表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
158/285

157話 放浪再開

危険地帯で料理する肝は凄いものです。それにしても、加護は隠せないのが大きな弱点です。これがヤバい妖怪にでもみられたらたまったものではないですよ。

ちなみに、古都:霊脈で幸助が襲われそうだった件が他にありますが、これについては改めて本編と妖界放浪記・長編で明かします。

古都:霊脈は妖都と同様に道が舗装されていて、馬車が快速で走行する。

妖都から古都まではずっと歩いていたし、これはこれで凄く助かる。歩き疲れたのもあるが、人生でこんな歩く機会はそうないだろう。

俺達は馬車に揺られながら都市部から地方の町へ向かっている。

褒姒が守護者としての役目を全うしてくれているお陰で襲撃は恐れずに済んだが、僅か1日で古都:霊脈を抜けた瞬間に変化を見た。

俺を狙う輩が突如として現れ、行く手を阻んできやがる。

「誰だ⁉︎ワレの婿を狙う輩か!」

「如何にも!我が名は『貫匈人カンキョウジン』。“放浪者”をここに置き、立ち去れぃ!」

胸に穴がぽっかり開いた妖怪が現れた。

中国における伝説上とされた人間。

しかも、ゾロゾロとお揃いで同じ妖怪が現れる。

二十人も同じ顔があると流石に気味が悪い。

「何故行く手を阻む?ワレの婿を置いてけと申したか?」

貫匈人は槍で威嚇する。

「そうだ!お前らは逃す代わりにその人間を渡せと言っている。大人しくしなければ……」

俺を見るなり、貫匈人達が震え上がる。理由は言わなくても分かる。

見えたんだな……俺の中の『玉藻前タマモノマエ』が。

「お前ら、そこの人間を捨てよ。この世に解き放ってはならない厄災を放っておいて、何も口を出さないことは同罪だ‼︎」

貫匈人の一人が怒り狂いながら槍を俺に向けて放つ。

反射的に俺は、【絶無】で槍の投射を弾いた。

「っ……やべ」

俺が咄嗟に動かなければ危うかったのは事実だ。

だが、それがいけなかった。俺が動いたことで、妲己が凄い剣幕で立ち上がる。

「ほう、貴様ら…ワレのものを殺すのだな?いいだろう!貴様らを此処で皆殺しにしてやるぞ‼︎」

妲己は貫匈人に強い殺意を向けた。この時点で、彼らが妲己に殺されるのが確定した。

俺は目を閉じ、耳を塞いだ。

数分間、俺は何も見ず聞かず、妲己の殺戮を見ないようにした。


何故、俺が妲己の業に口出しをしないのか?

妲己の為す業を許容してしまったのが原因だ。

一度許した妲己のしてきた事を、俺は心底から咎めるなどしなかった。寧ろ、彼女の長所であり、それが自身の快楽であるのを許したんだ。

殺生なんて赦すのが可笑しいのだが、『妲己ダッキ』でいたいという妲己の意思を尊重した結果、俺に介入する権利はほぼ皆無。容赦なく妖怪や人間を問わず殺している。

道行く者、阻む者、俺に近付く者を否応無しに手にかける。

こいつを野に放ってしまった事を後悔している……。


全てが終わり、妲己が俺の首を掴んでくる。

「どうした?妖怪の死に様を見ないのだ?貴様は見るべきものの筈だ」

「言っただろ?俺は妖怪が殺されるところはあまり見たくねえんだ。正直、こんなことしなくても…」

俺は死んだ貫匈人の亡骸を見た。既に息絶え、道端が血の海となっていた。

あまりの光景に思わず口を押さえた。なのに、妲己は妖艶に笑い、俺を豊満な胸に寄せる。

「駄目だ。コイツらは貴様を殺そうとした。ワレのものに危害を向けるヤツは死ぬべきだ」

「そうは言っても…」

「口答えするか貴様?妖怪は死んでも生き返るのだ。だから殺しても問題ない、いいな?」

「あ、あぁ…」

妲己に反論しようにも冷静な時だと何も言えない自分がいる。

感情を剥き出せばいけるが、それだとかえって妲己との関係を悪化させるかも知れねえ。

「クククッ!貴様だけで十分だというものだ。雪姫さえいなければ手が出せるものなのだが…仕方がない。お預けとするか」

名残惜しそうに引き下がる。

隙があれば俺の体を狙ってくる。

好きとは言ったが、俺はちゃんと決めた上で関係を築いていきたい。だから妲己に自重して貰うように言い聞かせている。

全く聞く気がなく、俺が寝ている間に何度も体を密着してきた。

その度に、雪姫が声を荒げて引き離そうとする。

そして今も……。

「何を目論んでるの。幸助に気安く触るな!」

雪姫が腕を掴んでは、妲己の手が冷気で凍る。

「クククッ、そうか。相変わらずの嫉妬の強いヤツめ。それほどまで昂らせるか?」

「黙りなさい。あなたが幸助に穢れたことを教え込もうとするのを止めているだけ。これ以上、邪な気で触るというならば…手だけでは済まさない」

余裕な笑みを絶やさない妲己に雪姫は冷たく警告する。

新たな問題は暫く解決しないだろう。

だが、悪い問題が積み重なると思いきや、事態が好転した。

俺が抱えていた問題が解決しそうなのだ。


悟美と紗夜に新たな友達が出来たことかな。




古都:霊脈を抜けたその夜、お腹を鳴らして恥ずかしそうに目覚めた。

「おはようございます。あの〜夜叉?ご飯ありませんか?お腹が空いて……」

食べずに寝たからなのか、華名のお腹が鳴り続ける。

夜叉は母性味のある微笑みで起きた華名を迎える。

「おはようございますカナ様。いいえ、こんばんはでしたね。ご機嫌は如何ですか?」

「凄く眠れました!」

ご機嫌な態度で夜叉に抱き付く。華名の一種のスキンシップであり、目覚めた時によく見られる行動である。

「それは嬉しい限りです。さあ、他の人が料理を用意していますので、ゆっくり支度してください」

「分かりました!でも…此処はどこですか?」

夜道を見渡すが暗くて見えない。

「此処は古都に属する伏魔ふしまです。辺境の地ですので、今日は野宿することに致しました」

華名は地域を聞いて思い出す。

古都の辺境の地で、妖怪があまりいない町である。人間も住んでいるが、あまり交流的な地域ではない為、夜は人も妖怪も静まり返っている奇妙な町である。

「じゃあ…もう古都を抜けるのも時間の問題ですね」

「そうです。では馬車から降りましょう」

華名が起きるまで、夜叉は荷馬車から降りずに膝枕をしていた。

献身的に見守り、華名の安全を第一と考え、今日まで誰一人とも会話を交えていない。

荷馬車から降りて、幸助達がいるところへ向かう。




俺は悟美と一緒に料理をしている。

とは言っても、今日は雪姫と紗夜は野宿の為に周辺を見回りし、敵がいないかを確認して貰っている。蚩尤も悟美にお願いされ、きちんと見回りしてくれている。

夜叉はカナの奴の子守りをしている。

ちなみに、妲己は料理が出来るまで何もしない。すね子にかまって戯れており、特に手伝うなどあり得ない。食べもしないので、ただ暇潰しをする貴婦人のようだった。


悟美の料理は奇怪な物だと思っていた時期があった。

正直こいつと料理はしたくなかった。グロテクスな料理でも作るんじゃねえかと怖かったからだ。

「ふふ〜ん!この味…もう少し塩気があると良いわね」

「ほらよ。古都で調達しといた塩でいいか?」

「ありがと」

しかし、その心配は杞憂そのものだと知っている。

悟美が料理が上手だと知ったのは、聖域陵サンクチュアリでカナ達と食べた時だ。

少ない調味料でプロ並みの料理を作ってみせた。素人の俺からしても俺よりも腕が立つ。

「なあ、なんでそんなに料理上手いんだ?」

思ったことを質問してみる。

「上手いかしら?烏天狗や女天狗が味に煩かったからかな?あの二人は私が年頃になった時に裁縫や料理、礼儀作法を無理やり教えてきたのよ〜。その時は力でねじ伏せてあげたけど!」

「聞かなければ良かった…」

思ったことを口にした。

烏天狗と女天狗は苦労の道を辿っていたようだな。

「ねえ幸助君は料理好き?」

「好きと言われたらな…まあそうだな。一人暮らしをしてたから食える程度は作れるぞ?」

「へぇ〜男子が料理作るってよく分からないわ」

「男が作るのは最近流行ってんだぞ?死ぬ前なんか、サークル仲間にケーキなんか作って振る舞ったぐらいだぜ?」

「シシシッ、幸助君の会話って意味が分からないわ。全然知らない言葉が出てくるんだもの」

悟美は大正時代生まれだが、妖界でそれなりに知識はある筈だと思うんだが。

意外と無知なのか、それとも世間知らずな面があるのか。

「妖都で最近の流行りとか流行ってただろ?女とかは趣味で変えたりしないのか?軍服っていうのもいいが、ちょっと女の子らしい服装にしてみれば?」

気になるとすれば、悟美は常に軍服を着こなしている。それ以外を着こなしている想像が出来ない。

「そう、かしら?」

自分の服を見るなり、悟美は首を傾げる。

「女は流行りに煩いんだろ?だったらお洒落はしてみろよな。普通にあんたは美人の類いだろうし」

「シシシッ!それって私を褒めてくれるの?」

なんだか嬉しそうにニヤニヤする悟美は、料理の手を止めた。何か物欲しそうに得意げに笑うものだから、俺はちょっと真剣に答えてやってあげたほうがいいと思った。

「ま、俺は髪の色とかは好きだな。白髪美女って希少みたいだし、俺もそういう妖怪がいたら良いなって思うな。妖都でもそういうの流行すると良いんだが」

褒めたつもりだった。けど、悟美は馬鹿にするように笑う。

「シシシッ!あんな所でそんなもの流行ってないわよ。妖都には古い文化しかないのよ。退屈してたから旅に来れて良かったわ。紗夜は私が脱走するといつも引き戻して閉じ込めようとするのよ」

「…マジで言ってんのか?あいつに連れ戻されるって、そんなに強いのか?」

話しは見事に逸らされた。俺も合わせ、悟美の愚痴に付き合う。

紗夜の方がずっと強いと断言して止まないから不信感しかない。

「紗夜が酷いのよ?私が脱走したからって、趙神水を無理やり飲まされて鎮静化させちゃうだもん。おまけに烏天狗と女天狗ときたら、嫁入り修行っていうやつで私にだけ強要するわ。でも…もうそろそろで加護が消えるから清々するかしらね〜!」

「不満溜まってんだな」

「不満かしらね?シシシッ!でも、ちょっとは胸がスッとしたわ。早く作らないと華名って女の子が来るわよ?」

悟美は意外な人間性があると、感性がイカれた狂人ではないみたいだ。それにしても、紗夜ってちょっと危険な女だな。

悟美が普通で紗夜がヤバい奴。俺の二人への見方が変わった。

あいつとは友達にはなれる気がしない。悟美とだったらまぁ…友達ぐらいは良いか。

「カナの奴、随分食に煩かったな?夜叉もそうだが」

「食にうるさいのかしらね〜。口答えしないぐらいの料理は作ったつもりだから、これで言うものなら…えへへ、どうしようかしら〜?」

カナがいる方を凝視め、何か怪しげな笑みで赤らめる悟美。徐ろに面白そうにみる視線は、俺からすれば心臓に悪い。

やっぱ無理かも…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ