36.
「うむ、良い語りであったぞウナとやら。」
「え?あ、あぁ…ありがとう?」
早朝、神秘をその身に宿す者達の会話を盗み聞きしている多くの影があった。
「無論、吹聴者が増えるのも頷けるな?」
「やべっ」
背後より聞こえる漏れ出た声、次に聞こえてきたのは…
「ちょっ…椿芽!あれやってあれ!」
「hm…ok,み、MEOW…」
随分とも、ネイティブな猫の鳴き声だった。
「早起きは三文の徳と言うが…早朝覚醒は睡眠障害とも言う。」
「…何やってるの、クルミちゃん。」
「のわっ」
頭を隠し、屋上の鉄格子奥で聞き耳を立てていたのはクルミに、椿芽。
「う、ウナさぁ〜ん、ちょっ許してくだせぇよ…へへ…」
「機密情報の漏洩、及び盗聴の容疑で軍法会議もんやでお前。」
「ひえぇ…!お、お許しをミチル様…」
へりくだる、その表現が最も似合う女は今世にクルミただ一人だろう。
「冗談や、何で盗み聞きしとったん?」
「よ、夜型で…」
「………」
「嘘です!夜間歩哨してたら何か聞こえてきて取り敢えず身代わりに椿芽連れてきただけです!」
「What?!」
そして、卑怯という表現も。
「でも何か思ったより話が重くて出るに出られず…えと、とにかく…!ごめんなさい!」
「…だってさ、ミチル。」
「素直なやつは好きやで、今回だけは許したる。」
最後に、実直という表現も。
真っ直ぐな謝意は時にきちんと伝わる事がある、クルミにおいてそれは大の得意。
「ぁ、そうだ…あの、盗み聞きのは気になってたっていう理由もあるんですけど…」
「um…help me…手伝ってほしい案件が、一つ…」
明け方、二人の幼童が一行を浴場に案内する。
照明の消えたそこは少しノスタルジー、浴槽に包帯で巻かれた何かが居なければ、だが。
「…あれ、三田さんなんですよ…」
「入浴…置いてきてしまった、I'm scared because it's still.」
蠢く事もなく、かといって完全に静止している訳でもなく。
「あのぉ…み、ミチルさん…かウナさん、見に行ってきてくれませんかね…」
「なんやて?!」
「ちょっ声デカいですって!」
「お前もや!」
「あんたもだよ!」
「………」
「………」
それはただ、呼吸に伴い体が動いていたように見える。
「全く小心者の多い事よ、ここは一つ余が征こう。」
時に王は民を先導する為玉座から立ち上がる、もしくは扇動の為。
「頼り…にしている、 little one.」




