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29 終戦

 北西高校の校庭には、嵐の中、旧校舎を呆然と見上げる四人がいた。

「すごくキモいね……」

 晴人を担いで現れた天乃雀は、創汰と陽奈の姿に驚いた後、校舎についての率直な感想を口にした。なぜスズメを助けに行った晴人が気絶していて、逆にスズメに救助されるような形になって現れたのか、創汰にはわからない。そしてスズメが悠然と歩いてきた方向の、どこに脱出口があったのかもわからない。


 でももうどうでもいい、と創汰は思う。

 全ては終わったんだ。

 スズメが無事だったならそれでいい。


 北西学園の周辺には、消防、警察、報道、そして野次馬といった面々が集まり始め、旧校舎の惨状に手をこまねいたり、目を背けたりしていた。創汰たちもしれっと野次馬に混じって顛末を眺める。するとテレビレポーターの声が聞こえてきた。

「現在、北西高校を中心とした半径一キロ内に原因不明の暴雨風が発生しています。その影響で停電や断水が発生しており、半径一キロ内にお住まいの方について、一キロ圏外に避難するように市と消防が呼びかけています。一キロ圏外は快晴ですので安心して避難してください」

 腹の底から湧き出る疑問を、創汰は抑えられない。


「いったいどうしてこんなことに……」


     ○


 旧校舎から溢れ出た大量の闇たちは、電線をがしがし食い破り、水道管にむちむち詰まり、北西高校を中心とした一帯のライフラインを混乱に陥れていた。

 停電は南西学園にも及び、北棟四階で膝を折るファルリンの祈りを止めた。

 コーポ川沿も全部屋例外なく停電に陥った。管理人室には夕方の再放送ドラマが中断されて激怒する川沿明日子がおり、七号室には全てを忘れて同人誌作成に没頭するあまり、データの保存を一回もしていなかったことを停電の瞬間に気がついた七福あんこが、デスクトップパソコンの前に突っ伏して口から魂を吹き出したりしていた。

 泣きっ面に蜂というか、七福あんこはこの後二か月ほど謎の失踪を遂げるのだけれど、その理由を知るのは川沿明日子だけだったという。


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