3.その子の名は 8 赤い果実の再来
いちご狩りのイベントでございます。皆さんは過去に行かれたことがありますか?
私はもちろんあります。
そして、生まれ落ちてから540日(1歳半)が経過した、ある晴れた日のこと。
空前絶後の——いや、最大の奇跡とも呼ぶべき大イベントが提示された。
母親に連れられてやってきたのは、見渡す限り緑の葉が茂り、ほんのりと甘い香りを漂わせた赤い果実――。
そう、私の宿敵であり、今や最愛の糧となったあの赤い……【いちご】である!
(な……なんだこの楽園は……!? どこを見渡してもあの甘酸っぱい果実……っ!!)
目の前に広がるいちごの群生に、私の第六感が大歓喜の悲鳴を上げた。
かつては【食人植物の胃袋】などと警戒し、ドッキリを疑っていた愚かな自分を殴り倒したい。
『はい、どうぞ。自分でちぎって食べてごらん?』
母親から促されるや否や、二足歩行でトコトコと目の前のいちごへ突撃。何とかとらえたいちごを手で茎からもぎ取ると、そのまま豪快に口の中へ放り込んだ。
ジュワリと溢れ出す、新鮮な甘みと甘酸っぱい果汁。
(……ンンンんん~っ!! 摘みたては格別! 頬が……頬が溶けて無くなってしまう~♪)
プライドなどはとうに捨ててある。私はまさに羊の皮を被った狼と化し、無我夢中でいちごをもぎ取っては口へと運び続けた結果、顔の前面と服を真っ赤に染め上げていた。
『本当にいちごが大好きなのねぇ』
母親はと笑いながら朗らかにこちらを見ていた。
このいちご狩りで莫大な至高の幸福感を補給し、帰宅後にさらなる進化を遂げることとなる。
それは【扉を開閉する術】の体得である。
今まで私を阻んできた部屋の扉。手を伸ばし、体重をかけて押した。
ッビタン!
手が滑り、建付けの悪い引き戸は動くことなく、私の身体だけが横に倒れた。
だが、エネルギッシュな身体はまだまだやる気に満ち溢れている。もう一度足元を確かめるように位置を整え、両手に力を込める。
ガラッ!
(動いた……! 自力で部屋という名の監獄の領域を突破する力を得たのだ!)
調子に乗った私は、扉を【開けては閉め、閉めては開ける】という開城の儀式を繰り返した。
ガラ! ガラ! ガッ!
『ちょっと! 扉で遊んじゃダメでしょ、ルーちゃーん! 危ないでしょ~!』
母親に叱られ、そっと扉から手を離した。
だが、ムフッと満足げな笑みを浮かべる。
(……叱られようと関係ない。歩き、登り、声を出し、食べ、扉を開ける……。確実に、この世界を掌握しつつあるのだからな)
1歳半を迎え着々と、我が手中へと収まりつつあったのだ——。
いかがでしたか。いちご狩り
ほんと無我夢中で食べてくれる姿はめちゃくちゃ微笑ましいんですよ。
来た甲斐があったな、ってなりました。
ってそもそも、前書きと後書 何に触れて書けばいいねん・・・




