クズな奴ら
三人目は担任教師だ。
別に僕に対するいじめを黙認していたからではない。 指導方法が平面的な、マニュアルに沿ったやり方だからでもない。 新任の経験不足のせいでもない。
僕の母親を誘惑したからだ。 自分の女にしようとしたからだ。
こいつだけは絶対に許せない。
どんな方法で叩きのめしてやろうかと、考えに考えた二年生当時。
だが、あの教師はあっさり学校を去って行った。
僕の復讐相手である、二人目のあの女とホテルに行った張本人だったのだから。
そもそも僕が復讐する必要もないくらいのクズ野郎だったのだ。
僕の両親はもうずっと別居中だ。
正確に言えば、父親が単身赴任なのだが。
息子の自分が言うのも可笑しいが、母親はわりと美人だ。 おそらく若い頃はモテただろう。
本人曰く、父親に懇願されて結婚したらしい。 だが、そんな父親もモテるタイプ。
結婚して僕が産まれてからというもの、浮気が途絶える事なく、何度も離婚の危機があった。
そして父親が単身赴任で家を不在にするようになってからは適度な距離を置いていられるようだ。
まぁ、子供への建前なのはわかっているが。
そんな美人な母親を持つ僕の担任教師。
クズ野郎が放っておくはずがない。
三者面談での値踏みするような視線は、強烈に記憶に残っている。
何度も母親を呼び出して僕の進路についての話をしたのも知っている。 教室でのその際に、そこに誰も居ないのをいい事に肩に手を回して反応を試したりしていたのも知っている。
こっそり飲みに誘ってホテルに連れ込もうとした事も。
だが、僕の母親はそいつに簡単に誘われるような女ではない。
僕に言ったのだ。
『貴方の担任教師、母親の私を脅したわよ。 飲みに誘われてついて来た事が息子や夫に知られていいのか、尻軽な女だと学校に知られたら息子の進路にも影響するぞ、そう言ったのよ』
繰り返すが、僕の母親は簡単に弱味を握られるような女ではない。
本当にクズ野郎だ。
だから僕が直接、復讐したかった。
まぁ、今後あの教師がどこかで教壇に立つ事はないだろうが。
こうして三人目の復讐はあっさり終了した。
つまらない。
もっと徹底的に地獄に落としたかったのに。
☆ ☆ ☆
四人目は僕の父親。
担任教師同様にあいつも許せない。
あんな父親、僕はいらない。
何故なら単身赴任に気を良くして、その赴任先で女を作っているからだ。 一人だけでなく、他にも。
母親は何も知らなかった、というより知る気もなかったらしい。
どうでもいい、と言うのだから愛想も尽きているのだろう。
だが、僕は気に食わない。
長く単身赴任を続ける父親は、そこで女と暮らしているのだから。
どうやら父親は独身と偽って同棲しているらしい。 しかも女が留守の時には別の女を連れ込むのだから、やはりクズだ。
だから僕は卒業までの二年間、徹底的に復讐するつもりで網を張った。
僕と母親を騙し続けて来た事、僕という子供が存在しないかのように扱った事。 決して許しはしない。
まず、父親の単身赴任のアパート回りを調べた。
近所では仲良し夫婦と思われているらしく、よく揃って出掛ける事もあるようだ。
子供のいない夫婦ならありがちな、近所のおばさん連中によるお節介も父親はスルーしている。
それはそうだろう。
夫婦ではないし、夫婦にもなれない奴らには無責任な話だから。
そこはさすがに父親も気をつけているようだ。
僕はある日、こっそり父親の部屋に忍び込んだ。
本当なら僕のこれはかなり問題行動だが、そんな温い事は言っていられない。
部屋の鍵は管理人に借りた。
父親にサプライズをしたいからこっそり入って準備したい、と言うだけで貸してくれる管理の甘いアパートだ。
そして僕が来た事もサプライズについても一切口にしないでくれ、と伝えて。
僕の事は父親思いの優しい息子だと思っただろう。
部屋の中に入り、やるべき準備を済ませた僕は鍵のスペアを作り、痕跡を消して帰った。
これだけでいい。
後は時々、留守の間に様子を見に来るだけだ。
そして高校を卒業前の年の暮れ、ついに僕は行動に移す事にした。
クリスマスイルミネーションが光り輝いて、多くの恋人達がロマンチックな夜を過ごす、まさにムード満点な日だ。
父親がアパートで過ごすのは知っていた。
男と女には楽しい最高なひとときだっただろう。
これから地獄が待ち受けているとも知らずに。
評価等、お待ちしています。
あと残り一話で完結です。
よろしくお願いします。




