43.
時計の針が正午を刺した頃、それは起こった。
「ファイア!」
「やっやめて怪物さ―――!」
テットからの提供で得た対戦車ロケット、FGM-148ジャベリン。
そのバックブラストが廊下を燃やす。
弾着は一瞬、爆炎が旧生徒会室を包む。
「げほっ…ねー先生、これ渡してよかったの?」
「良いんじゃないか?だってアレ壊れねぇじゃん。」
腕を組む生徒と教師、煙の晴れた先には無傷の鉄塊が。
「な、なんやて…!」
「ひうぅ…も、もうやだ…!」
「…不可壊の用具入れ、興味深いな、試してみるか。」
踏み出すは王、強大な神秘現象を前に自制は無意味となる。
「荒い手段でゆくぞ、耐えろよ小娘。」
「次はなに…?!」
ロッカーへ刻む"Imamia"の焼印。
王の財物はこの世の全て、しかし今現在所持するのは数個程度。
収束剣、空力剣、正負剣、これらを取り出し、収納するカヴの光、操るレシモの閃光。
そして、72つある天使名、その焼印。
「なっなになになに…?!もうやめて怪物さん!!」
名に意味が、意味に名があるように。
王の押した焼印には神秘が宿り、効果を発揮する。
「ハ!面白い、何の効果も現れんとはな。」
が、あくまでそれは神秘現象。
「…ちびっ子、そこらへんにしとき。」
強大な神秘はより強大な神秘に負けるのだ。
事実何も起きていない。
「…おい、気が変わった、協力したる。」
「え゛」
「マジか?!」
目を丸くする二人、一方で沈黙を貫いていた三田は…
「…なんでだ?」
ただ、状況を理解していなかった。
「理由は…降りながら話そか。」
現在地は地表から127kmの地点、キノヤクアカデミー副副校舎。
人工昼夜サイクルによりエネアド生徒会の副拠点となっており、常駐生徒は少ない。
そして、大小八つあるうち最も巨大な昇降磁気エレベーターが存在する。
「おお、変わっとらんな。」
鋼鉄の壁に囲まれたそれは、あまりにも校舎の雰囲気と乖離していた。
「知っとったか?2000kmまでは自由落下してたんやで。」
設備はあの頃と同じ、何も変わっちゃいない。
エレベーター内はもっと無機質で、ミチルは手慣れた様子で第一層行きのボタンを押す。
「…まず、俺の持つ…ぁー…お前らの言う『神秘』について話したる。」




