31.
顛末はこうだ、小島へ赴く両者とは異なり順調にリーヴィアとイナは聖遺物喰らいの位置を特定し…
「ブリーフィング通り、外で待機しててね〜」
「………ああ」
何処かの廃屋、異界への扉にも思えるハッチを開ける。
「…二日前には無かった家屋、だよね?」
「うん、記録上は、だけどね」
すると現れた通路に通信機を携え、狭い空間をイナは官邸に残った二人から案内を受け進む。
「マッピングは正確なはずだけど…いちおう、気をつけて〜…」
「はーい…声質が似てるからどっちが話してるかわかりずらいなぁ…」
右、左、また右と、古風なローマ建築の通路は気味が悪い程美しく荘厳であり…
宵闇の奥から声が響くまでは、その美を保っていた。
"嗚呼!余の劇場に迷い人が!"
「っ…」
妙に誇張された役者のような声色が響く、咄嗟に銃口を向けるのも無理はない
"異邦の人よ、なにゆえ我がローマへ来訪した!"
赤みがかった金髪、絢爛豪華の衣装、子供、裸足。
ファーストコンタクト後の刹那でイナはトリガーを引く。
「タテベちゃん、リーヴィアちゃんに連絡して。」
「っ分かった!」
あくまでも冷静な声色と共に、手動で歩兵銃が再装填される。
「キアラちゃん、今のは?」
「分からない、怪異なのは確か。」
次ぐ発砲、7.92mmの弾丸が眼前の者、その肉体を削ぐ。
「いまリーヴィアがむかってる、到着まであと…」
何度も、何度も、幾度となく撃ち込むその様はどこか執着的で、怯えているようだった。
「…ね、イナさん。」
「ッなに!」
張り上げる声は、数多の感情が詰め込まれていた。
「よけたほうがいいよ、右に。」
ヒトは、未知へ直面した際左を選ぶ。
しかし今回は、頼りない声の助け舟が出されていた。
「避けろーーッ!イナっ!!!」
現着は早く、怒号と共に熱された光圧体の剣が上体を起こす幼童を貫通する。
"いい剣だ。"
頭部に突き刺さる高温の刃を気に留めず、幼童は謳う。
"ローマの刀工は二千年を経ても未だ健在なのだな"
通路は崩れ、虚飾の黄金宮殿が劇場と共に陽光へ晒される。
同時に…
"Textus apocryphi respondent."
「リーヴィアちゃんッ!!」
「イナ!!」
突き刺さった剣をリーヴィアへ投擲するイナは、ばっくりと割れた幼童の頭部へ呑まれる。
そして、今に至る。
たった数kmかそこら離れた地点にて、同じ動乱が巻き起こりあらゆる者が混沌を作っていた。
「わわっ…」
飛ばされた地では一つの凍った死体が天を仰ぎ、半身に氷塊を纏った王がその場へと縫い付けられていた。
「…っ通信!」
携えていた通信機はどこへやら、イナの手元からは消失していた。
「ダンテさんの部隊…?な、なんで…」
困惑は消えない、しかしそれはもう一方でも同じである。
「ぐわっ…」
飛ばされた地、というよりは宮殿。
そこでひまりの目に飛び込んだ光景は縦横無尽なんて陳腐な言の葉では表現しきれない剣戟。
「っらあぁぁ…!」
"右、左、左、帝は全てを見切りまるで大火に燃える火のように避け―――"
「―――|stai zitto!《黙れ!》」
赤みを帯びた金髪の幼童、その者を切り刻み力強く潰すリーヴィアの猛攻は煩わしい歌劇で交わされる。
「っヒマリ…!?なぜここに…!」
"ローマ人ともあろう者ならば眼前の敵に集中せよ。"
少しの余所見、動揺が数世紀に渡り使用されてきた古代の片手剣が脇腹を突き刺す隙を与える。




