3.その子の名は 3 ルーちゃん
誕生後になります
そして、名前がやっと決まりました。
暗闇から明るい世界に弾き出された瞬間、私を襲ったのは、あまりにも理不尽な感覚だった。
重い……! なんだ、この体は……!?
四肢の見た目はまるで練りたてのパン生地のようで、身体中がふやけている。それに加え、首が動かせないせいのか、上手く自分の体を見ることもできなかった。
(な、なんだ……!? 首の骨でも折れているのか……!?)
かつて世界の頂点に轟いたはずの肉体が、これほどまでに脆く頼りないものに成り下がっているとは。……先程、気を練りすぎた影響なのだろうか。
魔術回路を繋ぎ直せば確かめれるかと、必死に息を吸い込み、口から漏れ出たのは威厳に満ちた詠唱ではなく――。
「ブー……ブババッ!」
という、情けない泡混じりの音だった。
「あらあら〜ルーちゃん、お口をブーブーしてかわいいわねぇ〜」
ぼやけてよく見えない視界の先、二つの大きな山の谷間から、さらに巨大な山かと思ったら多分デレデレ顔をした母親だった。ニマニマ表情で迫り、こちらの口元を布で拭いてくる。
(ちょっと、力が入りすぎてませんか?お母様!?)
それにかわいいだと……!? この私に向かってなんという屈辱! それに【ルーちゃん】とは何だ! 食材か? それとも新しい名前か!?
「おいおい、いきなりルーちゃん呼びだとルシファルって男の子らしさがなくなるだろ〜」
少し離れた場所から声をかけてきたのは、母親より頭ひとつ分背の高いのは父親らしい。 ほう……あの父親の意見には同意せざるを得ないな。【ルシファル】悪くはない、実に重厚で威厳に満ちた響きではないか
「別にいいじゃない、可愛いんだから。ねー、ルーちゃん?」
どうやらそれが、この軟弱な肉体に与えられた新たな名のようだ。
ある程度予想はされている結果と思います。
予想の斜め上を狙えるよう、精進いたします。




