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思い付き  作者: Blue_lobster
一章
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40/81

40.

さて、状況を整理しよう。


相手は幼童、持っている武器はおそらく不可壊の片手剣、グラディウス。


聖句を記したページは効かず、物理での攻撃もまた同じ。


神秘はおそらく劇場という自分が好き勝手に出来る空間の顕現、何の聖遺物を喰らったかは不明だがネロを自称。


引っ掛かる点、一つは物理攻撃、二つは…勝てるかどうか。


脇腹に当たった戦車のせいで骨がズタボロ、光圧体ブレードも限界寸前。


使える思考リソースも切れてきた、何故キアラが兄と共に現れたのか、その兄は何故唐突に消えたのか…


「勝つしかないって事か?ふん、上等。」


辿り着いた結論はただ一つ、電話とやらを待ち、耐え凌ぐ。


"では行くぞ。"


迫る轟音、右と左。

避けるのも交わすのも無理、なれば


「でぇいっっ!!」


根性あるのみ、右を斬り伏せ、左が到達する前に叩き斬る。


「ローマの歴史が!職人が6世紀掛けた剣だ!」


「そう簡単に壊れてもらっちゃあ…っ困るんだよッッ!!」


次々と襲い掛かる火矢に投槍、関係ない、それら全てを真正面から迎え討つのだから。


「お気にでも召してみろッ…皇帝!」


"……騒々しい。"


「狂詩曲は嫌いっ…らしいな…っ!」


持てる全てを賭け挑む、培った全てを用いて近付く。


進め、進め、どれだけその姿が醜いとしても、手負いの獣ほど美しい生命は居ない。


"くどい、くどい、くどい…"


劇場、それは作家の想像力が及ぶ限り世界を構築出来る至高の舞台。


"しつこい、しつこい、しつこい…"


されど、才能無き者には梯子が降りない。


"ここはッ!余の劇場だぞ!"


共演者に暴言を吐くようでは、無論ままならない。


"死ねと言ったら死ぬのだ!余は皇帝ぞ!"


「わがままも…っいい加減にしろ、ここはローマじゃない!」


麗人が合間、石を振りかぶり…


「貴様はただの―――」


投げる、決め手と言える激情の攻撃。


「傲慢な子供だッ…」


"―――ふざけ…!」


長引いた戦闘に血飛沫が舞う、ただの石が無敵とも思える幼童の顔面にめりこんだ。


「はぁ…はぁ…っQuesta è (これで、)la fine.(終わりだ。)


幼童は転げ回り、痛みに声と称せない声で叫ぶ。


その時だった、一つの着信音が鳴り響く。


電話だ。


「pront?」


「リーヴィアちゃん。」


キアラの声だ、しかし、違う。

どこかが。


「ダメだよ。トドメは。」


「…誰だ。」


「…そうだね、せめて言うなら。『キアラちゃんじゃない』かな。」


声色、音の強弱は同じ、しかし口調がおかしい。

そう直感が告げていた。


「だいじょうぶ、私は味方。」


「みーぎ、ちゃぷん。」


発したその語句は聞き慣れた、あの湖で何百回も行った遊びの一節。


リーヴィアの身体は反射的に右へと傾く。


「なっ……!」


困惑と驚愕が入り交じった声で鼻血を垂らす幼童、それもそのはず、不意討ちの投槍が避けられたのだ。


「じゃあ、頑張ってね。応援してるよ。」


「なぜだ!なぜだ!いっいま!余は…っ!」


電話の向こうで、ノイズが走る。

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