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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第2章. 廃墟都市に灯る青い謎

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9.廃墟都市の襲撃者

ナイフは止まらない。



受ける。

弾く。


間に合わない。


「あなた、この場所の情報を独占したいんでしょ?」

ハナの声。


受ける。

弾く。


「でも、私達はプレイヤーだから、殺してもすぐ生き返る!」


一瞬の間。

だが動きは止まらない。


「こんな……意味のない戦い、やめようよ!」


振り下ろしを受ける。

弾く。


「生き返る?」

低い声。


「お前らが帰還魂だといいたいのか?」


「あり得ねえ」


距離を詰めてくる。


「帰還魂……?」

ハナが戸惑う。


(ああ、そうか……)

「NPCは、プレイヤーのことをそう呼ぶんや」

息を吐きながら言う。



男の目が細くなる。

「ギルドの登録手続き、見てたぜ」


「この男、属性なしだろ?」

ナイフが閃く。


「魔法も使えねえ」

さらに詰めてくる。


「そんなやつが、帰還魂なわけねえ」


距離が消える。

「無駄な話は終わりだ」




「水の力よ、ウォーターボール!」

男の詠唱と同時に空気が冷え、水がまとまってこちらへ撃ち出される。

さっきより大きい。

棍棒を構え、正面から受ける。


――重い。


押し込まれる。

足が滑る。

体勢が崩れる。

弾くが、戻りが遅れる。


(まずい……!)


続けてもう一発、同じ軌道で来る。

体勢が間に合わない。

受けきれへん。


その瞬間、背後で水が集まる気配が走る。

振り返る余裕はない。

だが、視界の端で青が膨らむ。


ぶつかる。

弾ける。

正面で止まる。


「……え?」

思わず声が漏れる。


振り返る。

ハナが手を出したまま固まっている。

「出た……!」


「今の……完全無詠唱!?ハナすごっ!」

言葉が先に出る。

(無詠唱でも発動ワードだけは言うのが普通やねんけど……ありえへん!)


もう一発、飛んでくる。

「水の力よ、ウォーターボール!」

ハナが手を動かす。


水が集まる。

ぶつかる。

相殺。


完全に止めている。

「いける……!」


男の動きが一瞬だけ鈍る。

「……は?」

眉が歪む。

「詠唱が……全くない?」


(通る……!)


間合いが開く。

ここや。

踏み込みにダッシュを乗せ、一気に距離を詰めてそのまま振り下ろすが、刃の届く直前で空を切る。


半歩、遠い。


でも、止まらない。

ダッシュの勢いがまだ残っている。


(距離が足りん……でも、ダッシュのあと、そのまま次のスキルが出た……!いけるで!)




すぐに男が踏み返してくる。

ナイフが走る。


「……今の動き、なんだ?」

目が細まる。


だが次の瞬間、口元が歪む。

「――当たってねえなら意味ねえだろ」


体をずらして受け流し、間合いを取り直す。


次の瞬間、また背後で水が集まる。

言葉はない。

視界の端で魔法が立ち上がる。


その隙に踏み込む。

ダッシュを乗せる。

そのまま振り下ろす。


今度は当たる距離。

だが、懐に入りすぎる。

振りきれない。


(ちょっと近すぎたか……でも、もうあと少しや!次はいける!)




「しぶとい奴らめ……これで終わりにしてやる」


男の声が低く落ちる。

空気が張り詰める。

「流れ集まれ、水の力――ウォーターボール!!」


詠唱が、長い。

その分、密度が違う。


水が、異様な量で集まる。

さっきまでとは比べものにならない。

圧が違う。


塊というより、壁や。


(でかすぎるやろ……!)

真正面から、逃げ場を潰す軌道。


まともに受けたら終わりや。


「――任せて!」

ハナの声。

短い。

迷いがない。


――それで十分や。


踏み込む。

躊躇はない。

(ハナがきっと止める)

ダッシュを乗せ、一直線に突っ込む。

視界を埋める水の壁が目前まで迫る。


ぶつかる――その直前。


横から、水が走る。


音もなく。


ぶつかる。


弾ける。


巨大な水同士が、真正面で噛み合う。


押し合い、削り合い、霧のように崩れていく。


「なっ――!?」


男の声が裂ける。


「そんな……馬鹿な……!」


水が弾け飛ぶ。


視界が白く染まる。


その中を――抜ける。


ダッシュ。


減速しない。


水の抵抗を突っ切る。


体が前に滑る。


(ここや)


距離、完璧。


踏み込む。


ダッシュの勢い、そのまま乗せる。


振り下ろす。


逃げ場はない。


間に合わない。


棍棒が、肩口から叩き込まれる。


骨に響く衝撃とともに、そのまま押し潰すように力を乗せる。

男の体が崩れ、膝から落ちて、遅れて全身が地面に叩きつけられる。


水音だけが残る。


静かになる。




「……う、ぐ……」

低く、かすれた声。

男がゆっくりと体を起こし、血を吐きながらこちらを睨む。

足元はふらついているが、まだ立てる。


「……まだ動けるんか。タフやなー」

棍棒を肩に担ぎながら言う。

勝負はついているが、完全には終わっていない。


男の口元が歪む。

「……調子に、乗るなよ」

息が荒い。

それでも、笑う。


「覚えてろ……次は殺す」


その直前、一瞬だけ。

男の視線が、奥に逸れる。


足元の瓦礫を蹴り上げる。

砂が舞い上がり、視界が白く濁る。


「ちっ――」

目を細めて一歩踏み出す。

だが、すでに気配は消えている。


「……逃げたか」

軽く息を吐く。

(まあ、ええか)

棍棒を下ろす。


静かになる。

風だけが抜ける。


――数秒。


突然、遠くで、叫び声が響く。

「やめろ……っ、来るな――!」

引き裂かれる音と、崩れる音が重なり、すぐに途切れる。


静寂。


ハナが息を呑む。

「……今の、なに?」


「……さあな」

短く返す。


視線を向ける。

崩れた建物の奥、暗がりの中は何も見えない。


何かが擦れるような音が、奥で一度だけ鳴る。

それも、すぐに消える。


棍棒を握り直す。


風が止まる。


――何にやられたんや?


___

ダイキ

職業 なし

レベル 15

スキル

打撃 Lv17→18、打ち下ろしLv4→5

ダッシュLv10、ステップLv10、跳躍Lv5

回避Lv6→7、姿勢制御Lv1→2、予測Lv5→6

毒耐性Lv3、覚悟Lv2、水耐性Lv1


ハナ

職業 なし

レベル 6

スキル

ウォーターボールLv6→7、ヒールLv2→3、プロテクションLv1

ダッシュLv1

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