24.
初手の火蓋を切ったのはミチルの方だった、素早く、確実に殺意を持って向けたケラチン質の刃。
完全な肉体変容によって得た利点は次のうち二つ、無限の回復、無限の変容。
欠点はATPを燃料とする三田より保たない、ということ。
「本物のロシアンルーレット、見たことあるか?」
迫る無数の刃を交わし、裂き、退けていた三田が口を開く。
「ypa!ほら集中途切れてんぞッ!!」
捉える、一本の太い刃。
拳で止め、飛び乗る。
「俺とやり合うにゃあと80年はБерёзовикаに居るべきだったなぁ!!」
背より大量の刃を手向けるミチルの元へ、踏み締める肉を切り裂きながら進む。
「…っここ!獲った!!」
血に塗れたマチェットの刃先が首元に届かんとした、その瞬間。
「―――退く事覚えろよ、赤いの。」
囁きが刹那に伝わり、全ての刃がごった返しに三田へ赴く。
称すならば津波、一度押し、引く際に全てを薙ぎ倒し殺し尽くす殺意の刃。
「退かねぇよ、ミチル―――!」
迫る殺意、無視。
浴びせられる罵倒、無視。
この場においてミチル以外の要素、無視。
手負いの獣は突き進む、己が命の為。
「ypaーーーっ!!!」
馬乗りになり、切り裂き…噛み付き…ちぎっては投げちぎっては投げ。
肉片の一片残さずなる気概で当たり合う二人。
「お前マジで…っ人間ちゃう!」
「どっちもだろぉ…っ?!」
総力戦の最中、血の温かみが少し冷たくなっていた。
どちらの物か、分からない。
何せ砂漠の砂が固形化するまで血飛沫が舞っているのだから。
「ここまでやって死なねぇのは初めてだよ、ミチル。」
「…俺もだよ、クソ赤髪。」
剥き出しになった野生、剥き出しになった怒気。
当たり合う本心は、何処か通ずる物を見い出していた。
「…マジで殺しに行くわ、死ぬなよ。」
止まった連撃、告げる殺害予告。
「矛盾しとんで、お前。」
「はぁ…ぐっ…!!」
首筋への咬合をした三田は脇腹を掴み。
力を込め。
回る、回る。
「なっ―――!?」
ワニの攻撃方法の一種として、デスロールがある。
噛み付いたまま身体をくねらせ、対象の肉を引きちぎるというワニの必殺技だ。
三田の呼ぶ『本物のロシアンルーレット』はこれの人間版である。
「くそ…っ…再生追いつかん…!」
肉も骨も、雑巾のように捩じ切れる。
三田と違いミチルの再生は肉体変容の効果、能動的なもの。
よって、彼の思考リソースが再生の要なのだ。
どこを、どうやって、何の素材で変容するか、総質量さえ増やせるというのに、間に合わない。
「ひなぁッ!!見てないで動け!」
「ぅえっ!は、はいです!!」
地に打ち付けられ、噛みちぎられ、もう一度打ち付けられては噛まれる。
「あれはエネアドのっ…」
横目に見てしまった、遠くで渦中に絶句するひなへ集中が割かれる。




