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思い付き  作者: Blue_lobster
一章
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41/82

41.

「もしもしっ…リーヴィア、聞こえてる…?!」


「…あ、ああ、聞こえている。」


電話に出た、というより"代わった"のは違和感の無いキアラその人。


「あのね、そいつには普通の攻撃が…」


眼前には、遁走しようと地べたを這う幼童。


「どうすればいい?」


自分でも恐ろしいほど落ち着いていた、ランナーズハイとやらか、或いは別の何かか。


「ぁ…えっと、伝えるのが難しいんだけど。」


「待て、そもそも何故情報を知っている?」


双方今際の際とも言える状況で、片や息を切らし片や冷静に電話でやり取りを交わしていた。


「それはっ…その…ッ!ひだり!ざぶ…っ!」


再度、湖での遊び、その一節がリーヴィアの身体を左に飛ばせる。


「あぁ、あぁああ゛…!」


その叫びは投擲した槍を避けられた事による悔しさか、或いは。


「なぜ…私はこいつに勝てると、思っている?」


自身の用意した劇より完成度の高い現実への絶望か。


「…そいつの神秘はね、感情が高ぶるとそれを現実にできる、っていうもの。」


「タテベさんから聞いた、って事にしといてくれる?」


「対抗策は…こっちも感情を奮い立たせるか、神秘を上回る神秘か。」


不明点は多々、しかし解決の糸口から蜘蛛の糸が垂らされる。


「リーヴィア…聞いて?」


「…何だ。」


「ずっと言いたかった、なんて事は言えない。」


電話口に聞こえる深呼吸、今この場だけは、全ての喧騒が消える。


「ごめんなさい。」


「っ…!」


「あの時の事、覚えてるよね?」


湖での逢瀬、それはリーヴィアにとっても、引摺り続けた過去。


言ってしまえばただの子供と子供のいざこざ。


しかしそれは時に、仲の断裂になりうる。


「来れなかった、のか。」


「それについても、ごめんなさい。」


「来なかったんだな。」


あの時、あの場で起こった拗れはいつしか、一生分の諍いとなっていた。


「…また、遊んでくれる?」


「………」


その語句は、あの時のまま。

変わっていない、仲直りの言葉。


「水鳥遊び、しよ?」


「冷えるから、少しだけだぞ。」


その語句も、あの場のまま。

変わらない、水魚の交わり。


「えへへ…」


「さて…」


「「やろうか。」」


刎頸の友同士、眼前の敵に対し再度同心協力。


「皇帝、ステージに上がれ。」


真に良作は、逸脱者も浮浪者も愚者も関係無く舞台へ昇華させる。


差し伸べられた手は大きく、歴戦の古傷が刻まれていた。


「…余、は。」


打ち砕かれた心に、心を揺らす劇は有効だろうか。


「…心とは、何だ。」


しかし、既に解は得ている。


「どこにある、余の歌には何故無い。」


魂を、或いはそれに準ずる。

神秘を揺らせば良い、それだけのこと。


「ああ、そうだった…余の劇場は、街が燃えた後に建設したのだったな。」


振り絞れ、どうせ後も無い。

神秘を燃やせ。

自身の持つ全てを賭けろ。


「貴様に、応えよう。」


麗人の手を取り、幼童は立ち上がる。

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