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5.次なるおっさん

ふくみのあるおっさんとは何か、、、考えた 結果

5歳を迎えたある日。私はアデーラ(母上)から【初めてのお使い】という重大任務を命じられ、ライトニー(父上)と共に、村から少し離れた賑やかな街へと足を運んでいた。


普段の貧しい村とは異なり、石畳の道路に多くの人々や露店が行き交う活気あふれる街並み。私にとっては、魂の奥底にある【かつて栄えた王都】をどこか思い起こさせる風景であった。


無事に目的の買い物を終えた私達は帰路につこうとしたのだが、ここで父上のポンコツ癖が炸裂する。


『あわわ……! ご、ごめんルシファル! お店にお釣りと大事な買い出し確認メモを忘れてきちゃった! ここで動かずに待っていてくれ!』


情けない声を上げながら、父上は【脱兎之勢】で人混みの奥へとダッシュで姿を消していった。


(……やれやれ、父上ながら相変わらず詰めが甘い。まあ良い、少しこの周辺の建物や地形でも観察してイメージトレーニングでもしよう)


一人残された私が街並みを眺めていると、人混みの隙間から見覚えのある気配が近づいてきた。

一つ上の少女、ミックスだ。彼女も家族の用事でこの街に来ていたらしい。


『あ、ルーシー……』


『ミックス、奇遇だね。……父上が失態を犯して、ここで待機中なんだ』


ミックスは静かにコクリと頷くと、少し離れた路地の方を指差した。どうやらこの先にある市場の通りに用事があるらしい。だが、彼女が向かっている道中は、日差しも届かぬ薄暗い路地裏であった。


『……その道を通るの? 待って、嫌な予感がsu――』


私の制止が間に合うより早く、路地の陰から【不埒千万】な気配が湧き出した。


『ヘヘヘ……可愛いお嬢ちゃんと、そこのボクちゃんはお友達かな? ちょっとオジサンたちとイイコトししちゃう……?』


現れたのは、目をギラつかせ下衆な笑みを浮かべる変態な男たち。

関わるとロクなことにならないと察した私は、すささっとミックスの手を引き、何事もなかったかのように無視して横を通り過ぎようと足を早めた。


――が、甘かった。


いつの間にか奥の曲がり角からも一人の男がヌッと現れ、挟み撃ちの形を作られたのだ。これで変態は三人。


『チッ……!』


私はミックスの手を握りしめたまま、パルクールで鍛えた脚力を活かして路地の隙間へ逃げ込んだ。しかし、見知らぬ街の暗がり――やがて突き当たったのは、高くそびえる古いレンガの壁。背後は完全に【袋小路】となってしまったのだ。


(っぬ……! 二人ともパルクールを鍛えたとはいえ、この未熟な5歳の身体では物理的なフィジカル差がありすぎる……!)


多勢に無勢。こちらが二人の子供である以上、片方が逃げ出しても、もう片方が捕まる可能性が極めて高い。

ふとミックスを見ると、彼女はいつも通り一切の感情を読ませない無表情のまま、男たちを静かに見つめ、すっと小さな拳を握りしめて構えていた。……たくましい姿に惚れちゃうわぁ~!


(……っとそれよりも【絶体絶命】だな。だけど、私たちがここで時間を稼ぎさえすれば、お釣りと買い出しメモを回収した父上が戻ってくるはずだけど……!)


私は背中に忍ばせていた改良型三節棍へ手を伸ばし、攻撃を直前ガード(ジャストガード)して隙を狙う構えをとった。


――その時であった。


ズシン、ズシン、ズシン……!


重厚で重々しい金属音が、路地裏の湿った空気を振動させた。


『ひっ……!? な、なんだ!?』


男たちが怯えて振り返った先。路地の入口に立ちはだかったのは、光を鈍く反射するフルプレートの漆黒の鎧に身を包んだ【2m級の巨大な衛兵が3人】であった。

その圧迫感と異質な存在感に恐怖した変態男達は、蜘蛛の子を散らすような悲鳴を上げて逃げ去っていった。


『ふぅ~……よかった~』


ほっと胸を撫で下ろした私は、助けてくれた目の前の衛兵たちに礼を伝えようとした瞬間、全身の毛穴が立ち上がるほどの戦慄を覚えた。


(……違う! これは生身の人間じゃない……ッ!)


甲冑の隙間から漏れ出る、微細な空間の歪みと密度の高い魔力粒子。

これは単なる鎧を着た人間でも、実体を持たないただの幻影でもない。立体的な魔力構成によって質量と存在を現実へと構築された――【3次元魔法のゴーレム】が3体!


(っえ……ただの幻覚で見せかけるのではなく、質量と圧力を完璧に物理世界へ干渉させているのかな。なんという奇抜で洗練された術式……!)


驚愕する私が路地の出口へ目をやると、ボロ布のような羽織を纏った一人の男が、退屈そうに大きなあくびをしながら歩き去っていくのが見えた。

男が街の人混みへと足を踏み出そうとしたその瞬間――カツン、と足音が途絶えると同時に、目の前にいた3体のゴーレムが、まるで最初から存在しなかったかのように音もなく綺麗に消えてしまったのだ。


(またしても次なるおっさんか……! それにしてもあの凄まじい高位魔法を、あんな適当に遠隔操作し、一瞬で霧散させた……!?)


去りゆく男の雑な背中に、私の本能が激しく反応した。

あの男こそが、次に必要な者――この世界における本物の【師】となる存在だと直感した。私とミックスは、人混みの中へ消えていく男の背中を、示し合わせたかのようにじっと睨みつけていたのだった。


そこへ――


『ルシファル! 待たせてごめん――って、あれ? ミックスちゃんも一緒? なんで二人ともそんな険しい顔で路地裏を睨んでるの……?』


お釣りとメモを握りしめた父上が、息を切らしながら戻ってきた。


『……何でもないよ父上。少々、世の深淵を二人で覗いていたところだよ』


『えっ……? し、深淵……? よくわからないけど、ルシファル、移動したらダメじゃないか。ミックスちゃんはどこ行くの? 大丈夫?』


いつも通りコクリとうなずき、用事のために歩き出すミックス。

その姿を能天気に見送る父上。


『よし、さあアデーラが待ってる村へ帰ろう! 帰路でさっき何があったか聞かせてね』


荷物を両手にぶら下げた父上の大きな背中に続きながら、私は密かに口元をニヤリと歪めた。


パルクールによる立体機動、三節棍による間合いの操作、そして今日目撃した次元を超える魔法の存在――。


小さな魂を覚醒させるためのピースが、着々と揃いつつあった。


(……待っていろよ、おっさん。弟子入りという名のもとにその技術、全て喰らい尽くしてやる……!)


夕闇が迫る帰り道、私はまだ見ぬ修行の日々に想いを馳せるのだった。

無口なおっさんになってしまいました。

後にこれが大変なことになるかも??

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