25.
「まずっ…―――!」
最も強く叩き付けられるその瞬間。
回転が、停止する。
「う…ぐぁ…」
「なんやっ…?!」
浮かぶ困惑、横たわる赤髪。
状況から考察し、辿り着いた結論は…
「へっ…へへ…はははっ!お前ガス欠か!」
勝利、歓喜、好敵手の打倒に尽きていた。
「雑魚がッ!俺に手出すからこうなん…ねんっ!」
「がっ…!」
脇腹に一発、再生し終えた脚での蹴り。
「ははははっぁー…俺の!勝ちや!」
「お前の負け!お仲間もぶっ殺して…やる…」
興奮状態の脳が弾き出した結果は長く続かなかった、元々の冷静さか、或いは他の要因か。
ミチルの中に渦巻いていた情動は、霞のように消え失せた。
「…何が楽しいんやろ。」
「俺は…まだ…」
足首を掴むこの赤髪も、吹き荒れる砂埃も、全てがつまらない。
「お前、エネアドの情報吐けや。」
げし、げし。
綺麗で美麗で、夕焼けを閉じ込めたような髪を踏み締める。
「ことわ゛っ―――!」
「ええって、はよせぇや。」
何故先はこの者に本気を出していたのか、激昂していたのか、分からない。
心拍は収まった、ミチルは既に500m付近に居る狙撃手、隠れ家に居るであろう伏兵の存在を気にしていた。
「そないな顔すんなよ、ほら立てぇや。」
「ふーっ…ふーっ…!がうっ…!!」
あれほど恐れていた噛み付きも、今や取るに足らない子供のお遊び。
「いいよ、もう、殺さんからはよどっかいってくれ。」
「まだだ…まだ…俺はやれ…る…」
項垂れる三田は、誰がどう見ても重傷だった。
鼻血を垂れ流し、四肢はボロボロ。
「ッ三田さ―――!!」
飛び出た一人の女子は目撃する、虫の息の者へ肩を貸す、無傷のミチルを。
「…乙倉ひな、お前の事はようけ知っとるよ。」
「三田さんを離せ!早く!」
「スターライトエアラインCEO乙倉健二の一人娘、意固地で絶対にヘルメットを外さない、やろ?」
突かれる図星、というよりは並べられる事実。
親の名前、親の職業、自身の人格、何故眼前の男が知っているのか、それは些細な事。
「…っそ、そういうあなたは、猫塚…ミチル。」
「…家行こか、狙撃手の目ぎらぎらで話しづらいわ。」
互いの素性は割れている、実力差は決定的。
なれば、相手に従うのみ。




