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思い付き  作者: Blue_lobster
二章
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90/100

44.

「俺が実際に使える神秘は六つ、そのうち一つが元々持ってたもんや。」


「複数持ちは珍しいなんて騒ぎじゃないねぇ、いつか君の体を解剖したいものだよ。」


「外部嘱託式の神秘、それも死人からの預かりものとはな。」


神秘について知見のある者の会話は全て小難しい、もっと噛み砕く事は出来ないのか。


「元々のは…これや。」


エレベーターが降下する、その浮遊感と共に、ミチルは消えた。


「何でこんなんが出来るかは知らん、生まれつきやし。」


消えた、というよりは、その姿が空間に溶けた。


「透明化…えーそれあたしが欲しいんだけど。」


「ま、狙撃にはうってつけやな。」


「おお、じゃ俺の読みは当たってた訳だ。」


「ぁー…ちょいちゃうな、正体はこれや。」


三田の読み、それは瞬間移動ではなく透明化と判断した事だが、その真相はミチルの持つプレーヤーにある。


「これ、元はアキちゃんのやつなんやけど…ḫmnw(オグドアド)。」


曲を選び、掛ける。

イヤホンを着け、また消える。


しかし今度は、存在感、気配、実在そのものが消えていた。


「…非実在と実在を切り替える…量子力学が絡んどるからよう知らん。」


一行の死角に居たミチル、移動したのではなく、元から居たように見える。


「ふぅン…解説が必要かな?」


「やめておけ雨眠、お前が話すとややこしくなる…」


「んまぁ、要はこのプレーヤー使うと瞬間移動と無敵になるってことや。」


「は?!チーターじゃん!」


ひなとのゲーム三昧で培ったクルミの知識が重大性を指摘する。


「いいやちゃう、ずっと無敵な訳あるか。」


プレーヤーに登録されているプレイリスト、その第一曲目である『INVISIBLE』総再生時間3分と11秒。


それが、量子的透明化の持続時間。


「で、次は…着いたみたいやな。」


数刻続く減速、巡航速度を2000〜3000km/hとしている当磁気エレベーターにおいて、加速と減速は命。


「ん?何か一層に用あんのミチル先輩。」


「ちょいな、気になっとんねんどうなっとるか。」


扉が開く、飛び込む光景は広大な、鬱蒼(うっそう)とするほどツタの生い茂る洞窟。


「確か…なんやっけ、ここで何採れるんやっけ?」


「レアメタルだ、タングステンとモリブデン…掘削部はこれでウハウハっていう訳だわな。」


呟く佐都の視線、その先には召集が掛けられても尚掘削を続ける生徒が居た。


「おーい!お前ら早めに来いよ!」


「あい!」


「んぁい!」


「…どうだ、ミチル。」


間の抜けた返事、タオルを首に巻きドリルを手にする彼女らは齢16にも満たないはずなのに、歴戦の風格を漂わせていた。


「……まぁ、ええんちゃう。」

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