41.
「おぉ!先生の神秘!」
目を輝かせるクルミ、それもそのはずリスクヘッジを常とする佐都にとって、自身の持つ神秘は正に運ゲー。
「100面ダイスのうち、60以下が成功、61以上が失敗…俺は『説得』を…」
「やぁやぁ佐都くぅぅん!おはよう!推測して寝起きから4分と22秒程度かな?寝癖が大小含め6つあるねえ寝心地が良かったんだねぇそれはそれとして今のサイコロは君の神秘だろう?うんうんうん唆るねぇ!詳細を聞きたいなぁ!詳細を聞きたいなぁ!いいだろうだって20年の付き合いじゃないかそのうち神秘を使ってくれたのは数回!悲しいねぇ悲しいねぇ…」
「………」
暴れる白衣、他者の影に隠れ息を潜めていたあの雨眠はどこへやら。
「…み、ミチル、俺はお前を説得…」
「いや、いやいやいや…お前その状態で続けるんか。」
佐都へ抱き着き、頬擦り、押しのけられても興奮気味に袖をぱたぱた靡かせる。
豹変の二文字がここまで似合う女は存在しないだろう。
「まぁ…いつもこんなんだし…」
「あーもう空気ぶち壊しや、何やねんマジで…」
「ふーっ…あぁ落ち着いた、で何の話だったかな?」
床に転がる面が百個あるダイス、指し示すは23。
「なるほど、因果律の拒絶からなる動作の確定成功を引き出す神秘か。」
「は?なんて?何いってんのこれ。」
「…クルミ、お前の方がもっと難解な神秘だと思うぞ。」
佐都の神秘はTRPGの具現化、要するにあらゆる動作に対しダイスを振る事で成功、失敗を分けるというもの。
この時60以下の面が出れば成功、61以上で失敗となる。
「まぁとにかく、ミチル…先生の話を聞いてくれるか?」
出た面は23成功であるが…
「…何や、今更先生気取りかカス。」
必ず成功する訳ではない。
「ふっ…まず言葉遣いから教育する必要がありそうだな?」
神秘はあくまで限りなく成功率を上げるのみ、しかし失敗の場合、確定で致命的な結果を呼ぶ。
「なんか…テンションおかしくねぇか、皆。」
徹夜による睡眠不足は確実に三田を除く一行の脳を疲れさせていた。
問題は、いかんせん素面でもおかしいのがぽつぽつと居る事。
「俺も掘削抗の件、情報を聞いた、こっちとしてはお前に協力してほしいんだが…」
「よう言うわ、数年で0.9kmしか掘れへんかったくせに。」
「論点がズレてるな、そもそもお前はなんで協力してくれないんだ。」
「…また昔話せなあかんのかい。」
エネアド生徒会の親、U.T.E.Aの人員が過去にミチルと締結したはずの契約。
「奴ら、掘削抗には関わんな言うたのに掘りおった…しまいにゃ生徒会まで作っとる。」
疲れ果てたミチルが報復を止めた頃、それは一方的に破棄された。
秘密裏に隠れ蓑であるキノヤクアカデミーをテットの助けを借り設立、資本に取り憑かれた大人達は、易々と子供を食い物にする。
「石油、鉱石、温泉、ぜーんぶ掘削抗から出たもんや。」
U.T.E.Aは飛躍的に成長した、しかし人間の持つ強欲は凄まじく大人達は掘削抗にあるものを求めた。
「原初の水…ヌンって知っとるか?」




