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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第2章. 廃墟都市に灯る青い謎

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6.静けさの先(ハナ視点)

森の中を歩く。

この前と同じ道を戻ってるはずだけど、ところどころ見覚えがあるような、ないような景色が続く。

(……こんな感じだったっけ)


足元の土は少し湿っていて、踏むたびにやわらかく沈むし、枝が服に触れてかすかな音が鳴る。


「このまま真っ直ぐだったよね」

少し不安になって聞くと、ダイキは前を見たままうなずいた。

「そうやな」


ほんとに合ってるのか分からないけど、迷いがないのは少し安心する。


その直後、「ちょっと走るで」と言ったかと思えば、なぜか全力で走りだした。


「え?」

思わず声が漏れる。


速い。普通に速い。一歩で、ぐっと前に出る。

足場が悪いのに、全然ブレてない。


「ちょ、待って!」

慌てて追いかけるけど、うまく踏み込めなくて距離が縮まらない。

それどころか、少しずつ離されていく。


「急に走らないでよ!」

息を切らしながら、なんとか追いついて言う。

「意味分かんないから!」


ダイキは少しだけ振り返って、「今のな」と軽く言う。

「一歩目を強く踏んで、そのまま続けて踏み込むと前に伸びる感じになる」


「……なにそれ」

よく分からない。


でも、さっきより速かったのははっきりしてる。


「速くなってるってこと?」

首をかしげて聞くと、「そんな感じやな」とあっさり返ってくる。


なんか納得はしてない。

けど、もう一回やったらどうなるのかはちょっと気になる。




そのまま歩く。

と思ったら、今度は変なことをし始める。


根っこに足を乗せて、わざと体を崩す。

ぐらっと傾いて、転ぶ――と思ったら、踏ん張って戻る。


「え?」

思わず声が出る。


またやる。

崩れる。

戻る。


何回も。


(……なにこれ)


見てて、ちょっとだけ怖い。

普通に危ない人に見える。


「さっきから何してるの?」

思わず聞くと、ダイキは軽く言う。

「崩して、戻してるだけや」


「それ意味あるの?」

「たぶんな」


軽い。

いつも通り。


でも、ふと気づく。


「あれ……」

さっきより、戻るのが早い気がする。


もう一回。

崩れる。

戻る。


今度はほとんどよろけない。


「ちょっと待って」

思わず声が強くなる。

「さっきよりうまくなってない?」


「まあな」

やっぱり軽い返事。


(……ほんとに意味あるんだ)


さっきまで“変な人”だったのに、少しだけ見え方が変わる。




そのまま進む。

さっきまでより落ち着いた歩き方で、もう変なことはしないのかと思った――次の瞬間。

「ハナ、ちょっとええ?」


「なに?」

「ウォーターボール、撃ってみて」


「……は?」

意味が分からない。


「いや、当ててええから」


「いやいやいや、なんで!?」

思わず足が止まる。


「ちょっと確認したいだけや」

軽い声で言う。


いつも通りの調子。

それが逆に怖い。

「普通に嫌なんだけど……」


「大丈夫やって」

あっさり返される。


止めてもやりそうな顔をしている。


(……もう)

一度ため息をつく。


「ほんとに危なかったらやめるからね」


「ええで」

軽い返事。


「……いくよ」

手を前に出す。


「ウォーターボール!」

水の塊が飛ぶ。


――え、ちょっと待って。


避けない。


そのまま、正面からぶつかる。


「なんで避けないの!?」

水が弾ける。


次の瞬間、ダイキの体が大きく後ろに吹き飛ぶ。


「えっ!?」


地面に叩きつけられて、そのまま動かない。


「ちょっと、うそ!?ダイキ!?」

慌てて駆け寄る。


顔色が悪い。

息も浅い。


(まずい……これ)


「聞こえてる!?大丈夫!?」

近づいた瞬間、かすかに声が漏れる。


「……うう……」


ほとんど動けてない。


それでも、口だけが動く。

「……やった……」


「は!?」

思わず声が裏返る。


「水属性耐性……ゲット……」


「なに言ってんの!?」


理解が追いつかない。

「それ今言うことじゃないでしょ!?」


すぐに手をかざす。

「ヒール!」


光が包む。

少しずつ呼吸が戻る。


それでも、怒りが一気に込み上げる。

「ちょっと待ってよ!」


声が強くなる。

「昨日、死なないって約束したよね!?」


ダイキが少しだけ目を開ける。

「……したな」


「その直後に、よりによって私の魔法で死にかけるって何!?」


止まらない。


「意味分かんないんだけど!」


ダイキはまだ横になったまま、小さく息を吐く。


それから、少しだけ笑う。

「……いや、ちゃんと意味あったやろ」


軽い。

全然反省してない。

(この人ほんとに……!)


「もう絶対やらないからね!?」

きっぱり言う。


「私もう撃たないから!」


「えー」

不満そうな声。


それも腹立つ。


ヒールの光が消えて、ダイキがゆっくり起き上がる。


「……大丈夫?」

つい聞いてしまう。


「まあ、なんとか」

軽く返す。

そのまま立ち上がる。


(ほんとに、何してるんだろ)


さっきの動きも。

今のも。


意味なんて、正直よく分からない。


(やっぱり無茶してるだけじゃないの……?)


そう思う。


思うけど。



ふと、思い出す。


現実の体。


ベッドの上で、ほとんど動かないままの自分。


起き上がることもできない。


手も、足も、思うように動かせない。



それが、この世界では。


走って。

踏み込んで。

ちゃんと動いてる。



(……これが)


ここでの動きが。


現実のリハビリに繋がるって、言ってた。



だったら。


さっきの無茶も。


意味があるのかもしれない



まだ分からない。


全然分からない。



でも。



ほんの少しだけ。



そうだったらいい、って思ってしまう。



森の中を進む。

ダイキは相変わらず、時々走ったり、段差を軽く飛び越えたりしながら進んでいる。

無茶はしてないけど、落ち着いているとも言えない。


少し距離を取って、その背中を追う。


しばらく進む。

ふと、違和感が引っかかる。

(……あれ)

何かが、足りない。


もう一歩進む。

足音はある。

自分が踏んでいる感触も、ちゃんとある。


でも、それ以外の音が少ない。

葉が擦れる音。

枝が揺れる音。

どこかで鳴いていた、小さな生き物の気配。

それが、ない。


(……こんなだったっけ)


立ち止まって、耳を澄ます。

後ろからは、かすかに森の音がする。

でも、前は静かすぎる。


「ねえ」

声をかける。

「なんか、静かじゃない?」


ダイキが足を止める。

そのまま前を見る。

一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、表情が変わる。

さっきまでの軽さが消えて、少しだけ集中する。

「……ああ」


短い返事。

それだけで分かる。

気づいてる。


そのまま、また歩き出す。

今度は少しだけゆっくり。

さらに進むと、後ろの音が遠くなる。

前は、ほとんど何もない。

境界みたいに、はっきり分かれる。


(……やだ)


森が途切れる。

視界が開ける。

崩れた建物、折れた塔。


廃墟都市。


風が、ほとんどない。

動くものもない。

だから、音がない。


完全に近い静けさ。


耳の奥が、きんと鳴る。


(……なにこれ)


静か、じゃない。

何もない。

自分の呼吸だけが、やけに大きい。


少し遅れて、思い出す。

(前、来たとき……)

こんなふうには感じなかった。

話してたから?

それとも、気づいてなかっただけ?


分からない。

でも、今ははっきり分かる。


「……なに、あれ」


声が自然と小さくなる。

ダイキは止まらない。

そのまま、廃墟都市の方へ進んでいく。


でも、さっきとは違う。

動きが少しだけ抑えられている。

無駄に走らない。

周りを見ている。


(……様子見てる?)


完全に無警戒じゃない。

でも、止まらない。


「危なそうやったら戻るで」


前を見たまま、ぽつりと言う。

それだけ。

安心させるつもりなのか、分からない。

でも、少しだけ力が抜ける。


それでも、怖い。

そのまま、後を追う。


廃墟都市の手前。


空気が、少し重い。

頭が、じんとする。


(……気持ち悪い)


それでも、足が止まらない。


ダイキが、ぽつりと呟く。

「……ここ、やばいな」


少しだけ。

楽しそうに。



___

ダイキ

職業 なし

レベル 14→15

スキル

打撃 Lv16→17、打ち下ろしLv4

ダッシュLv1→10、ステップLv1→10、跳躍Lv1→5

回避Lv4→6、姿勢制御Lv1、予測Lv3→5

毒耐性Lv2→3、覚悟Lv1→2、水耐性Lv1


ハナ

職業 なし

レベル 5→6

スキル

ウォーターボールLv5→6、ヒールLv2、プロテクションLv1

ダッシュLv1


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