39.
「昔話は良いだろもう、で次だミチル。」
「…ぁー、まだやるんかこれ。」
ミチルの項垂れ虚しく、聞く耳を立てる赤髪はどっしりと腰を構える。
「ちょい柄やないけど、楽しかったで、お前との喧嘩。」
「はっ、あれを喧嘩って言えるかよ。」
「ただ、俺は本気出しとらんからな!次やり合う時はお前も本気やで!」
置き捨てる言葉は好敵手の為、向けるその背には、何かが宿っていた。
____________________
「ぐおぉうお!まずいっす!首都に核が!」
アカデミー敷地内、当直室で真の夜間歩哨の任を受けていたひなは…
「んぎゃっ!ま、負けた…」
やはりと言うべきか、ゲームに没頭していた。
「やっぱストラテジーゲームは難しいっす!そうですよね雪代さん!!!」
「………」
隣で微睡むは目元にクマを残す雪代、約四時間程ひなの熱狂を聞かされ続け疲労困憊の果てに到達していた。
「くるみ…たすけて…」
「すいません!!自分トイレ行ってきます!!あ、花摘みに行ってきます!!」
…静寂は一体何時間ぶりだろうか、残された雪代の耳にはまだゲーム機から聞こえる銃撃戦の音が響いている。
「寝たい…」
愚痴を溢したその時、当直室のモニターが通知を映す。
「ん…?もう、今度は何…!」
見る所によるとU.T.E.Aからの一斉送信メール、件名は『掘削抗について』。
「…っ!」
雪代は必死に目で追い、内容を読み続ける。
______________________
高取姉弟のPMC、小森柊人のバイオ企業、乙倉ひなの航空会社。
依田ふゆの金融投資グループ述べ三つ、白井クルミの通信及び衛星会社、そして最後に…
自己の親が経営するエネルギー会社
述べ8つのU.T.E.Aを構成する企業が、掘削抗現深度7999.9kmへの全面支援を決定。
当日の午後1500を持ち、キノヤクアカデミー生徒非戦闘員を含む552名は超深度掘削抗チェックポイント78に集結せよ。
この通達を持って、深度7908km地点に存在するチェックポイント77にエネアド生徒会の作戦総本部を設立する。
______________________
濁流のように流れ込む情報へ呆気に取られる雪代の元へ、一つの電報が鳴る。
『はーい雪代ちゃん、今のメール届いた?』
「っクルミ…うん、届いたよ、これは…まずいね。」
文面は支援、しかしそれは掘削部の部長、藤次雪代にとって厄災でしかなかった。
掘削担当のシフト調整、掘削器具の入れ替えによる混乱、全生徒集結による統制…
そして何より、責任。
「まだチェックポイント79の施工すら完了してないのに…どうして今なの…!」
『まぁまぁ落ち着けって、取り敢えずパパに電話一本ぶち込んどくわ。』
「あぁうん…ありがと、取り敢えず皆連れて先にエレベーターのとこ行くよ。」
『あいあいさー。』
キノヤク岩盤超深度掘削抗、そこが如何に危険で怪異渦巻く万魔殿であるか。
総深度7999.9km、蛇が出るか鬼が出るかの洞穴に総員552名が、流れ込む。




