3.その子の名は 7 新たな壁
煮詰まってきてます 来てますよ~
こういうエピソード書かないと固まらないw
360日目が経過した、それはおよそ一年という月日だ。
この軟弱な肉体にとっては果てしない試練の日々だった。
私の【肉体鍛錬法】はついに決定的な局面を迎え、一刻も早くこの練りたてのパン生地のような肉体を鍛え上げねばならない。
手すりや壁に頼る生ぬるい横移動を卒業し、挑むのは独立した二足歩行——すなわち【二足直立歩行】である。
全身の均衡を整え、両手を壁からそっと引きはがそうと試みる。
……が、磁石のように離れてはくっつき、また離れてはガシッと壁にしがみついてしまう。
(っぬ……! まさかこの壁のひんやりとしたぬくもりに【ビビッている】とでもいうのか……っ!? 違う、私の魂が慎重なだけだ!)
己の葛藤を跳ね除け、意を決しついに壁から両手が離れた!
(おお……立てた! ついに我が両足が、重力という名の呪縛を撥ね退け、まずは、二足直立の保持……ッ!)
プルプルと震える短い脚に全神経を集中させる。
生まれたての小鹿のような無様な様だ、これでも少しまともになったら身体強化でさらに早く動けるだろう。
それにまだ立てもしないのに自ら強化を行い動こうものなら筋を痛めたり、効果が切れた時筋肉痛で身動き取れなくなるからな。
これで壁の支えなく数歩は歩けるようものなら御の字だ。
テンションが最高潮に達し、そのまま前進を試みた。
ペタッ、ペタッ、ペタッ。
不覚にも赤子特有の鳥類めいた愛らしい足音になってしまったが、確かに歩いている! 勢いに乗って、視界の隅に映ったさらなる高み——未踏の巨大建造物【階段】へとターゲットを変更した。
1段の山には足が上がりきらないので致し方なく、壁に両手を当て上手く支えに使い、小さな手足を交互に伸ばして一段、また一段と壁伝いに登頂していく。
一段登るごとに高まる達成感と絶景。
反面、はたから見れば蜘蛛のようにへばりついた動きだろうが。
(段差を克服した我が機動力をみよ! このまま世界の頂まで登り詰めてくれる——くっ、なんと凄まじい重力魔法の負荷だ。今世の人間は、通常より3倍は重いのではないか!?ッ!)
額からは大粒の汗が流れる。
その時、【ドタドタドタ!】と激しい地響きが聞こえた。
『きゃーーっ!? ちょっと待って、いつの間にルーちゃん階段登ってるのー!?』
背後から母親の悲鳴が轟き、頂上を目前にしてあっけなく回収された。
降りる術を考えていなかったため、正直助かったのは秘密だ。
ついでにこの時期には、声帯の制御にも成功しつつあった。
言葉とは即ち、伝達でもあり魔法【意思表示の魔導】だ。
しかし、まだ未熟な舌では複雑な呪文の発唱は叶わない。
『あー……あーうっ!』
意気揚々と挨拶のつもりで声を張り上げた。
『あら?あーってご挨拶できたの? えらいねぇ~!』
母親は目を輝かせて頭を撫でてくる。
(違う!! なぜ伝わらない……ッ!)
歯がゆい思いを抱えつつも、言葉の壁という新たな課題に直面した。
本人の気持ちを考えるとあの時の行動はそういうことだったのかな~っと
理解のきっかけにつながりますね~




