28.
「向こうが女湯で、こっちが男湯だ。」
バスタオルに、スキンケア用品。
入浴セットを持った佐都は背景もあり正に銭湯の一シーンのようであった。
「…くく、余は言うに『物』らしいが、何処へと指し示す?」
「男湯だ、さっさとしろ。」
そして王ら一行は着替え、アカデミーの温泉を目にする。
「…柊人?俺が来た時こんなんだったか?」
「違いますね。」
映る景色は正に荘厳かつ絢爛豪華な温泉施設。
白く濁る温水湧き出るその湯は温かく、浴に適していた。
「…聞かせてくださいよ、アトゥムを連れ出した話。」
「ん?いいぞ、裸の付き合いだしな、何でも言ってやるよ。」
「それは良いです、あとバスタオル巻いてますので。」
並ぶ言葉は湯の温度では中和出来ない程冷たかった。
「まず、ふゆと一緒にドライブした。」
「はい。」
「で、ウナを見つけて轢いて…終わりだな。」
五、僅か五つの語句で創造神の帰還を語った。
この男、確かにアトゥムも自らの生徒とは言え粗雑過ぎる。
「実にくだらん話だな、轢いてあやつは何故生きている?神秘も見えんが。」
「yo,それがわかんねんだよ、あのウナっつーgirlは超耐久特化って感じなんだぜ。」
ウナ、それは創造神アトゥムの名を担う少女の名であり、略称だった。
「GAMEで例えると…そうだな、HPもダメージカット率も高い、感じか?」
「回りくどいわたわけ、とどのつまり真偽不明ということであるな?」
「mmmm…まそうだ、というか…」
一の目線は横に移り、湯煙に隠れた白衣を指し示す。
「こいつは何で居るんだ?」
「やぁ。」
指し示す先に居るのはぱたぱたと袖を振る、浴場に来てまで白衣を着る雨眠だった。
「…まぁ、先生の立場から言えることは『気にするな』だけだ。」
謎の医者らしき女が付き従うべき教師にべったりくっついている状況は生徒にとってやや不可解だった。
「一、戦場で指揮官の命は絶対だ。」
「ここ…浴場だけどな。」
「ふぅン、ま佐都くんの言う通り気にしないでほしいねぇ…」
何の目的で、何を考えているのか、一にとって一度はHQを共に務めた仲だというのに一切が不明。
「んでだ、何でこのちっこいのは服を着たまま風呂に…」
「湯浴み着を知らん愚か者が、井戸から出て大海を知るといい。」
「…さっきから質問ばかりだけど、何で俺は罵倒されてるんだ…」
それを言うなら、一も同様。
浴槽に浸かってまで黒眼鏡を外さないその執念、恐ろしい域にまで到達している。




