6.
「そろそろ着くぞ、起きろ。」
ぱちくりと、その瞼がゆっくりと開かれる。
「可愛い可愛い寝顔だったねぇケテルくぅん!おはようぅ…!」
「んぁ、テンション高いな、どうした?」
見慣れた顔三つ、新たなる旅路の始まりだ。
「では、征くとしよう。」
席を立ち、ボーディングブリッジを歩く4人。
大小異なる体格、されど精鋭。
そんな中…
「ぐぅ…ぐぅ…」
5000年続く砂漠の地、ナイルの恵みがもたらされた奇跡の地。
「くかー…すぴ…っふひ…」
カイロ国際空港その窓際に並んだ鉄製の椅子にて、一人の少女が惰眠を貪っていた。
「こいつマジで…っ」
「寝てるぜ。」
「寝ているねぇ…」
「眠りに就いているな。」
起きる気配無し、口元から涎すら垂らして、カーキ色のセーラー服を着た少女が眠っている。
「あの…」
「うわぁっ!びっくりした…!」
三田の背後から声を掛けたのはこちらもカーキ色のセーラー服を着た少女、少し違うのは、ジャージを羽織っていたこと。
「て、テットの人達ですよね…?」
「お、ふゆ!久しぶり!」
見覚えのあるその名は事前ブリーフィングの書類に記されていた依田 ふゆその人である。
「紹介する、同僚の雨眠と、俺の先輩の三田さんだ。」
「はい…えっと、そっちの子は…」
「王。」
「ひっ」
怯えたような表情は、緊張と称すには些か異なり過ぎていた。
生来の性格か、或いは…
「むにゃ…」
「いつまで寝てんだこいつは!」
「あぁ今起こします…すいません本当に…」
そう言うと佐都は懐より鹿笛を取り出し、唄口に息を吹き込む。
「どぅわぁあっあ!おきっ、起きてます!」
響く鹿の鳴き声に飛び起きる少女、敬礼の仕草は本能的に染み付いた訓練の成果だろうか。
「自己紹介!」
「はいっ!白井クルミ16歳女!狙撃手!好きな物は…はっ!」
「…て、事でこいつがクルミです、狙撃手の。」
「わっ私は依田ふゆ、15歳で…その、運転手、です…っ」
片やどもりながら、片や叩き起こされての自己紹介。
彼女等2人が、事前ブリーフィングに記されたバディであるイシス、オシリスの2柱。
「あの、搬送…してますね…」
とぼとぼと踵を返すふゆ、生気が無いと言うか、疲労困憊と言うか。
「…うぃーす、さっきも言ったけど私はクルミ、テットの案内役だからよろしくー」
「道標すら幼童とはな、ますます学舎として解せん。」
「んぉ、なにこの子、厨二病?」
挨拶もそこそこに、合流した5人は用意したとされる駐車場へ赴く。
「えーと、ふゆちゃんは今日一日掛けて色々運ぶから…その、何か用?白衣の人。」
「いいや、何も。」
「気にするなクルミ、こういう奴なんだ。」
「そ、そう…」
後部座席へ乗り込んだ黙する王と三田の2人、運転は佐都が担当する。
「じゃ、お前は後でふゆとアカデミーに、分かったな?」
「うぃーす、じゃまた〜」
「何度も言ってるが、言葉遣い気を付けろよ…」
「うぃーす。」
背を向け去っていくクルミ、このような者が残り6名も居るとなれば、頭を抱えるのも必然だろう。




