24.
「貴様らの解釈が何かは知らんが、一言で表すのなら可能性であろうよ。」
「可能性?神秘って秘匿された情報のリソースじゃないのー…?」
「賽に例えてみよ、貴様らは全ての行動に成功、失敗、その他の面が備えられている。」
再三繰り返される閃光の後、六面のサイコロがその姿を見せる。
「出る目を予測出来る者は居ない。」
王の手中からこぼれ落ちるかのようにサイコロが落ちる…
空を舞い、軽い音を立てて3の目が出る。
「しかし干渉を及ぼす事で如何様にも目は弄れる。」
何度もサイコロが転げ落ちる、しかし出る目は全てが3を示していた。
「賽は不変の法則、目は現実が処理する結果、振る者は貴様らだ。」
場において、同じ大剣の主であるリーヴィアのみがその存在を感じ取っていた。
豪勢な飾りが付けられ、刀身に刻まれた"magician"の字を王の背後に隠す空力剣の存在を…
「抽象的だな、もう少し分かりやすく言え。」
「そう、それだ。」
「…なに?」
「言うも難し、行うも難し、それが神秘の本質である。」
誰もそれを理解出来ない、誰もそれを説明出来ない…
だからこそ成立している神秘は、如何様にも解釈が出来る。
「まぁ、よくわからないけど、あんまり深く考えないほうがいい…ってことかな?」
「それで良い、あの白衣の女ならば少しは理解出来るかもしれんがな。」
「講義はもういい、その情報は今回の任務に役立つのか?」
これまでにかなりの遠回りをしてきた一行、得られた聖遺物喰らいの情報はほぼゼロである。
「そうだよー…元々それが目的なんだからー…」
「でも…あの女の子が戻ってくるまで、待つしかないんじゃないかな。」
時刻は既に昼過ぎ、雄大な橙色の陽光がヴェネツィアを照らしていた。
執務室には静寂が流れ、リーヴィアが行う大剣の整備音や菓子を齧る音だけが立つ。
「入るよ〜」
そんな中、扉の奥で一つの声が響く。
「ゔぇっぷ」
「お話は済んだよ〜とっても可愛らしい子だね〜」
声の主はイナであり、その横には床に突っ伏している意気消沈のひまりが居た。
「ふっ…なんだそのみすぼらしい姿は…まるで飢える子犬だな。」
「なに笑ってるんだよ!ひどい目にあったんだぞ…」
王へ吠えるひまりを横目に、一つの薄汚れたハンカチが机上に置かれる。
「…これは、なにかな?」
「この子が持ってたハンカチ、唯一の手掛かりってとこかな〜?」
黒色の粘ついた汚れが蠢き、南西へ向かう。
「まさか…聖遺物喰らいか!?」
「察しが良いねリーヴィアちゃん!んーでも、ちょっと違うかな。」
「あたしとこのチビが出くわした時、手に付いたのがきしょくて拭いたんだよ、だからそれは…」
「聖遺物喰らい…今回の任務における対象、それの肉片、だな?」
しかし、それは肉片と言うには余りにも異形であった。
「手掛かり…って、どういうことー…?」
「ふふーん、見ててね…」
イナは懐から古風な拳銃を取り出し、ハンカチに銃口を向け…
「えいっ」
射撃を行う、すると直後に汚れが二方向へ飛び散る。
しかし、壁へ衝突した泥のような肉体は再度結合する為床を這う。
「こ、これは…?」
「修復だろう、再生とも言えるがな。」
「当たりだよ〜、このお肉はね、大きいお肉に引き寄せられる性質を持ってるんだ〜」
誰かが息を呑む、誰かが飛び散った方角を確認する。
「つまり…さっき飛び散った方向に聖遺物喰らいは居る、ってこと!」




