9.
「来てたんだ、そこの人達は?テットの人?」
「ぁ、ああ、そうだ。」
「うん、そっか…こんにちは、私は掘削部の部長、よろしくね。」
不思議と落ち着くその声は、吐息交じりで声量は普通だというのに囁き声だった。
「あれ、ふゆちゃんとクルミは?」
「空港に置いてきた、荷物を運んでもらうからな。」
「…ゆきよ、こっち。」
柊人の手招きに応え、スマホを片手間に弄りながら囁き声の主は着席する。
「部員の子に伝えなきゃ…あ、日程票も…」
藤井雪代、16歳女。
役職は偵察員、神秘無し。
「…まぁ、粗方揃ったし取り敢えず自己紹介な、その後雨眠呼ぶから健康診断だ。」
「eh…健康診断?what is 健康診断…」
「ああ、お前ら知らないのか。」
名は日本、しかし住んでいるのはエジプト、彼等彼女等は一体どういった経歴なのだろうか、一つの疑問が浮かぶ。
「椿芽はしょうがないとして…まぁやってみれば分かる、はいじゃあ椿芽、自己紹介。」
「ok,任せる、をしてくれ。」
拙い日本語、要所要所に英語を挟む浅黒の肌の女はかく語る。
「私、は高取椿芽、この…brotherの、姉だ。」
「yee、俺は弟、シスターイズファムだぜ。」
「日本生まれ…but、育ちが、キューバ。」
親をスペイン系白人とする彼女、出生には数多の秘話を含む。
「この、brotherは、育ちがhiphop…」
「でもどっちとも好きなのはチャーハンだぜbro.」
「なるほど相分かった、では次だ、貴様の神秘を教えろ。」
秘匿されてこその神秘、しかし体系化されている以上最早神秘ではなく、陳腐な異能である。
「名前は付いていない、but…走ると、強くなる、right?」
「俺は俺の複製を作れるぜ、がしかーし、そう、何を隠そう超低品質!」
「これが意外と役に立つんですよ、最初こそグダグダでしたけどね。」
「へえ、俺とどっちが強い?」
三田の純粋な質問に、場が凍り付く。
「…三田さんですね。」
「世辞抜いたら?」
「いや普通に三田さんです。」
「あっそ。」
氷は直ぐに融解した、しかし溶けた氷は水となる。
生温い空気が流れる。




