49.
現時刻は1700、丁度七発目の水爆が投下された頃。
「…慣れたねぇ。」
「ああ、慣れたな。」
佐都と雨眠を含む全ての人員が『慣れ』を実感していた。
起爆しては覆い、岩石を防ぎ。
起爆しては防ぎ、覆い。
起爆しては…
「…新科学部ー、了。」
「掘削部、了。」
「佐都…ふあ…ぁ犬丸、了。」
欠伸すら漏れる起爆、投下準備の確認。
"投下準備了解、ロック解除。"
されども、旧科学部部長は真剣に起爆を執り行っていた。
「ん、やっと最後か…クルミちゃんもう退屈だわん。」
「hm、but…これで Radarにも映らない第八層が、明かされる。」
「こっちでは空き空間が映ってる、故障か分からん。」
エネアド生徒会の空気は緩く、柊人のみがレーダー機器と緊張状態を保っていた。
「…さて、鬼が出るか蛇が出るかだな、役目を終えよ余が財物。」
収束剣に、空力剣。
二つの剣が光に消える。
「…便利だね、その…なに、神秘?」
「む、添えば貴様は神秘を有していないと聞くな。」
高所の王を見上げる雪代、その声は常に囁きで、落ち着くもの。
「あ、うん…そうだけど。」
声帯外転位、それは先天性声帯形成異常の一種。
発生頻度は極めて低く、声門閉鎖が不完全であり、発声時にも声帯が十分に接近しない為に恒常的な気息性嗄声を呈するもの。
重症例では発声困難を伴うとされるが…
「良い事だ、自己に沿った役職に就いたな。」
「…ど、どういうこと?」
雪代の場合、極めて健康体かつ偵察兵という、その声色に合った役職を得ている。
「…っおい!貫通したぞ!」
身の上話もそこそこに、吉報を柊人が知らせる。
「わお、何がある?やっぱまた洞穴?」
「クルミ、それが今回は…海だ、数千m³の空間がある。」
「え゛!!!海?!?!?!」
レーダーに映るその空間はドーム状、光源は存在しないが海面は照らされている。
これまでとは異なる第八層、そして…水という存在。
「…そこにおるんやな、スズちゃ―――」
「海だぁーっ!!!みずぎ!みずぎ!みーずぎっ!」
狂喜乱舞のクルミ、一体海の何が彼女を興奮させたというのか。
「ちょ、もうヤバいわ、スク水もってくる…!」
「…クルミ。」
「はぁい雪代ちゃんっ!もしかしてあの水着着てくれるの?ほら去年のさぁっ!」
「クルミ。」
内陸に生まれ、砂漠で育ち。
アカデミー生徒の殆どは大海を知らない。
第八層の海は本当に海なのか。
「一旦落ち着いて、柊人くんが詳細を確認してるから。」
「……あ、はい。」
「…水着は、後で着てあげるから。」
「やった…ッ!」
誰も確証を持てないまま、レーダー反応のノイズだけが響いていた。




