34.
「いや暗いな…ミチル、フラッシュライト。」
「………」
その坑道は、とにかく暗くて、埃被っていて。
怖かった。
「…200m以内にレーダー反応は無い、一体どこに…」
「も〜…!スミちゃん達どこいったの〜…!」
唯一頼りになった、というより心の添え木になったのはアキちゃんだった。
いつしか僕も、ミチルと同じ様に…いや、何でもない。
「一寸先は闇だよ〜…!」
「…暗いの怖くないの?」
「………」
300m進んだぐらいかな、坑道の二酸化炭素濃度が上がってきて、僕達は呼吸器を付け始めた。
「…あっ!プレーヤー忘れてきちゃった!」
「えぇ…今要らないでしょ…」
「やーだー!要るの!一旦帰ろ?ね?」
アキちゃんが肌見離さず持っていた、ポータブルオーディオプレーヤー。
どうしてだろうって思った、お風呂でも付けてたのに。
「………」
「…ミチル?」
「来る。」
坑道の奥をミチルは見つめていた。
生存本能ってやつかな、それが僕の中で久方ぶりに起動した。
「…ッ!!」
「あいたっ!」
アキちゃんを蹴り飛ばして、後ろに下がろうと
遅かった。
「ウナ―――!」
前を何かが、赤い何かが過ぎ去った。
痛みは無い、でも…目を開けたら、ミチルの腕が…どう表現したらいいかな。
半分だけ繋がってて、半分だけ切れてる?
分からないけど、ぼたぼたって血が垂れてた。
「っぐ…伏せろ、叫ぶな。」
その時、ノイズ混じりで…何だろう、肉を叩いてるような、混ぜてるような音がした。
「ぃ、今のは?」
「新種のセトアニマル、それか別のだ。」
トマトを潰す時の音を、信じられないぐらい早くした感じの音。
「はぁっ…はあっ…!息出来な…っ…」
「…アキちゃん?」
ミチルの腕が取れそうになって、パニックになったのかな。
アキちゃんは、息苦しさからこの坑道で呼吸器を外そうとしてた。
「だめっ!せめてフィルターを…!」
肉の音が近付いてた。
分からない、あれがなんだったのか。
立ち上がるアキちゃんを、あれは…
「―――っ!」
僕はその時ミチルに蹴られた、だから…腕の皮膚を削がれるだけで済んだ。
アキちゃんは…って?
下半身があったよ、人の。
正確には、人の下半身だけが。




