22.
「…うわ、ここどこ?」
「久方ぶりだな、いやしかし全く辛気臭い面だな、リーヴィアよ。」
閃光が明け、2人が執務室の者達へ顔を見せる。
「鬱々として…一体どうしたと?」
清々しい表情で王はわざとらしく長椅子へ腰掛ける…
「おい、ここでは客人に茶菓子の一つ出さんのか?」
反響するように言葉が執務室に消える、その空気は凍ったというよりかは時間が止まったように感じられる。
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「…で、勝手に飛び出して迷った挙句そこの女と会い聖遺物喰らいに襲われてその剣でワープした、と?」
「迷ってはいない、余は王ぞ。」
「………」
頭を抱えるリーヴィア、その横には更に頭を悩ませる建部と我関せずといった様子で菓子を食らうキアラが王の向かいに座っていた。
「おもしろい子だね、お名前は?」
「存在の自己証明は済んでいる、個体識別名は無い。」
「ふふ、じゃあそっちの娘は?おはなし…出来そう?」
背後に立つイナに怯え縮こまるひまりは、飛び上がる勢いで口を開く。
「み、明朝家のひまりです…あの、これあたし食べられたりとかは…」
「ふふ、何もしなかったら、何もしないよ。」
「はい…」
蚊の鳴くような声の返事が人でぎゅうぎゅう詰めの執務室に響く。
「…取って食うような真似はせん、しかし幾つか質問はさせてもらう。」
溜息だらけの沈黙を破りダンテはイナへ目配せをする…
「え゛っ、な、なに!?ちょ、ま!」
「はい、別のお部屋行こうね〜…」
「たったすけてっ!あ〜!デカ女に食われる〜!」
脇から抱えられ無情にも連行されるひまりはじたばたと暴れるも赤子のように扱われていく…
「…いぐすり、飲んでくるー…」
「私も離席しよう…」
一人、また一人…続々と人が離れ行く執務室には咀嚼の音が侘びしくも響いていた。
「ふふ、3人っきり、だね…」
「………」
「………」
睨みを利かせる騒ぎの張本人、その王冠は皮肉にも燦然と輝いていた。
「…小さき王よ、次からは単独行動はなるべく抑えてくれ。」
「ことわ」
「頼む…」
返答を遮った言葉は懇願に近く、項垂れてはいるものの混沌に苛まれる表情は余りにも分かりやすい…
「リーヴィアがこんなになっちゃってるのは、いつぶりだったかな?」
「…ところで、貴様は何者だ。」
「ん?わたしのこと、知らない?」
不思議そうに見つめるその瞳は黄金郷のようにその美しさを鬱陶しいまでに主張している。
「…こいつがティファレトだ、例のテットで最高位の階級に就いている。」
「なに?この小娘が?」
「こむすめ…始めて言われたよ」
彼女のあらゆる仕草には儚さが宿り、彼女の全てには絶対的な美がついて回る様に付属していた。
「嘲るなよ童女、その名は偽りと知れ。」
絶対の緊張、絶対の視線、絶対の存在が再び顕現する。
"あの時"の様に、宵闇から威圧の声が両者の身体を強張らせる。
「貴様が調和だと?貴様が、あの美しさだと?」
「それが如何に冒涜的であるか、どれ程不浄であるか。」
「偽りの光、虚飾、自己神格化の末に貴様は滅びる、如何に周囲の人間が崇めようともな。」
続く言葉は否定的で。
「貴様はあの調和と美の者では無い。」
威圧的で。
「貴様は偽善に満ちた、過剰と歪曲に解釈されたている。」
何処までも峻厳に責め立てるようで。
「本質は確かに在る、が埋め尽くされているな。」
まるで説教をする大人のようで。
「ティファレト、何故テギリエルに染まった。」
「何故だ。」
少しだけ、悲観的だった。




