


受付嬢が確認する。


「青光花の報酬が3,000,000 Jenny」

「素材買い取りが84,000 Jenny」


カードがもう一度淡く光る。


【入金:3,084,000 Jenny】


一拍遅れて、残高表示が更新される。


【残高:3,126,500 Jenny】


一瞬、言葉が止まる。


「……ほんまに入ったな」


数字の並びを見て、思わず口元が上がる。


ハナが横から覗き込む。

「すご……」

「一気にお金持ちだね」


目がきらっと光る。

「今日は景気よくいこか!」



ギルドを出る。


外の空気が、さっきより少しだけ軽い。

さっきまでの張りつめた空気が、少しずつほどけていく。


ハナがギルドカードを覗き込みながら歩く。

「……無事、終わったね」


少しだけ笑う。

「せやな」


「花を採るだけのクエストやと思っとったんやけどな」


ハナがふっと息を吐く。

「ほんとに」



思わず笑う。

「途中から完全に別ゲーやったな」


ハナも少し笑う。

「うん」


「男の人に襲われるし、死体は見つかるし」

少しだけ間。


「ほんと、いろいろありすぎ」


口元が少し上がる。

「おもろかったやろ?」


ハナがすぐに睨む。

「よくない」


でも、そのあと少しだけ表情が曇る。

「……あの時」


視線が少し落ちる。

「ナイフで切られてた時、すごく怖かった」


足が少しだけ緩む。

「ダイキが傷だらけになっていくの、見てるの怖かった」


思い出す。


刃が服を裂く感触。

浅くても、何度も入れば十分痛い。


少しだけ肩をすくめる。

「まあ、あれはちょっと痛かったな」


ハナが一瞬、何かを思い出したように顔を上げる。

「あ」


少しだけ足が止まる。


「……ごめん」


首を傾げる。

「なんや?」


ハナがこっちを見る。

「プロテクション」


一拍。


「魔法屋で買ったでしょ」


「防御力上がるやつ」


言葉が止まる。


少しだけ空を見る。


「……あ」


言葉が止まる。

少しだけ空を見る。


「……完全に忘れとったな」


ハナが思わず吹き出す。

「もう!」


「せっかく買ったのに!」


思わず笑う。


「せやな」


「完全に頭から抜けとった」


少しだけ口元が上がる。

「次からはちゃんと使おう」


ハナがすぐ頷く。

「うん」


目がきらっと光る。

「せっかくだし、他の魔法も見に行こうよ」


少しだけ眉を上げる。

「他の?」


ハナがすぐに頷く。

「攻撃の魔法とか、防御の魔法とか」


「使えるもの、もっとあるかもしれないし」


思わず笑う。

「ええやん」


ギルドカードを軽く指で弾く。

「金あるしな」


少しだけ口元が上がる。

「ほな、明日は、魔法屋いこか」



___


その夜。


街の一角にある小さな部屋で、

ひとりの男が報告書を受け取っていた。


上質なローブ。

細身の体。

やわらかい笑み。


けれど、

その目だけは冷たい。


机の前には、

ギルドの制服を着た女性が立っている。


昼間、ダイキたちに報酬を支払った受付嬢だった。


「青光花の持ち込みがありました」

女性は静かに頭を下げる。


男は報告書へ視線を落とした。

「場所は?」


「森の外れ、とだけ」


「そうですか」

男は、責めなかった。


指先で報告書の文字をなぞる。


青光花。


その名前を見つめる目が、

ほんの少しだけ細くなる。


「十分です」

男は穏やかに言った。

「情報提供、ありがとうございます」


受付嬢は一瞬だけ顔を上げる。

「……私は、この先どうすれば」


「何も」

男は笑みを崩さない。


「あなたが知る必要はありません」

その声は柔らかい。


けれど、

それ以上踏み込ませない冷たさがあった。


受付嬢は小さく頭を下げる。

「……承知しました」


やがて、

部屋の扉が静かに閉まる。


男だけが残った。


彼はもう一度、

報告書へ視線を落とす。


「青光花、ですか」

小さく呟く。


「さて」


口元に、

薄い笑みが浮かんだ。

「奴は、この花で何をしようとしているのか」


指先が、

報告書の端を軽く叩く。

「いずれにせよ」


男は静かに目を細めた。

「この花は、手に入れる必要がありますね」



___

ダイキ

職業 なし

レベル 15

スキル

打撃 Lv18、打ち下ろしLv5

ダッシュLv10、ステップLv10、跳躍Lv5

回避Lv7、姿勢制御Lv2、予測Lv6

毒耐性Lv3、覚悟Lv2、水耐性Lv1


ハナ

職業 なし

レベル 6

スキル

ウォーターボールLv7、ヒールLv3、プロテクションLv1

ダッシュLv1

第2章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


三百万ジェニーという派手な報酬の裏で、受付嬢たちが青い花をどう見ているのか。

喜ぶハナと、違和感を捨てきれないダイキの温度差も楽しんでいただけたら嬉しいです。


小さな設定補足です。

青い光はダイキにも見えています。一方で、あの声に気づいているのは、今のところハナだけです。


第3章では、二人の知らないところで、青い花をめぐる思惑が動き始めます。

この先も追いたいと思ってもらえたら、ブックマークしてもらえるとうれしいです。

ここまでの物語を「面白かった」と感じてもらえたら、下の☆☆☆☆☆から評価で教えてください。反応をもらえると、めちゃくちゃうれしいです!

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