25.
「北西とー…南西ー…」
指し示す方角は緩やかな声色が語り。
「道は拓けたな、さてどうする。」
以後の動きを大剣の主が呟き。
「日没は近いよ〜、状況開始!」
行動の催促を軍人が執り行い。
「わたしは残るよ、たたかえないもん。」
残留を美貌が示し。
「えっなにこれ、あたしも行くやつ?」
困惑を剣士が表し。
「あやつの咎へ王命をもって余が手を下す、随伴せよ。」
決定を至高たる我が主が下す。
時刻は夕暮れ前、水都に立ち込める暗雲は嵐の前兆か、はたまた黎明を告げる印か…
「出発の刻である、耳のある者は聞け。」
「え?」
「余は南西へ赴く、この剣士を連れてな。」
「え゛っ!?マジ!?」
「伴随したければ来い、でなければ北西へ征け、聖遺物喰らいを討ち、聖遺物喰らいに属するものは一切を滅ぼし尽くせ!」
彼は在る者である。
神秘の礎を見据え、天上の王である。
しかし彼は知らなかった。
南西へ巣食う怪物を。
赴く事の意味を。
蛇が出るか鬼が出るか、定めのみがそれを知っている。
「…んー、二手に別れるって事で良いのかな?」
「うーん…そうだと思うー…」
「相変わらずよく分からん口調だな、タテベ、お前はどうする?残るか?」
王たる者の高笑いは廊下へ消えていく、状況を理解していない剣士の悲鳴を連れて。
「キアラちゃんのごえーしないとだから、残るよー…」
「ふふ、よろしくね、もさもささん。」
残るはイナとリーヴィア、相反し、嫌悪し、可愛がる、敵陣へ赴くには些か問題がある関係。
2人の間に、名状し難い沈黙が訪れる。
「リーヴィアちゃんリーヴィアちゃん。」
しかしその沈黙はイナが破った、短い静寂である。
「CQB…えっと、近接戦闘はそのおっきい剣だとやりにくいでしょ?」
「…ああ。」
「だからね?もしお相手さんがお家の中に居たらリーヴィアちゃんはバックアップについて欲しいの!」
何処までも読めない思考である、イナはまるで別人と代わったかの如く理性的にリーヴィアを諭す
「道中は別れていこっか!もしお相手さんが居たら…無線で!もしくは逃げよっ!」
「分かった、準備は?」
その笑顔は崩れない、張り付いたような口角に朗らかな目元は、あらゆる感情を楽に固定している様だった。
「先にいっておいで!私はダンテさんとお話してくるから!」
「…タテベ、悪いが私の分の装備を頼む。」
「りょーかい…なんだか事が早く進みすぎて、めまいがー…」
大剣の整備は未だ済んでいない、イナとの交戦で光圧体を御するパーツが緩んだのだ。
「ね、リーヴィア?あの王さまはいいの?」
「ああ、あいつは…実力がある、死ぬ事はないだろう。」
「で、でもあの女の子はー…?」
大剣の柄を弄るリーヴィアは不敵な笑みを浮かべ、自信に満ちた声色で宣言する。
「私が認めた者が強いと保証したんだぞ?それにあの明朝という名字…」
明朝、それは翌日の朝日を見れるよう物の怪や魑魅魍魎から領民を守る為平安の世に成立した家系。
ある武人が刀を極め、一閃に命を賭け、代々受け継いだ門外不出の剣術を有している、同じ剣の道を歩むリーヴィアが明朝家を知らぬはずがない。
「南西はあの2人で充分だ、…人数で言えばこちらも2人だがな。」
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「ちょっおまっマジで!なんでそんなテンション高いんだよ!」
四十八代目明朝家流居合抜刀術継承者兼明朝家当主、明朝ひまり、彼女は今日本とはかけ離れた地にて…
「さぁ南西へ往くぞ!眼前の敵を前にして不動!それの何が王か!」
放浪の道中出会った数奇者に同行を余儀なくされていた。




