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思い付き  作者: Blue_lobster
一章
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37/84

37.

「いだだだだッ?!おい!力強過ぎなんだよこの…このー…女!」


「リーヴィアだ!さっさと覚えろ!」


火花散り、剣戟咲き乱れる戦場はいつの間にか防戦一方と相成っていた。


"女子一人担ぎ、不慣れな剣で未だ抵抗するか!尊厳死を選べば介錯してやったものを!"


迫る幼童の剣術は褒められた物ではない、では何故ここまで追い詰められているのか。


その理由はただ一つ。


勢いだ。


隙はあった、脇下、側頭、踏み抜く脚部。

それを踏まえても尚、手負いの獣が如くただ前進を繰り返されていた。


「っぁああ…ッ!」


"おお、豪気!"


膠着というには余りにも押されていた状況を鑑みてか、負傷前提で即興の燕返しが行われる。


直後、走り。


遮蔽へ一直線に。


なりふり構わず隠れる。


一瞬の動作だった。


「っいいから早く使い方を…!」


捻り出した語句は真に困窮極まっていた。


「ああもう…!分かったからそれ貸せ!」


鞘を失った刀がひまりに手渡され、激しい徒労の果てに刀身に残された損傷を見て悲哀が巻き起こる。


「うっわ…こ、これ…これマジか…一つで三桁万円するのに…」


「なっ…わ、悪かった、だが手元に剣が無かったんだ。」


「ぁー…じゃ使い方だけど、そもそも鞘の無いこいつに機能は無い!あれ取ってこなきゃ本領発揮なんて夢のまた夢だ。」


指差す先には無残にも転がった機械式の鞘、同時に、光圧体ブレードの柄までもが落ちていた。


「鞘さえありゃあたしでも加勢出来る、今は…こいつしか。」


懐から先に幼童を貫いた拳銃が取り出される。


「…お前、剣士じゃなかったのか。」


「は?いやあたし侍でも武士でもねぇし…」


無銘の黒い銃身が両手で持ち上げられ、スライドが引かれる。


「いくぞ、鉄床戦術だ。」


「…囮作戦か?!」


「もちろん、囮もとい鉄床役は…任せな。」


物陰から一人の女が姿を見せる、手の震え、下肢の痛みをもってして。


「おら来いよ金髪慧眼!あたしはここだぞ!」


叫ぶ語句は虚勢そのもの、だがしかし、それが幼童の心を奪った。


"…良かろう、劇には道化が居なければならぬ。"


鉄床戦術、それは低機動かつ耐久力のある兵科を囮に敵を引き付け、対して高機動の兵科で叩く昔ながらのドクトリン…


"ローマの第5代皇帝たる余が眼前の女子と相対しんぜよう!"


この様子を、鉄床とそれを叩く槌に例えたのが語源である。


そして、当状況下において鉄床はひまり、槌は…


「頼んだぞ。」


「…頼まれた。」


鉄床(ひまり)の影に隠れ、飛び出す機会を伺う麗人(リーヴィア)その人。


「第5代…ね、紀元前の人間と戦うのは初めてだぜあたしッ!」


"極東の人間と逢瀬を儲けたのは余も初だッ!"


鬼が出るか蛇が出るか、ひとまずこの場においては、ヒトのみがその身を白日の下に晒していた。


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