31.
日付変わって数時間、一つの小さい影がアカデミーの屋上にて、偽の夜空を見上げていた。
「………」
ウナ、その名は三年前に付けられた物で、ミチルの持つ遺品とは別のオグドアドメンバーが遺した情報。
「…僕は、どうしたら良かったのかな?そこの小さい子。」
思慮もそこそこに、背後に佇む気配に話し掛ける
「ふん、余の御前であるぞ、まずは真名を名乗ったらどうだ?」
「え?えっと…か、変わってるね、君って。」
「無論口調を貴様らに分かりやすくする事は容易い…この余が王である事を除けばだがな。」
刻は遡る、それはそれは昔の事で、記憶もあやふやな程。
「僕の本当の名前…ええと、凄く恥ずかしいから話したくないな、あはは…」
百年かも、千年やも知れぬ刻の果て。
ウナは、砂漠王と呼ばれていた。
「…どうしてかな、永く生きると…何を目標にしてたのかが分からなくなる。」
「くだらんな、同じ王の名を持つよしみとして買い被り過ぎたか。」
「砂漠王、ね…何で君が知っているのかは聞かないけど、本当の名前は違うよ。」
エジプトの地を放浪し、砂を被り、何を目指している訳でもなくただ旅を続けていた。
「ウトナピシュティム、それが僕の本名。」
永遠にも近い命に、無尽蔵に思える耐久。
どこで本名を知ったのか、もう忘れている。
「二人っきりだから教えた、長くて嫌になっちゃうんだ、これ。」
「…余は王、王は余、以上だ。」
「そ、そっかぁ…」
何百年と放浪していた頃、一人の少女と遭遇した。
愛らしく、強く、そんな者達が八人も居た。
後に、オグドアドと呼ばれる面々。
「では本題だ、回顧をしろ。」
「かいこ…?ああ、昔話してほしいの?」
「あやつがしないからな、貴様に聞くだけの事よ。」
少し陰気で、それでも可愛くて、いつも強かった子。
「いいよ、教えてあげる」
猫塚ミチル、その者が如何にして仲間に恵まれ、仲間を失い、生き延びたのか。
「…マルクト、もう良い、休め。」
「まる…何だって?」
「さっさと話せ、余は短気であるぞ。」
「じ、自分で言う?それ…まぁいいけど。」
今、ウトナピシュティムもといウナが語る。




