21.
「ゃーにしてもびっくりしたぜ、あたしもかなりやべー奴とは出会ってきた方だけど…」
「あのような者は始めて、と?」
「まぁな、初見で、しかも初撃のうちに逃げられたのは始めてなんだよー…」
相も変わらず王とひまりの2人は路地裏を闊歩していた。
「ただちょっと気になる事があってさ!ちょ聞いてくれよ!」
「………」
意気揚々と語るは聖遺物喰らいの手応え、テット所属ではないとは言え特殊な家系らしきひまりは、歴戦の風格を漂わせていた。
「…前々から思ってたけどさ、あんた反応薄いよな。」
「語らずして語っているだけに過ぎん、そも神秘とは秘匿性が全てだ。」
「なるほど、つまりかくかくしかじかであーだこーだか。」
「…もうそれで良い。」
襲撃を受けてから数分しか経っていないとは思えない程の緩い和やかな空気がそこに漂っていた。
「…で、これ何処に向かってんの?」
「…なに?お前が道を標す者ではないのか?」
「「………」」
歩みを止めた2人は向き合う、しかし本当に見ているのは行き止まりの現実…
「じ、じゃああたし達…まよ―――」
「王が迷うものか!全くもって遺憾だが致し方ない、財物を行使する…」
先の剣術における閃光より眩しい光が辺りを照らし、その威光が刀身を顕現させる。
「うわ、何だよそれ…新手の手品か?」
「収束剣だ、元は因果や運を司る概念であったが今や劣化し物体と成り果てている。」
現れしは王の所有せし3つの財物のうち一つ、サメフの名を受けた収束剣。
「おい、何かお前の隠し事を教えろ。」
「ぇ、やだよほぼ初対面だろあたし達…」
「であれば此処で野垂れ死ぬのが道理である。」
「えぇ〜…何だよそれ…じゃ代わりに!誰にも言うなよ!?」
人に堕ち、神秘に満ちていた過去の自身とは違い現在の王はその能力を振るう事もままならなくなっていた。
理由は至極単純、神秘という概念そのものに帰結する。
「秘密な?あたし実は…」
機密、とも訳されるそれは可能性そのものである、ここで表現される可能性は単なる言の葉ではない…
「…くだらんな、もう少しまともな秘密を寄越せ。」
収束剣やその他の財物、果てにはこの世に蔓延る異能やら何やらは全てが秘匿性のある可能性で出来ている。
量子論に近しいこの法則は難解で複合的で意味の分からない理に過ぎない、というより…
「はっ、それがお前の隠し事か!実にくだらんが秘匿性はあるな。」
「…出会った時から遠回しで馬鹿にされてる気がするんだよな…」
"理解してもこんな現実に価値は無い"が正しい結論だろう。
「では儀を始める、余の収束剣はゼロ点から枝分かれする未来を取り決める言わば現実の指揮棒。」
「おお、仰々しい。」
愚者は法に、賢者は武に、読者は文字に平伏す。
この世を取り決める全ての理の上に有る存在それはつまり…"王"
「余がこの剣を振りし時、あらゆる因果は省略される。」
「余がこの剣を握りし時、あらゆる説明は意味を持たず。」
「余がこの剣を呼びし時、あらゆる理は代償によって省略される。」
…とまあ、ここまで数多の語句を使い冗長な文を書き連ねてきた訳だが…
「…マジで眩しーこれ毎回やんの?」
有って有る者にあらゆる道理は通らない、彼女の眼前に位置する威光と同じ様に。
「…はっ、お前が更に有用な機密でも伝えていれば楽に済んだかもしれんな?」
今、収束剣が振られる、これ以上に説明は要らないというのが本懐である。
「…どこまでもあたしのせいですかさいですか。」
因果が明け渡され、散策、解明、移動、到着、合流の全てが省略される。
かの威光と共に。
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「―――…だったから、きちゃった」
呟かれる間の抜けた返事の後ろで、爆発と勘違いする程度の閃光が舞う。




