21.
展開は唐突に、そして早急に止まった。
「高速移動…ってー訳じゃねぇな?」
「誰が自分の能力教えるかボケ。」
時間にして僅か1秒にすら満たない消失と顕現を視覚で捉えた三田は男の拳に大振りのマチェットを捻り込んでていた。
「へっ、そうか…よっ゛…!」
空いた手で引き抜かれるもう一振りのマチェット、しかしそれは敵に向けたものではなく…
「は?何してんねん。」
「っはは…だーれが敵に自分の能力教えるかよ。」
自己の喉元へ向けた、自傷の一撃。
「ただもんやないな、お前。」
その言葉を皮切りに、男は懐から一つのネックレス、チョーカーを取り出す。
「…スミさん、悪いけど使うで。」
チョーカーを着ける男。
血飛沫を撒き散らす赤髪。
戦闘の合図は、済んでいた。
「سومي、ḫmnw」
怪物対怪物、化け物対化け物の闘争が幕を開ける。
「ypa…!!」
投擲される刃渡り60cm程の刃。
鈍い音を立て空が切られ、男の頭部に
「はぁっ…?!嘘だろ…?」
命中することはなく、頭蓋が裂け刃は壁へと突き立つ。
「あっぶな、お前イカれてんな、人に向けるもんちゃうで。」
異常に伸縮する四肢、どろどろに溶ける胴、吸収されていく表情筋。
異形、と称すにはあまりにも的確過ぎる肉塊が蠢き、静止する。
「ヤバ…っ…ひな―――!」
瞬きの一瞬、男の露出した筋肉が三田を包み。
静寂が訪れる。
___________________
「…出てこないな、中でバトってんのかなー…」
「それだったらひなちゃんが中入るでしょ、ほら単眼鏡…」
砂岩の影、Bチームはただ偵察を続けていた。
「いいや、起きている。」
「?どうしたちっちゃいの。」
「事は既に起きている、ウミに聞いてみろ。」
通信機の箱から受話器を取り、クルミが声を発す
「だ、そうですがヤブ医者さん?」
「…こっちでは数秒間だけ量子相揺動の値がズレただけだよピスタチオくん。」
「クルミです、りょーしそうゆどー…ってなんだよ…もういい切るわ。」
「ちょっ…クルミ…!」
雪代の制止虚しく、通話時間が10秒足らずで終わりを迎える。
「くく、まさかあの男、8人分の神秘を宿していたとはな…」
「こっちもこっちで何言ってるかわかんねー…厨二病か?」
他愛の無い会話、その時だった。
遠方に発生する爆煙、遅れて飛来する衝撃波。
家屋の方面だ。




