16.
ぱしゅ。
9mmパラベラム弾がいたいけな少女の腹を貫く。
脂肪層、筋肉層、臓器全てを。
「っこぷ…」
「でぇな゛ぁ!おらよチビども!んなやつくれてやる!」
「雪代、治療。」
声は震えず、視線は同じ。
仲間を撃って、仲間が蹴られても。
「ターゲット逃走、追うぞ。」
____________________
「…先生、先生、くる、クルミ、が…」
「落ち着け、今雨眠が向かってる。」
「おちつけるわけないでしょ、だって、だって。」
それは柊人だけだった。
この雪代という淑女において、仲間でもあり同級生でもあり…
恋人でもある、クルミへの発砲。
自分から示唆したような物だ、言い訳は無用。
が、受け入れられない。
それはひとえに、彼女もまた子供であるから。
「ぁ゛ー…なんか、あったか…」
「しけ、しけつ…止血…っ!」
「えへへ…うたれちゃった…とぷとぷって、おなかからでて…」
被弾箇所は右腹部、柊人の事だ、無意識に急所を外したのだろう。
されど腹部は腹部、いずれにせよ銃創は免れない。
弾丸は突き抜けた、対象の三田に当たった。
いつもおやつばかり食べて、それなのに全く太らなくて。
お腹が薄いから、貫通出来たんだね。
そう思ってしまった、緊急時なのに。
____________________
「やぁ。」
「っ…誰!」
「ちょ、落ち着いて雪代、あのヤブ医者だって…」
ふわりと薬品の甘い匂いが漂う、ふわりと手先まで隠れた白衣が舞う。
「止血が不充分だよ、そこを抑えてごらん。」
指示は的確、渡されたガーゼが被弾箇所に詰め込まれる。
「永久空洞を封じるよ、そこどいて。」
「…はい。」
返した、というよりは漏れ出た言葉。
叱られた子供のような、親が代わりに謝っている時のような。
そんな雰囲気を孕んでいた。
「ケテルくぅん?聞こえてたらアレをよこしてくれ。」
瞬時、雨眠の横目に閃光が現れる。
瞬時、閃光から一つの薬瓶が現れる
瞬時、薬瓶を雨眠が袖口に仕舞う。
「はい、今から鎮痛剤と銃創封鎖薬、それから…適応薬を投与するよ、いいかい?」
「んぇ…?あ、はい、いいです…けど…」
右手が袖毎クルミの患部に近付き、空気の抜ける機械音が鳴る。
"全く軟弱なものよ、リーヴィアならば貴様より満身創痍であろうと奮闘していたのだが。"
「うるさいなぁ…それはその人がおかしかっただけでしょ…?!」
「ほら動かないよ、ああなんだったか…アーモンドくん。」
「クルミです…」
雪代の悲哀を掻っ攫うように、天から響く王の一声を皮切りに雰囲気が変わる。
「ぎょわ…これめちゃくちゃいた…くないっすぅえ?」
「おやすみ、落花生くん。」
「いやだからくるいぃ…」
規則正しい寝息が伝う、鎮痛剤の効果で入眠したのだ。
「くかー…すぴー…」
「…なんなの、あんたって。」
百年の恋が覚めたような雪代の顔を最後に、クルミは深い深い眠りへ落ちていく。




