20.
「Maledetto psicopatico...!」
「was für ein süßes kleines Kätzchen...♡」
イタリア時間で午後2時、ヴェネツィアには快晴の空が広がっている
秘匿された首相官邸、ダンテの持つセーフハウスでは、熱を帯びた視線と殺意が渦巻いていた。
「2人ともやめないか。」
「そーだよー…」
リーヴィアを"子猫"とドイツ語で煽るイナ、イナを"サイコパス"と揶揄しイタリア語で殺意を向けるリーヴィア…
「こどもじゃないんだからー…」
言語は通じていない、しかし声色で何を言っているのかぐらい両者は理解している。
「イナ、ここを私の執務室だという事を理解しているのならば銃を置け。」
「リーヴィアぁ…あの王様も来てないし、いっかい落ち着こ?ね?」
恍惚とした表情で小銃を握るイナは、息を荒くしてリーヴィアを見つめる…
「ふー…ふー…うん、落ち着いた!」
「っはあ?」
未だ冷やしている裂けた左手を危惧してか、イナは銃を下ろしわざとらしい"休め"の姿勢を取る。
「どこまでも苛立たせる…!やはりあの時に私が切り伏せておくべきだった…!」
「いい加減にしろリーヴィア、敵と相対する前に仲間割れをするな。」
幾ら制止しようが頭に登った血は降りない、湿度の高い気候もあり官邸の執務室は無秩序に包まれていた。
「ではエスプレッソの一つぐらい出したらどうだ!ここへ来てから食らったのは銃弾だけだぞ!」
「…タテベ、すまないがそこの棚にある菓子を取ってくれ」
「その必要は無いよ、もふもふさん。」
その場に居た全員が冬の朝の空気をそのまま形にしたような、一切の濁りを持たない響きを耳に入れる…
「っお前は…!」
「ひさしぶり、かな?」
収穫を待つような稲穂が秋風で波立つように、その黄金色の髪が靡く。
その色は睫毛から瞳孔の色まで染まり切っていて、彼女が動く度乳白色の無垢を思わせる衣服が見る者の視界を奪っていった。
絶句、それは人間が認識の限界を超えた際に起こる現象…
「たすけにきたよ、うれしいでしょ。」
名はキアラ、ムゼオ・ヴィヴィーオと呼ばれる集団の崇拝対象である彼女においては、見た目の美しさのみで絶句を引き起こすには充分過ぎていた
「あれ、きいてる?ね、リーヴィア?」
「…き、キアラ、客人として来るのなら先に連絡を…」
「しー…今わたしはリーヴィアにはなしかけてるの。」
ダンテの口元にそっと置かれる指先は、どこまでも繊細で美しく触れれば突き抜けてしまいそうだった。
「ふふ、明らかに嫌な顔…」
相変わらずの透き通って糸を張っただけのように頼りない声にリーヴィアは、これまで見たことのない程嫌悪を見せる。
「…何をしに来た。」
「言い方ひどいよ、ふふ…」
周囲の目線が一極に集まる中…
燦然とまで輝く髪を靡かせ当人は…
「暇だったから、きちゃった」
間の抜けた返事を呟いた。
事故で入院してました




