34.
「おいおいおい…じゃあ今そこでバトってるのはあたしが対面したのと違う奴なのかよ…?!」
「うん、あなたの話ではそうなる…」
話の噛み合わせが端的に行われ、次にするべき行動の是非を両者は問う。
「たすけ…られねぇよ、んな怪我じゃ…つか早すぎて介入も出来ねぇ…!」
眼前に繰り広げられる剣戟は、最早人間のそれを凌駕していた。
右手には左手、刃先には刃先、足払いには跳躍と、互角に立ち会っている、なんなら一方は自身な刀を使いアウェーだというのに。
「ぁ…刀の人、あのちっちゃい子の通信機は?持ってる?」
「いや持ってる訳…ぉわ、あった。」
転送時の混沌に乗じてか、はたまた別の要因か。
ひまりの手には王の貰い受けた端末が握られていた。
「っでもどうすんだよ!あんたの言い分にゃみんなあたしの元いた所にいんだろ?!」
「…だめもとだけど、やってみるしかない。」
「は?なんて?」
「おねがい、わたしの端末とそっちの端末を近付けて。」
疑惑はあった、がしかし間近にて戦っている人間が居る以上、従う他は残されていない。
「…っお、王様…」
無力なか細い声が王を呼ぶ、足りない。
「王様…っ!」
決心すらままならない声が王を呼ぶ、足りない。
「おねがい出てっ…!リーヴィアをたすけたいのっ…!」
他者だよりの人間が、他者を救おうとする声で王を呼ぶ。
"何だ、今忙しい。"
藻掻きですらまともに出来ない声を王が拾う、今この場にて神秘が満ち足りる。
"誰かと思えば小娘か、それに…ヒマリ。"
「っおお!なっなぁ?今お前の2Pカラーみたいな奴と…えと、リーヴィアさんって人が…!」
"黙れ、見えている。"
民でもない、民とは程遠い存在へ慈悲という名の威圧が与えられる。
"さしずめ余に助けでも求めるのだろう、では一つ助言だ。"
「…それは?」
「それは?」
"余を試すな、イチジクの葉一つ脱げん者にやる言葉はない。"
次に与えられたのは、冷ややかな拒絶。
"小娘、生きたくば過去を殺せ。"
"………ヒマリ、瓦礫を足から退かさなければ毒が溜まるぞ。"
最後の語句は、補聴器でようやく聞ける程度の慈愛。
「瓦礫?っうわ、足挟まってら…」
ひまりの挫滅症候群一歩手前を指摘してノイズ混じりの声がぷつりと途切れる。
「っいだだ…で、どうすんだ?あいつ何言ってるかさっぱりだったぞ。」
「………」
「?おい?もしもし?」
取り次ぎに応える声は無く、ただ奥で鉄と鉄のぶつかる音が鳴り響く。
「ヒマリ!起きたなら加勢しろ…っ!」
「いやんな事言ったって…」
"東洋の刀はさぞ扱いづらかろう!いっそ余の剣を貸してやろうかっ!"
図星である、西洋人であるリーヴィアにとって機械式とは言えひまりの体格に合わせた特注品の刀は不便極まっていた。
両の手で振るう光圧体ブレードに比べ、抜刀を是とする打刀…
「あぁっCavolo!」
幾ら剣を交えようと防戦一方に対し苛立ちが募り、蹴りが幼童の腹に炸裂する。
「ぅお…!蹴った…!っちょちょ?!」
「おいッ!せめて使い方を教えろ!」
「…!ま、まってリーヴィア…っ!」
これほどまでに自身の微かな声を憎んだ事はあっただろうか、通信機はその場に置かれひまりのみが担がれていく。
「っ………」
"さてどうする小娘、何をするも貴様次第だ。"




