33.
「やっぱり…わたしがあなたの―――」
「―――違う、地位などに執着していない。」
「じゃあなんで?どうしてわたしを避けるの?」
捻り出たのは、素朴な疑問だった。
「…死にはしないが、お前と関わるのが死ぬ程嫌だからだ。」
西日が彼女の後ろ姿を照らす、沈み行く陽光と同じ冷たさの声色だった。
「…いいかキアラ、成熟とは節度だ。」
「思い出は美しいままでいいんだ。」
「今更関係を戻したって、互いの為には…」
続く言の葉を断ち切る様に、背の幼童が口を開く
"さながら大理石で飾った臆病だな、小心者が。"
きっと、心の奥底で自身もまたそう思っていたのだろう、突かれた図星にリーヴィアは黙りこくる
"身の丈も、想いも、何から何まで伝えずうわ言を繰り返すようでは、進展の一つある訳もない。"
"熱情も無い、あるのはただ冷めた剣のみ…"
"劇場にはそぐわぬな、そこの余に忌々しい鉛を食らわせた女と共に死ね。"
指差す先は顔面から倒れ込むひまりの姿、一直線に並んだ者共を前に、劇場が再演する。
「っリーヴィアよけて!」
喚起の声虚しく、通信機毎リーヴィアが天へ跳ね飛ばされる。
半身に伝わる鈍い衝撃と骨の軋みが限界に達する音は、2対の馬が率いる戦闘用馬車によってもたらされた。
「チャリオット…?!」
空中へ投げ飛ばされた光圧体の剣が無残にもその所有主と同じくして落下する。
"せめて余が、美しく、芸術的にその命を退場として終わらせてやる"
迫る幼童、その手には高温の光圧体ブレードを受けても尚損傷無しの片手剣が握られている
「っくそ…」
背にはひまり、守るべき相手が居る状況で人は、生物は弱化する。
剣無し、通信機無し、負傷と敵手ありの現状でリーヴィアは起死回生の一手を打つ。
「キアラっ!奴を起こせ!」
「へっ?」
"ほう!"
麗人もへったくれもない形相で飛び掛かり、通信機がひまりの方へ投げ飛ばされる。
「ちょっ、リーヴィア…!」
"見よ!かの者は自己犠牲を選択した!"
幼童叫ぶ煽りはリーヴィアにとって、半分事実半分虚偽だった。
「はっ!私が負けるとでも?空が落ちてこようとありえん!」
"良い心意気だ!それでこそローマ人!なればどうする?獣のように食らいつくかっ!"
半分は自信、もう半分は剣を失った剣士の吠え…
「私は狼だ!牙の抜けたイヌ風情ではない!」
なれば、剣をもう一度この手中へ。
東洋の刀と言えども剣は剣、ひまりの温度を失った刀が世代はおろか人種を超え継がれる。
「かかってこい。」
"豪気!余もそれに応えねばな。"
夕暮れの決闘、二回戦目の火蓋が切って落とされた。
__________________
「ぉ、おきて〜…っ」
熱烈な激闘を横目に、うつ伏せでたおれるひまりへ通信機越しのか細い声が起床を揺さぶる。
「はやく、おねがいだからっ…」
咳混じりの声は小さく、麗人に託された意図も理解出来ずにただ覚醒を願う。
「んん…」
「ひゅう…ぴゅーーっ!!」
「っうわあ?!」
ひまりを起こしたのは結局声ではなく、指笛であった。
「ねぇっ刀の子…!いま大変なの、聞いてっ…」
「その声は…あ、あの時の金髪病弱ロリか?」
「もう何でもいいから早く!あとわたしは20さい超えてる!」
夕暮れ、訂正の声が一番大きく鳴る。
更新が減っていたので報告です。
見ている方がいるかどうかも怪しい弱小小説ではありますが、それでも読んでくださっている方が何人かはいらっしゃると思うので、一応書いておきます。
最近、難治性うつ病と診断されました。
治療中ではありますが、執筆速度や集中力にかなり影響が出ているため、今後の更新頻度は落ちると思います。
大層な作品でもないのに作者コメントのようなことをしてしまい少々恐縮ですが、黙って消えるよりは一言残しておいた方がよいと考えました。
書くこと自体をやめるつもりはありません。
遅筆にはなりますが、今後も続けていく予定ですので、もしまだお付き合いいただけるようでしたら、気長に見守っていただけると嬉しいです。
一ヶ月程更新が無ければ察してくださると幸いです。




