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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
159/285

158話 語る妖怪達

ここまで見ていて、妖怪がかなり感情的になってる描写があるのは、彼らに裏表がないからですね。伝承によってはありますが、蚩尤なんかは本音がもう口から出るので、隠し事は無理な妖怪です。


7日までは休まずに投稿します!8日はpixivでイベント小説を投稿しますので‼︎

会話しながらも料理してると、腹の鳴る音が背後から聞こえてきた。唸るような音かと思い、獣でも出たかと誤解するほどの音だった。

俺と悟美が背後を見ると、カナがお腹を抱えていた。

「ごめんなさい…何か食べたいんですが、ご飯ありません…か?」

申し訳なさそうにカナは赤面させる姿を見て、俺は笑いが込み上げてきた。

「おいおい⁉︎めっちゃ腹鳴ってんじゃねえかよ!飯まだだぞ?」

「あ…はい……」

落胆するようにしょんぼりする姿で笑いが抑えるのに必死になった。だが、堪らず笑いだしてしまう。

「だっははは!ちょっと待ってくれよ?あと10分かかるからさ」

「むぅ⁉︎私をバカみたいな扱いしないで下さい!あと、そんなに笑わないで下さい!」

「悪い悪い。あんたが気恥ずかしく腹抱えてるのが面白くてな?笑っちまったんだ」

「酷い人ですね。私を食で揶揄って…」

不機嫌にカナは頬を膨らませる。

「機嫌直せよ?ほら、ちょっと味見してみろよ」

俺はお玉で救ったスープを差し出す。

カナは俺を睨むが、お玉を受け取ると軽く一口飲んだ。

俺が作った中華スープ。苦手だったが、スープなら作れると頑張って作ったものだ。お椀一杯分は飲んで試したぐらいに味見を繰り返した。

それを否定されるもんなら、俺はキレるだろう。

すると、カナは意外な反応を見せた。

「……美味しい!」

静かに感動し、本音を漏らした。

美味しかったのか、カナはお玉に残ったスープを一気に飲み干した。

そして、子供の笑みでニッと笑みを見せてくる。

「貴方にしては美味しかったですよ?ちゃんと拘りを感じられるお味でしたので許します!」

どうやら、カナ直々のお墨付きを頂けたようだ。

あとは悟美の主食と主菜が出来るのを待つだけ。今日は炒飯と酢豚、中華スープだ。これなら………。

ちょっと待て。これ旅だよな?旅って普通、狩りしてそれで生計立てるもんだろ?

俺はなんで料理を極めようとしてんだ⁉︎

別に料理を作るだけなら、肉焼きか適当に狩って食べれば良いだろうし。

古都からの旅に疑問を抱いた俺だった。

「マツシタコウスケ、貴方が何を考えているか分かります。ですが、それを口にして否定してはなりません。カナ様のお怒りに触れれば死があるのみです」

背後霊のように現れては、俺に耳打ちする。

料理を作るのをやめたら恐ろしいことになると夜叉は言う。

俺はカナを連れて来ない方が良かったと、今更ながら思った。




食事にすると、雪姫達が見回りから戻ってきた。

妲己以外の全員が揃い、それぞれ火を囲んで食べることにした。

蚩尤は迷わず悟美と紗夜の間に割り込み、雪姫は俺の隣、カナは夜叉と紗夜の間に入れて貰う。

すね子は俺の足元でご飯を食べている。ガツガツ食べる姿を見て俺は癒される。

「美味いか?」

流石に人のご飯はキツイと思ったから、すね子の分だけは焼き魚をあげている。俺が古都で大量に購入した魚を冷凍して保存している為、すね子の好きな焼き魚なら幾らでもあげられる。

「にゃあ〜!」

ご満悦そうに鳴く。

「可愛いなおい。ちゃんと食うんだぞ?」

俺はすね子を可愛がっていると、夜叉が俺に話しかけてきた。

「その動物…『すねこすり』ではありませんか?」

「ん?前見ただろ?そうだぞ?」

「三人…もですか。やはり貴方の行動は理解不能です。“ある禁忌タブー”を幾ら犯せば気が済むのでしょうね?」

夜叉が俺を罵る。

俺が『名付け』を犯し、かなり危険視している。それは蚩尤も同じ。

「悟美はこんな男を好くのか?罪に汚れる男など放っておけばいいものを」

「そうかしら〜?幸助君は退屈させない旅に連れて貰ってるから文句はないわ」

「そう言うなら構わないが…。俺はこの人間を認める要素は全く感じられん。玉藻前に好かれた者を認めるわけにいかないからな」

この二人の妖怪には俺は不評みたいだ。

俺は少しばかりショックを受けた。

「夜叉と蚩尤、あなた達は幸助を何も分かっていない。知らない人を愚弄するなど“災禍様”に属する者として愚か。理解した上で発言して貰いたい」

雪姫はただ一人、俺を快く思ってくれる妖怪ひとだ。それだけでも心が救われる気分になれる。

「雪女よ。貴殿の伝承も今や“災禍様”に匹敵する領域へ至る鬼才。下手すれば、俺らが神の伝承を持たなければ容易く超えていた逸材。なのに純妖に至らず、のうのうと“厄災”に留まり続けた?人を食らわなければ貴殿は進化を果たせなかった筈。それなのに、『名付け』を受けても尚、力を衰えぬ異質さはなんだ?」

「私は幸助を受け入れて名を頂戴した。人間を食らう事で力を得るなど、私には出来ない…いいえ、してはならない。そう決めてる」

疑問と怒りが混ざる質問に淡々と返す雪姫。

「偽善気取りもいい加減にしろ。貴殿が妖怪を屠り、人間を見殺しにする噂はよく耳にした。身勝手に被害を与え続ける貴殿が戯言を言ったところで信念はないに等しいぞ!」

蚩尤の言葉に雪姫の箸が止まる。

「本当に知らないのね。あなたは私がどれほど苦しい思いをしたのか…」

「知る必要はない。所詮は他人の口から出る言葉は偽りだらけ。程良い人間を得て浮かれた貴殿は最も無知で愚かしい妖怪だ」

「それはあなたにも言えること。戦いに明け暮れる生活を送り、人間によって滅ぼされたあなたの身勝手さは目に余るものね。妖怪として加護を与えず、人間を食殺したのは愚かだと思う。何故、悟美に加護を与える気になった?それこそ、あなたが悟美に抱く歪んだ感情があったように見えるけど?」

蚩尤の刺さる言葉を更に突き刺す言葉を吐く雪姫。

ここまで立場の違う妖怪に言いごたえが出来るのは肝が据わり過ぎてる。

來嘛羅に臆さずに話していたのは雪姫だけだったのを思い出した。

「言うか雪女⁉︎俺の伝承を貶すか!」

我慢ならなくなったのか、蚩尤は乱暴に立ち上がり怒りを露わにする。

純妖ならば“災禍様”に至れたのだと言う。『雪女ユキオンナ』は現代妖怪に部類されるが、古来から日本伝承で彼女の詳細は記されている。

俺の世界でも『雪女ユキオンナ』は、普通の奴でもよく口にされていた。だから、妖界に反映されることで力を得る。妖怪は人間界からの伝承の伝染によって強さが増したり減ったりする。

その中でも『雪女ユキオンナ』は誰からも認知された妖怪であり、知らない人などいない有名妖怪。下手すれば、現代妖怪以上の知名度はある。


しかし、雪姫は俺と出会うまで人を食らおうとせず、混妖のままだった。


混妖が至れる領域レベルは“災厄”まで。そこからは純妖の世界となる。

純妖は人を食った数と生気を取り込んだ量、伝承の濃縮によって大きく異なる。

「やるのね?…でも、此処はまだ古都の町。暴れれば褒姒が駆け付ける」

「構うものか!貴殿の機嫌だけではなく俺まで腹が立つ。その代償は高く付くぞ?」

「そう……。皆んなは下がって。この乱暴な牛は私が鎮静させるから」

「やれるならやるがいい!貴殿では、その程度の実力で俺を越せないだろうからな!」

臨戦態勢を取る二人。しかし、この町での戦闘は避けなければならないので止めなければならない。

互いが立ち上がった瞬間、夜叉が鬼の形相で素早く立ち上がる。

「食事中です!武器を手に取る事は私が許しません」

仲介者を名乗り出て、背丈を超える長刀の斬撃が両者の敵意を失せさせる。

「見苦しい限りです御二方。妖怪同士が歪みあって何が面白いのです?カナ様の食事を邪魔するというならば、私がお相手致します」

「チッ…夜叉め」

「……ごめんなさい」

舌打ちをして睨む蚩尤と取り乱した事を謝罪する雪姫。

雪姫は夜叉を敵にするのを快く思わないようで、敵対するという気はそこまでないらしい。

「大丈夫ですかカナ様?」

「ちょっとびっくりしました。けど、もう気にしてませんよ。おかわり下さい!」

子供のようにお椀を夜叉に渡し、よそって貰ったご飯を勢いよく食べるカナには笑わせてくれる。

お陰で、さっきの言い合いの内容なんか忘れそうだ。


伝承は優劣を判別出来るようだが、その中でも多種族の特性を持つ『夜叉ヤシャ』は、『雪女ユキオンナ』とはまた違う特異存在である。

伝承以前に、根源的妖怪の種族を持つ夜叉の強さは“太古の妖怪”にすら匹敵すると言われるほど。妲己にやられたのは異能であり、純粋な剣術や身体能力ならば相手にならないぐらいだと妲己が豪語していた。

ちょっと相手を褒め過ぎだと思ったが、間違っていなかった。

戦闘能力に関しては、あの悟美ですら引き分けになってしまう。元々本気を出していないのも考慮すれば、間違いなく剣術は雪姫を凌駕するだろう。

夜叉を敵に回すことは即ち死を意味する。

俺も殺されかけた経験があるし、こいつと妲己、雪姫はどうも恐怖を感じる。

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