18.
痛みが人を強くする、それは半分合っていて、半分間違っている。
しかし三田の場合、100%正解である。
痛みは神経を通り、脳に苦痛を伝え、脳が闘争を準備する。
闘争、逃走、凍結、これらのうち、三田は闘争反応を示した際…
「what the f…!!!」
彼女の矮躯に宿る神秘が起動する。
椿芽の本能は知覚し、関わってはいけない獣に槍を突き立ててしまったと警鐘を鳴らす。
「よおぉくもやってくれたなぁ…?」
「wait! stop please! 降参する!」
「うっせェ!一発殴らなきゃ気が済まねんだよ…!」
銃創は肉体の持つ治癒がものの数秒で塞ぎ、焼け爛れた顔面も同様。
脳に存在する扁桃体活性時に起動し、体内に貯蓄されたATPが尽きるその時まで無尽蔵の回復を是とする。
それが、彼女の神秘。
「あっそ、私もまだ気が済んでないから。」
背にぶつかる硬い感触、覚えのある感触。
「―――っまたかよ!!」
手榴弾、しかし此度は非殺傷兵器ではなく…
爆薬の信管の仕込まれた、安全ピンを抜かれたフラググレネード。
「逃げるよ、椿芽。」
「thanks…ユキヨ。」
思わぬ助け舟の背後で、爆煙が舞う。
「あーもういい゛…本気出してやる゛…」
破けた鼓膜、焼けた生体、爛れた背を瞬時に治し赤髪は立ち上がる。
「嘘でしょ…あの人本当に人間なの…?!」
「half-man half-god…」
腰に帯刀した総二対のマチェット、その両方が抜刀される。
「おら、テロリストはこんなんじゃ死なねぇぞ…!」
「いや普通死ぬでしょ…っ!」
「Truly undead…」
立ち昇る闘気は熱を帯び、少女らに血の匂いとしてそれを伝える。
「えー…状況終了、状況終了…演習終わりだお前ら。」
その時、天からノイズ混じりの声が響く。
「あぁ!?ふざけんな!俺はまだ…」
「まぁ落ち着きたまえよ、ほら深呼吸深呼吸。」
「雨眠…!てめぇ何しに…まぁ治療か。」
切り替えの早さは戦場にて命と同等、経験則上三田は身体で理解していた。
「はぁー…で、これどっちが勝ったんだ?」
「ん?君だよ、後ろ見てごらん。」
「あっ…ど、どうもです…?」
振り返る先は目と鼻の先にある銃口、齢16にして人の後頭に銃を突きつける事になんの躊躇いも無い、それがひな。
「おい犬!あんで終わりなんだよ?」
「もう時間です三田さん、今から出発しないと距離的に…」
「さ、いってらっしゃい三田くん。」
時刻は1245、準備時間を踏まえた上での出発時間だ。




