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思い付き  作者: Blue_lobster
一章
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36/81

36.

「あのね、リーヴィアとわたしは…幼馴染なの。」


「知っている。」


「ずっと仲が良かった、ほんとうに。」


記憶は八年前を掘り起こす、それは例えるのなら桃源郷、泉に映るは懇意の関係…


「あのね、わたしって…生まれつきこうなの、髪の毛も、目の色も。」


「見れば分かる。」


眼皮膚金皮症(がんひふきんぴしょう)…アルビノの一種なんだけどね。」


それはかつて、放浪すら経験していないリーヴィアとの永遠にも思える時間。


「光に弱くて…身体も弱くて、それでもリーヴィアはわたしと普通に接してくれた。」


「さぞ嬉しかったろう。」


「もちろん、名前も付いてない湖でね、毎日遊んでた。」


思い返せば幾百と蘇る、若き日の麗人が見せた呆れ顔。


「あそこの水は冷たくて…気持ちよかった。」


「永遠とは、没落するものだ。」


水辺に映るのは若き日の自分、それは、いつも笑顔だった。


「いつの日だったかわすれちゃったけど水浴びした後、わたしは濡れた身体を拭かなかった。」


「冷えちゃったわたしの体は体調を崩して…次の日は遊びにいけなかった。」


「…言えなかったの、ううん、言わなかった。」


雨が降っていた、それでも麗人は待ち、友人の居場所を雨風から守っていた。


ここ(無名の湖)が壊れれば、あの友人は病床だけが全ての世界になってしまうから。


そう、思ってしまったから。


「ごめんね、って言えたら、どうなってたかな。」


「その日からリーヴィアは、遊びについてきてくれなくなっちゃった。」


「矮小な綻びだな、つまらんいざこざよ。」


「それでも、わたし達にとっては大きい断裂だったの。」


過去の過ちは消えず、たった一言口に出来なかっただけでヒトは仲違いを起こす。


しかし、当事者にとってはそのたった一言が何よりも重大なのだ。


「仲直りしたい、またリーヴィアと遊びたい。」


「わたしはどうなってもいい、なんて言わない。」


「無傷でわたしとリーヴィアを助けて。」


欲望の声は止まらず、神格が受肉した人間が人間らしく振る舞う。


「…あなたになら、出来るでしょ。」


「………」


「わたしの中に居る(誰か)さん。」


驚嘆の小さい叫びが漏れる、身体を共有した同居人(ティファレト)の叫びだ。


「気付いてたよ、ずっと。」


「…なるほどな、貴様の意図が分かってきた。」


「だったら話は早いよね、王様。」


何も出来ない、何も出来なかった少女の首に正負剣が突き立てられる。


「…わたしは赤裸々にはなしたよ。」


「そろそろイチジクの葉(体裁の覆い)を脱げ、ティファレトよ。」


「………乗せられちゃったね。」


自己と他者を区別し、それを比較する意識。

それがイチジクの葉の本質。


「対価交換だ、小娘。」


恥を覚えた原初の人間は腰に葉を巻いた、そして今、彼女らは葉を下ろす。


「私達を手玉に取るなんて、凄いね。」


原罪は消えない、私は裸だ。

裸である私は恥ずかしい。

されど、羞恥を知り私は人間と相成った。


「完成された小娘よ、未完成の人間として"お前"を認める。」


「そして、契りを交わせ。」


「一つ、必ず死ぬ事。」


「二つ、必ず苦しむ事」


「三つ、必ず失敗する事。」


原罪を背負いながらも腰に巻いた葉を脱ぎ捨てる、その代償は苦難が付き纏うだろう。


「おめでとう、キアラちゃん(前までの私)、そして…さようなら。」


「私からも、約束ね。」


「愛を尊ぶ事。」


「芸術を生む事。」


「挑戦に価値を見出す事。」


けれど、その苦難には愛し、学び、作り、慈しみ、星を見上げれる肉体が必ず在る。


「これを破った時、必ずお前を殺す。」


「これを破っちゃったら、悲しくなっちゃうな。」


今、無垢で幸福な存在から、最も自由で最も苦患に満ちた存在へとキアラは昇華する。


「ふふ、もちろん。」








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