35.
「…そこからはあんまり覚えてないや、ただ、言えることがあるなら。」
「ミチルは頑張った、道中片足と片腕をもがれて痛かっただろうに…みんなの、皆の遺品を…」
「ごめん、もう話したくないかも。」
時刻は0644、人工の陽光が三人を照らしている。
「なら俺が続き話したる。」
約一時間程前、そもそもミチルは屋上で仮眠を取っていた。
「っミチル…」
「あれは肉列車、ウィンタージャーニー言うカスの現象や。」
事は百年も前、世界を巻き込んだ大戦の最中にそれは発生した。
「ほう?その名には似つかわしくない酸鼻を極めた話だったがな。」
血と泥の渦中、塹壕に立ち込める霧は、とある列車を呼び寄せた。
「時速600kmで突っ込んでくる殺意の神秘現象、それがウィンタージャーニーや。」
事は八十年も前、世界を巻き込んだ二回目の大戦で再発した。
「皆が皆そいつに殺されたかは分からん、でもアキちゃんは餌食になった、これは確実。」
食料は尽き、気温は氷点下三十度、地獄の市街地戦で霧が立ち込め、列車を呼び寄せた。
そして今世において、殺意の列車が一人の女子を轢き殺した。
「あの後俺は色んな事やった、皆の回収と、真相の調査…」
生存者が選んだ道、それは復讐か絶望の二つに分けられる。
ミチルは、どちらも選択した。
「アメン、アマウネト。」
「クク、カウケト。」
「ヘフ、ハウヘト。」
「ヌン、ナウネト。」
「…スズちゃんとライちゃんを除いて、オグドアドの皆の遺体と遺品は全員確認しとる。」
しかしそれは、人体と呼ぶにはあまりにも欠損している肉塊だった。
ある者は上半身を泣き別れに、ある者は腕を遺し他が圧縮。
拳銃、弾倉
チョーカー、イヌの首輪。
そして、アキ。
惨禍の全てを、ミチルは回収した。
「詳しくは知らんけど、何でか皆の…皆を使えるようになったんや。」
「それで俺が何した思う?」
「復讐や。」
オグドアドの面々を坑道に向かわせ、アキのオーディオプレーヤーを盗み、世代交代をしたその者達は。
「今のエネアド、その親達に対してのな。」
「殺したい程憎かった、でもあいつら…ガキこさえとった。」
「高取は畜生腹、小森も乙倉も依田も白井も、U.T.E.Aの全員が子持ちやった。」
ヒトとしての尊厳か、ミチルには子を有す親を殺すことは叶わなかった。
「にしても…ウナ、お前話し過ぎや。」
「ご、ごめん…年寄りだからついおしゃべにり…」
「ちっ…何歳やねんカス。」
「えっと…よ、4000ぐらい…?」




