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これから

 僕が勝手に決めた事だ。

 彼女が望んだわけでも、僕が直接何かされたわけでもない。

 だからわざわざ僕が復讐する必要はないのだ。


 それでも許せない、どうしても。


 あの女が彼女をいじめるようになったのは恋愛絡みだった。


 彼女には以前、つき合っていた男がいる。

 それは誰もが憧れの対象にするような、例えるなら天が二物を与えたような、そんな理想的な男。

 その男は彼女に恋をし、告白してつき合い出したという。


 美女と野獣の逆パターンではないが、格好良い男には時としてそうでない女が並ぶ事がある。


 女達は羨んだ。

 その感情が嫉妬に変わり、冷淡ないじめと変化していった。


 男が同じ高校なら、そのいじめにも気づいたかもしれない。

 だが、他校だ。 何も知らされなければ気づかない。


 あの女は彼女に言った。

 彼とつき合い始めた。 もう連絡を寄越さないでくれ、と言っている、と。


 あの女は男に言った。

 彼女は他の男とつき合い始めた。 もう連絡を寄越さないでくれ、と。


 とても可愛らしく、男なら誰もが虜になるような振る舞いを心掛けて。


 男と彼女はあの女に騙されているなんて全く知らなかった。 あまりにも他人の言葉を鵜呑みにしすぎた結果なのだ。


 愚かだと思った。


 そして決定的なのが、彼女への金銭要求だ。

 あの女は彼と僕への二股を知られたくなければ金を寄越せと言ったという。 彼は二股するような女は嫌いだから、別れた後も知られたくないだろう、と。


 彼女は疑ったり、攻撃したり、そういう強さがない。 だからあの女の要求も従う以外に選択肢を持たなかった。


 あの女への復讐に向けて僕はまず、男に会いに行った。


 すると、事情を聞いた男は僕にスマホのある画面を見せた。

 それはあの女が別の男と腕を組んで歩いている姿。

 どうやら買い物デートのようで、あの女の持つバッグも財布もブランド物。 もしかしたら彼女から巻き上げた金で買った物かもしれない。


 ところが、そうではないらしい。

 あの女はまた別の男にプレゼントを要求し、そのプレゼントのバッグを金に替えて中古のバッグを買ったのだという。


 僕は男に聞いた。 どうしてそんな事を知っているのか、と。

 すると、男は答えた。

 彼女との件をわざわざ伝えに来た時、疑問を感じた。 典型的な女の行動だから嘘かもしれない、と。


 ならばどうして、あの女の言いなりになったのかを聞いた。


 すると、男は答えた。

 あの女の弱点を探る為だ。 彼女にはもっと強くなってもらわなければいけない、と。


 そこで、僕はこの件は男に任せる事にした。

 この男なら大丈夫だろうと思ったからだ。


 ある日、数枚の画像がスマホに届いた。

 それは誰もが騒然となるもので、教師を巻き込む事態となった。


 なんと、あの女が教師とホテルに入る姿をキャッチされていたのだ。

 その光景を誰が撮ったか、詮索する必要はないだろう。


 僕はその画像を他の生徒一人に転送した。

 ただ、それだけだ。僕のした事は。

 それだけで効果は抜群だと知っていたから。


 数日も経過しない内にそれは教師側の知るところとなり、大問題へと発展した。

 それだけではない。 それまでのあの女の素行も、彼女に行ったいじめさえも発覚し、停学処分となった。


 だから彼女に感謝される理由にはならない。 あの男が彼女の為にしたのだから。

 そして彼女自身のいじめについても証言する勇気が持てたのはあの男のおかげだろう。


 僕は何もしていないのだから。


 そしてその後。

 卒業時、あの女は一人孤独にひっそりと正門を出て行く事になった。

 周囲の白い目を背中に受けて俯きながら。


 こうして知らず知らずの内に僕の二人目の復讐は、あの男の彼女への想いによって終了した。



 ☆ ☆ ☆



 一人目の復讐相手が卒業式後、猛然と赤鬼のような顔つきでやって来た。


 どういう事だ!……そう言いながら。


 そう、僕は知り合いに頼んでおいた。

 これまでに貸した全額内容をまとめた物を見せて、返すように取り立ててくれ、と。


 何故なら僕に貸せ、と言ったのだから。 貸せ、と。

 貸したのならば、返してもらう必要がある。


 だが、あいつには苦労して働く事はできない。

 完全に楽を覚えた、僕が覚えさせたのだから。

 働くのが嫌になるほどに。


 これからあいつがどうやって金を稼ぐのか、楽しみだ。

 もちろん、知り合いにはあいつの監視を今後も頼まなければならない。

 犯罪しない程度に苦労してもらわなければならないからだ。


 まぁ、最終的には地獄を見る事になるのだろうが、それは僕の知るところではない。


 こうして一人目の復讐は、おそらく数年後には完結する事になるだろう。

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