44.
「ああっちょ…急に起きたら危ないよ!」
「黙れ、それより…ヒマリ共はどこだ。」
半身が凍ったまま、地を踏みしめる。
「えーっとね…結構離れててー…っ隙あり!」
凍傷間際、王の背に薬剤が打ち込まれる。
「…何をした?」
「あ、アドレナリン剤ー…」
「取り敢えず、ヘリ乗ろっか…」
はらり、はらりと空を舞う空力剣が氷塊を剪定していき、三人は輸送機に乗り込む。
「もーほんと大変だったんだから…すごーく危ない状況だったんだよ?」
「危ない状況は貴様の顔だ女、涙で化粧が崩れているぞ。」
「ななっ…もう!Mangel an Taktgefühl!」
ヘリの止まっていたローターが、重たげに一枚、また一枚と空気を切り始めた。
回転翼が勢いを増す、砂塵が舞い上がり、爆音が座席の2人を襲う。
「エンジンスタートー…離陸するよー…」
建部の声は、優に100dBを超えるローター音で掻き消される。
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「ァ゜!つめたいっ!」
「ふふ、なにいまの声…」
ひまり達の跡地では、また異なる情景が広がっていた。
「っはー…おい、そいつが終わったら次は私だぞ。」
「はいはい、じゅんばんこね。」
満身創痍の2人を治療するキアラには、物憂げな表情が消え去っていた。
「ぉーい…!おーい!キアラ〜…っ!」
「あ、お兄ちゃん。」
「ヴァージル!」
「ぜぇ…はぁ…あの、ヴェルギリウスですって…何回言えば…」
黄金の毛髪、同じ色の瞳。
見知りの男が手を振って三人に近付く。
「…?あ、お前見たことあるぞ、テレビで。」
「おや、それは光栄です、あなたは?」
「ひまり、明朝ひまり…っうわ、今のかっこよあたし。」
「…調子の良いヤツだ。」
気が付けば雰囲気が和んでいた、前ならありえなかった事だ。
リーヴィアにとっても、キアラにとっても、その兄であるヴェルギリウスにとっても。
…ひまりにとっては、特段なんて事はないが。
「あー疲れた…腹減ったー…ピザ食べたいー!」
「ええっと…一応後処理義務がテットに…」
「あたしテットじゃねーし、お片付けの責任なーし!」
けらけらと笑う声、遠くでプロペラの連続音が鳴っている。
「…じゃあその、ここからはバチカンに引き継ぎますので、よろしくです。」
「ああ、いつも助かる。」
「わたし達は…どうしよっか。」
「ピザー!」
「うるさい!」
麗人の怒号が、夜空に消えていく。




